第3話
次の日。私は昨夜の酒盛りの影響で頭がとろんとした状態で目を覚ました。周囲には散らかしっぱなしの空き缶が転がっている。
片付けないとダメだと思いつつ、ふと壁際の時計に目をやると、昼前だった。昼前かぁ、と思いながら、嫌なことを思い出す。
(って、約束! 昨日、変な男、いや警官に会って、今日会う約束してたんだった! やばっ)
急いで、シャワーを浴びて、体を目覚めさせると、いつもの日課の神棚のお米とお水を取り替えて、朝ごはん兼昼ごはんは玉子かけご飯と、漬け物であっさりと頂く。
すぐさま、片付けに入りつつ、化粧をする時間がかなりヤバイことに冷や汗をかく。
ため息をつきながらも、なんとか支度を整えた時には、約束の時間ギリギリだった。戸締まり用心、火の用心と確認をし、鍵を掛けてから外へと飛び出す。
出しなに洗濯物を干すつもりだったのに、その時間さえもすっかりなかった。
約束をもっと遅い時間にすれば良かったと後悔しつつも、さっさと用事を済ませるべく、目的地へと走った。
約束をしたのは私の家の近くの公園だ。そこから、駅前の商店街に出れば喫茶店はいくらでもある。
私が公園に着いた時、どこからかうぇぇえええん!と子どもの泣く声が聞こえた。不思議に思ってそちらへと顔を向けると、どこか慌てた様子で、子どもの側にいる、昨日の警官が視界に映った。一体何をやっているのやら。
私が歩み寄ると、警官が助けを求めんばかりに私を見つめてくる。案外、容姿とはかなり違う性格をしてるのかもしれないな、と思いながら。私は警官から何があったのかの詳細を聞いたのだった。
聞いてみれば単純だが、子どもが遊んでいる最中に危険なことをしたので黙っていられず注意をしたら、泣き出されてしまったらしい。どうやら警官の容姿があまりに怖すぎたようだ。まぁ、確かに。黙っていても、威圧感漂う風貌なのだから、子どもは悪くないだろう。むしろ被害者だ。
「大丈夫、大丈夫。注意されて怖かったね。でも、怖そうに見えても、このおじちゃん、優しいから」
「お、おじちゃん!? いや、ちょっと待って欲しい。こっちはまだ二十代・・・」
「子どもからしたら、十分おじちゃんだから」
さすがにショックを受けたのか黙りこむ警官の姿に子どもが笑い出した。
「あはは! おじちゃんだ、おじちゃんだ~!」
「違う! さすがにこの歳でおじちゃんとは呼ばれたくない!」
きゃーっと、悲鳴を上げながら、子どもは逃げ去っていく。どうやら、もう大丈夫そうだ。
「・・・・・・どうしてくれるんです」
ぎろり、と睨まれたが、私が無言でサムズアップすると、警官は私の手を掌で覆って握りしめた。
「あいたたたたたっ!?」
「からかうのもほどほどにしてください、緋川さん」
「冗談の通じない警官め! ま、いいや。さっさと話終わらせて帰りたいし。早く帰って洗濯物を干したいの、私は!」
ぐっと握りこぶしをつくる私を警官はじっと凝視してくる。
「そうですか。なら、場所を変えましょう。できれば、あまり人の目に触れさせたくありませんから。貴女も、これを人目につかせたいとは思わないでしょう?」
そう問われて、警官が取り出したのは、一枚の紙だ。
「げっ」
私は思わず呻いた。
なんで、それを警官が持ってるんだろうか。いや、それよりもヤバイ。これは絶対に尋問一時間から三時間コースだろう。何故なら・・・。
警官である彼が見せたのは、計画書の一枚。私が端正込めて書き上げた、殺人計画書の一部だったのである。
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