第28話 旅立ちの時




 昼の鐘が晴天の空に高く響き渡る中、轟音を上げて塔の天井が崩れ落ち、その上に黒い翼を背に掲げた一人の男が宙を舞った。



 男は塔の上から城や町並みを見渡すように旋回し、やがて天に昇るように姿を消した。



 塔に幽閉されていた戦犯の元騎士は姿を消し、人々は災厄が去ったのだと安堵に胸をなでおろした。



 事の真実を知る者たちは、ただ青年の無事を願い、己の罪をそっと胸の奥に押し隠した。

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