第4話 町への道のり
出発から半刻ほど森の中を歩いた。森はさっと行く手を開け放ち、小高い丘と田畑を懐に抱く大山脈が広がる王国郊外へと繋がっていた。太陽の位置からそれが南の山脈と分かり、城下町への道のりも見当が付いた。
田畑が大部分を占める郊外の小さな集落を、数十人の人間がぞろぞろと隊列を成して闊歩していたら、住人はさぞかし驚くだろう。そんな懸念を抱きながら、私たち一行は街道へと足を進めた。
街道を目指し集落を抜けるまでの僅かな間に、ふっと私はその集落に違和感を感じた。まだ日も高いと言うのに、子供の気配が無かった。他にも集落の家々に何故か違和感を感じていた。
乾季の田圃は水が抜かれ、収穫された穀物が掛けられている。畑には乾季にしか作れない野菜などを作る為の農作業をしている大人達たちが居た。しかし、その大人たちにも何故か違和感を感じた。
「オイ、速度を落とすな」
自然と足の止まっていた私を騎士団の男が嗜め、その違和感の正体は分からず仕舞いになった。何事かと見やる人々の視線を他所に、騎士団一行は郊外の集落を後にした。
やがて日も西の空に沈もうかと言う頃。到着した城下町は、のんびりとした郊外と違い混乱の極みだった。
空に魔法陣が輝くと共に男の声が城下街全体に響き渡り、城を完全に乗っ取った事、国王陛下と女王陛下を人質として捕らえたと言う宣言が成された。
城に突如として現れた魔法陣は城を多い尽くす障壁となり、転送され消えた騎士団の代わりに現れたのは男率いる盗賊紛いの輩たちらしい事。彼らの篭城により、城は完全に孤立化していた。
城下の巡回警護に当たっていた騎士団の者が、城の門前に集まり決起して突入を試みたが、城の周囲に張り巡らされた障壁によりその進行を阻まれた。その後、城仕えの料理人や書記官たち、女給たちが城の裏手へ転送されているのを発見し、保護に至った。
警備分隊と合流したが、我々王国騎士団は城を目前に手も足も出ない状況に陥ってしまった。打開策の出ぬまま、無駄な時間を過ごす事はない、と騎士団長のお言葉で、我々騎士団は城下町の宿や集会場に安息の場を借りた。大きな講堂のある集会場に白銀騎士団と、一般騎士団員が移動し、隊長格の何人かが宿へと身を置いた。
城下町の人々のご好意で、緊急避難時などに使われる毛布などを無償で貸して貰い、そして同様に振舞われた食事に、一日の疲れを取った。
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