神戸奪還作戦~恐るべき神戸牛~
流布島雷輝
第1話
大学の夏休みを利用して、東京から地元神戸に戻ってきたこの俺、角夜無大学バスケットボール部の漆原義之。
だが、そこで待っていたのは恐るべき牛人間に支配された神戸の街だった。
命辛々逃走し隠れていた市民の話によれば、やつらはバイオ研究所で遺伝子改造された結果、神戸牛が進化した存在だという。
俺は奴らから街を奪還しようとし、牛人間との戦闘を試みたが、恐るべき牛人間のボス神戸牛魔王の前に跳ね返される俺。
力の差の前に打ちひしがれ、心折れかけた俺の脳内に直接話しかけてきたのは、あの伝説のバスケットボールプレイヤー、コビー・プライムマンだった。
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「ヘイ!ウルシバラボーイ!立ち上がりなよ!神戸牛魔王から神戸を守るんだ」
「コビー。もうだめなんだ、俺の力は神戸牛魔王には通用しなかった」
「ヘイ、ボーイ!あきらめんなよ!あきらめたらそこで試合終了だよ!」
「お前それ全然関係ない人の言葉だろ」
コビーが言ったのは有名なバスケ漫画のセリフで会ってこの男は関係ない。
「細かいことは気にしちゃいけないよ!ボーイ!」
「でもどうすれば」
「大切なのは愛さ!」
「知ってるだろボーイ!俺が神戸の街を愛していることを。そしてその愛の力で最強のバスケットボールプレイヤーになったことを」
「ああ知ってるさ」
コビーの名は彼の父親が神戸牛のステーキを好きだったことから名づけられた。コビー・プライムマンのファンならだれでも知ってる逸話だ。
「愛の力は偉大なのさ。そしてそれは君の心にもあるのさ」
「そうかな」
そうなんだろか。俺にも愛の心があるんだろうか
「そうさ、ボーイ!誰の心の中にも何かを愛する心はある。君にだって神戸を愛する心はあるんだ」
「神戸を愛する心……」
「何かを愛する心を持った戦士。それが真のバスケットボーラ-だ。その魂を燃やし尽くせば、神戸牛魔王にだって勝てるさ」
「真のバスケットボーラ―」
俺がなれるだろうか。神戸の街を出て、東京に行ったこの俺に。
「なれるさ!絶対に」
コビーが力強く断言する。
「じゃあな、ボーイ!愛の心を忘れるなよ!」
それを最後にコビーの声は遠ざかっていった。
その時俺にはサムズアップするコビーの笑顔が見えた気がした。
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「ほう、立ち上がったか」
神戸牛魔王は驚いたように俺を見た。
「生憎、俺には夢があるんだ。こんなところでくたばっちゃいられないのでな」
俺は血反吐を吐き捨てると懐から灘五郷で作られた清酒の一升瓶を取り出し、それを一気飲みした。
「いくぞ!」
アルコールが染み渡った俺の全身からオーラが放出される。
「これが」
そして放出されたオーラが俺の右腕に球状に集まる。
「これがバスケットボールの力だ!」
真のバスケットボーラ―は自分の体内に内包するオーラの力でバスケットボールを生み出すことができるのだ!
そう、俺はコビーのおかげで真のバスケットボーラ―の力に目覚めたのだ。
「いくぞ!神戸牛魔王!」
「こい!漆原義之!何度来ても無駄なことを思い知らせてやる!」
俺はボールをドリブルし始めると、そのまままっすぐ神戸牛魔王に突っ込んだ。
それを見た神戸牛魔王が俺に向かって右腕を振り下ろした!
だが、俺はドリブルをしながらそれを回避した。
そして、地面を蹴り、高く飛び上がった。
さらに空中で1回転スピン!
バスケットボールの幻の殺人技
「ぐわああああああああああ」
ダンクシュートが神戸牛魔王の顔面に直撃した。
高濃度のバスケットエネルギーを浴び、もだえ苦しみながら神戸牛魔王が倒れていく。
そして神戸牛魔王の身体が炎上していく。高濃度のバスケットエネルギーに奴の身体が耐えられなかったんだ。
「バ、バカな牛魔王様が」
「逃げろ!」
それを見て牛人間たちが逃走していく。
俺たちは勝ったんだ。
それを意識して気が抜けたのか、気が付くと俺は地面に大の字になって、倒れていた。
戦いは終わった。
牛人間たちの支配から解放され、バーベキュー大会を始める神戸市民たち。
神戸を救った俺は当然英雄として丁重にもてなされていた。
きっと俺には市長から神戸市の名誉市民の称号が与えられるだろう。
だが、俺たちの戦いは終わらない。
いつか第二第三の神戸牛魔王が現れるだろう。
だからその時まで俺はバスケの力を研鑽していくつもりだ。
人類が牛に完全勝利するその時まで。
神戸奪還作戦~恐るべき神戸牛~ 流布島雷輝 @luftleiter
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