鏡の中
@y0k81
鏡の中
ガラスってのは物凄く高価なものらしい。
だから、母さんと姉さんが買い物から帰って来てあんなにはしゃいでいたのも納得出来る。
何を買ったのか男の子が尋ねると、姉さんは得意気にそれを見せびらかしながらこう言った。
「手鏡よ。いいでしょう?」
この前見たテニスのラケットみたいだなあ。
あんなに大きくはないけど。
その日母さんと姉さんは一日中手鏡を見て過ごしていた。
ねえ、私ってこんなに可愛かったっけ?
と姉さんが聞いてくるのが鬱陶しくて、男の子はいつも通り自分の部屋からあまり出なかった。
次の日、母さん父さんが仕事に行って、姉さんが学校に行った後、男の子は姉さんの部屋に忍び込んだ。
机の上に置いてある手鏡を取る。
こんなもの買って何が嬉しいんだろう。
手鏡を覗き込むと、その奥にはとても広い部屋と大きなプリンセスベッド、色とりどりの花や絵画が飾ってあった。
え、鏡って凄いな。
どこと繋がってるんだろう。
鏡の奥に手を伸ばしてみても、それは当然のように遮られる。
どうにか入れないかなと、顔を押し付けてみたり足を押し付けてみたりした。
試行錯誤の末出た答えは、鏡ってドアとは違うらしいというものだった。
しばらく鏡の奥の世界を見つめていると、ベッドがもぞもぞと動いた。
どうやら誰か寝ているみたい。
しかしあんな大きなベッドに一人で寝るなんて、贅沢な奴だ!
またしばらくして、布団が勢いよく捲れると、女の子がぐーっと伸びをする。まだ子供だ。
女の子が着ている服、雰囲気、それは男の子が知っている母さんや姉さんといったがさつなものとは明らかに違っていた。
いわゆる貴族ってやつ?
女の子はのそのそ起きて、瞼を擦りながら男の子の方へ歩いてくる。
何故だか「まずい!」と思い、手鏡を机の上に放って自分の部屋へ逃げるように向かった。
ドアをバタンと閉めて深呼吸した。
かわいい子だったなあ。
部屋の中はいつもと同じように、ぽつんとベッドと机が置いてある。
窓の外では馬車と人が行き交って土煙と笑い声が上がる。
男の子が毎日見てきた風景と、なんら変わらない。
でも、男の子の心は凄く高揚していた。
母さんが朝作ったスープとパンをかじって、男の子はまた姉さんの部屋へ行った。
手鏡を覗き込むと、女の子は机に向かって読書していた。
僕と同じだ。
男の子も毎日のように、本を読んで時間を潰している。
そう言えば今日はまだ読んでないな。
男の子はどうしようもなく嬉しい気持ちになった。
学校に行けず、毎日本を読む。
そんな生活をしている子が他にいたんだ!
声は届くのだろうか。
ちょっと恥ずかしい気もするけど、勇気を出して話しかけてみる。
「こんにちわ」
女の子は一瞬びくっとして、辺りをキョロキョロと見渡す。
男の子も話しかけた後で、ちょっと後悔した。
びっくりさせちゃったな。
声は聞こえるみたいだ。
不思議な作りになっているんだな、鏡って。
気のせいだろうと手元の本に目を移した女の子に、また声をかける。
「こんにちわ」
さっきより大きくはっきりと言った。
女の子はいよいよ怖くなって立ち上がり、ベッドの下や額縁の裏を調べ始めた。
「こっちだよ」
どうやら声は鏡台の方から聞こえる。
この部屋に誰かが侵入している?
そんなこと誰が許したって言うのかしら。
鏡台の前まで歩いて、女の子はまたも驚いた。
知らない男の子がこちらを見ている。
「こんにちわ。初めまして」
男の子はにこっと笑う。
「僕の声は聞こえる?」
こちらに話し続ける男の子は、甘えたいときのペットの猫を連想させる。
悪い子ではないみたい。
「あなたは誰?」
男の子の問いを無視して、女の子は一方的に話す。
誰って言われてもなあ。
「どうして鏡の奥に居るの?」
「それは僕も知りたい」
女の子も鏡越しにこちらを見ているらしい。いかにも訝しんだ目で。
「さっき本を読んでいたよね?」
「ええ」
「どんな本?」
「知ってる?シェイクスピアのリア王」
女の子は、どうせ知らないだろうと思っていたけど、予想外の返事が帰ってくる。
「悲劇が好きなの?」
それなりに本を知っているらしい。
「楽しい物語は嫌い。私が物語の主人公のように幸せになることはたぶんないから」
「僕と同じだ」
男の子はまたにこっと笑う。
その笑顔はどうしても嫌いになれなかった。
「君は今どこに居るの?」
「箱庭よ」
「箱庭って?」
「私が名前を付けたの。私が見ることができる世界の全て」
「随分広そうな箱庭だね。綺麗だし」
「そうでもないわ」
「僕も箱庭に住んでいるんだ。君の所より汚いし狭いけど」
「出たいとは思わない?」
「思うけど、母さんと父さんが駄目って言うんだ。体に障るからって」
「私も箱庭の外は危険だからって出してもらえないの」
「危険なの?」
「知らないわ」
同世代の異性と話すのは初めてなのに、いつの間にやらどちらも口が止まらなくなっていた。
本のこと、母さんや父さんや姉さんのこと、家の外のこと。
鏡の奥の女の子はツンケンしているけど、どこか男の子と似ている。
あっという間に時間が過ぎて、ふと窓の外に目をやると、学校帰りの子供がたくさん居た。
姉さんがそろそろ帰ってくる。
折よく女の子の方ももうすぐヴァイオリンの稽古の時間だった。
二人は名残惜しく別れを言い、明日また話そうと約束を交わした。
たった数時間だったけど、男の子は心の中に浮わついたような、変な感情を抱いていた。
数時間、数時間。いや、きっと違う。
一目見たその瞬間だろう。
ロミオの気持ちがなんとなく分かった。
程なくして、家のドアがバンと開き、姉が帰ってくる。
机の上に手鏡を置いて慌てて自分の部屋へ戻った。
夕陽が暮れ、母さんと父さんも仕事から戻ると、静かだった家の中が急にうるさくなった。
母さんが、今日も良い子にしてた?と笑顔を張り付けて言うけど、男の子にはどうしても仮面を被っているように見える。
可哀想な子。まるでそう言ってるように聞こえる。
男の子は鏡の奥の女の子について聞いてみる。
母さんはそんなこと知らないわ、と言う。
鏡ってのは本来自分の姿を写すものらしい。
生きる世界が違う男の子と母さんたちとでは、鏡の奥の世界も違うように見えるんだ。
男の子はそれが嬉しかったけど、母さんはそうじゃないみたい。
次の日もいつものように母さんと父さんは仕事へ、姉さんは学校へ行った。
今日も大人しく良い子にしてるのよ。これは貴方のためなんだから。
母さんはそう言い残した。男の子の気持ちを全く理解していないらしい。
かと言って、別に母さんが嫌いという訳じゃない。
急いで姉さんの部屋へ行って、手鏡を覗く。
昨日と同じように女の子はまだ寝ている。
手鏡を前に立て掛けて、机に突っ伏した。
実は寝足りないんだ。
母さんたち以外の人に起こしてもらう。それが好きな人だったら、どれだけ幸せなことだろう。
男の子はそんなことを思いながら、夢の世界に吸い込まれていった。
いつの間にか花畑に立っていた。
赤、黄、青、白、紫、緑。
どれだけの色がそこにあるのだろう。
風が花を揺らして、甘い匂いが漂う。
振り向くと木の椅子が置いてあり、そこにあの子が座っていた。
一歩一歩、彼女に近付く。
彼女はこちらを向いて何か話しているが、風の音でちっとも聞こえない。
もう少し、というところで見えない壁が僕を阻んだ。
叩いても割れない。
彼女の声も聞こえない。
「そっちに行きたいんだ」
僕は声を振り絞った。
「とてもつまらない場所よ」
ようやく彼女の声が届く。
「君が居るなら、どこだって楽しいよ」
彼女は微笑んだ。
「ほら、起きて」
「そうだね。そろそろ」
薄く目を開ける。
甘い匂いではなく、木の机の古めかしい匂いが鼻をついた。
「起きた?」
鏡の奥の女の子が言う。
ゆっくりと体を持ち上げて、ぐーっと伸びをする。
「昨日と逆だ」
男の子がそう呟くと、なんのこと?と女の子は聞いた。
「何でもないよ」
こうしてまた、二人のお喋りが始まった。
幸せな時間。
次の日も、その次の日も、二人は話し続けた。
お互いに貴重な宝石を手に取るかのように、お互いの言葉を拾って、耳に残す。
何ヵ月もそんな生活をしていても、話の種が尽きることはなかった。
雲が流れたとか、花が咲いたとか。
それだけで良かったんだ。
一つだけ、男の子はある重大な秘密を隠していた。
話そうか話さないか迷っていたけど、結局話したところであまり意味はないんだ。
ある朝、男の子は気付いた。
あぁ、そろそろだなって。
男の子の体の中には、治療が出来ない病気が潜んでいた。
ベッドから起きるのも辛かった。
数ヶ月前と比べたらだいぶ細くなった腕で、なんとか立ち上がる。
窓の外では通学途中であろう子供たちが走り去っていくのが見えた。
コンコン、とノックが鳴る。母さんだ。
あら、起きていたのね。
今日も大人しく良い子にしているのよ。
その目に浮かぶ哀れみは、もう既に隠れることを忘れているようだ。
母さんと父さんが仕事へ、姉さんが学校へ向かう。
リビングにあるテーブルの上には、男の子の食事が用意されていなかった。
今に始まったことじゃない。数日前からこうなのだ。
男の子の家は決して裕福ではないから。
重い体を引きずるように、姉さんの部屋へ向かった。
きっと、女の子がもうすぐ起きる。
時間がないなと、男の子は思った。
姉さんの部屋のドアを開けるところで、男の子は止まった。
今日はやっぱりやめておこう。
そのまま壁伝いに廊下を進んで、母さんと父さんの部屋へ入った。
父さんのタンスの中から、適当なズボンとシャツを借りて着た。
さすがにブカブカだけど、ずっと着ていた部屋着よりは幾分かマシだ。
次に姉さんの部屋へ。
相変わらず机の上に置いてある手鏡を覗いた。
良かった、まだ寝ているようだ。
そのまま手に取り、自分の部屋に戻った。
小さい頃に買ってもらったショルダーバッグに手鏡を押し込んで、ハンチング帽を被った。
何年ぶりにするオシャレだろうか。
細く華奢な体とは裏腹に、気分は大きく高鳴っている。
玄関の扉はやけに重く感じられた。
腕が細くなったせいもあるだろうが、それだけではない。
数年この扉の外には出ていないのだ。
出ようとは何度も思ったが、僕の箱庭は居心地が良かったし、何より最近は女の子と話すことが外の世界の空想よりもずっと楽しかった。
ガシャ、とゆっくり扉を開けた。
そのとき丁度、馬車が目の前を通り、土煙を上げる。
窓越しじゃない土煙だ。
確かに危険がいっぱいだなあとぼんやり思った。
実を言うと、女の子の正体はなんとなく勘がついていた。
体が言うことを聞かず、何度か足がもつれ転倒する。
通りがかった人は男の子にちらりと目をやるも、何事もなかったかのように通り過ぎる。
男の子の痩せこけた顔は、いささか物乞いに見えなくもない。
今頃女の子は、鏡をじっと見つめているに違いない。
遅いわねと、しびれを切らしてふて寝しているかもしれない。
いつもなら男の子が先に起きて鏡の前で待機しているのだ。
今日に至っては申し訳ないが、もう少しだけ待っていて欲しい。
目の前がふらふらする。足がもつれる。
転びすぎて、ズボンに穴が空いてしまった。
もしも父さんのお気に入りとだったら悪いことをしてしまった。
普通の人ならきっと、昼頃には到着しているだろう。
男の子にとっては、身体的にこれまでの人生で最も辛い体験だ。
到着したのは昼も過ぎ、もう少しで夕陽が落ちるであろう時間だった。
片道切符だ。日が暮れる前に着けたのだから上出来だろう。
正直、立っていることさえ辛かった。
擦り傷や捻挫もそうだけど、これまで潜んでいた病気がここで一気に体を蝕んでいる。
脂汗を全身に滲ませて、男の子は顔を上げる。
大きな大きな城へ続く道。
門の前には憲兵が二人立っている。
体を引きずって、憲兵に歩み寄る。
「なんだこのガキ。物乞いにやるものはないぞ」
違います、そう言おうとして吐いた声は声にならず、代わりにとめどない咳が出た。
「おい迷惑だ。どっか行け」
見ず知らずの汚い子供、溢れる物乞い。
この町では当たり前のようにある光景で、憲兵たちはきっとこういった対処は初めてではないのだろう。
男の子は落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせる。
声を出さなきゃ。
息をゆっくり吸って、お腹に力を入れて、喉を通して、口から声を出すんだ。
「あ・・・あぁ・・・」
うまく言葉にならない。
女の子とはあんなにうまく喋れたのに。
「なんだってんだ。いい加減にしないと蹴り飛ばすぞ」
違うんです、話を聞いて。
「いっ・・・ぃあぅ・・・」
僕はただ、この鏡を女の子に渡したいだけなんです。
男の子はショルダーバッグを開け、鏡を取り出そうとする。
その行為はあまりにも世間知らずだった。
憲兵は武器を出すのかと勘違いし、男の子を蹴り飛ばした。
「おい、何もそこまですることはないだろうが」
もう一人の憲兵が宥める。
男の子の体は軽く、華奢だ。
数メートルふっ飛んで、地面に叩きつけられる。
「こいつ、武器を持っているかもしれん」
「なんだって?」
男の子は血へどを吐く。
朝から何も食べていないのが幸いして、胃から逆流したものは胃液と血だけだった。
「おいガキ、バッグの中を見せろ」
地面に横たわったまま、震える手で手鏡を掲げる。
「なんだ?鏡か?」
今の衝撃で割れたのか、男の子の霞む視界にはガラスが散落した。
「あぁっ、ああっ・・・!」
落ちたガラスが切れ切れに映すのは、男の子の大粒の涙だった。
女の子との思い出も、同じように割れて崩れて、壊れたような気がした。
声にならない声と嗚咽が漏れる。
どうしようもなく涙が止まらなかった。
「そんなもん、また買えばいいだろうがよ。もう二度と来んなよ」
憲兵は言い残し、門の前に立ち塞がる。
男の子はぐらつきながら立ち上がった。
口や鼻から血が止まらない。
手鏡をショルダーバッグに入れて、落ちた鏡の破片から、なるべく大きな物を手に取った。
それをありったけの力でぎゅっと握ると、指の皮に食い込み血が溢れた。
熱いが、痛みは感じない。
すー、はー。
深く深呼吸をした。
体が軽くなったような気がした。
ここを通るにはもうこれしかないから。
女の子はどんな顔をするだろうか。
一歩、足を踏み込んだ。
力が入る。体が言うことを聞いてくれる。
一気に憲兵へと駆けた。
驚く顔、まんまると見開いた目にガラスを突き刺した。
奇声と血が上がり、風に消える。
もう一人の憲兵が慌てて銃のリロードをする。
もたついているその隙に門をよじ登り、正門前まで走る。
正門前の憲兵がこちらに気付き、何事かと銃を構える。
「止まれ!」
このままだと確実に撃たれる。
男の子は右に逸れて庭へ向かった。
寸前で、パンッと乾いた音が鳴り銃弾が脇腹に直撃した。
足がもつれる。
もつれながらも、庭へ走った。
絶対に、女の子に渡すんだ。
パンッと乾いた音が鳴った。
銃声音、だろうか。
女の子は鏡の前で身を潜める。
結局今日は男の子の顔を見ることができなかったな。
そう思っていると、コンコンとノックが鳴った。
「誰?」
出てきたのは家政婦だった。
「失礼します。敷地内に侵入した者がいます。凶器を持ち危険ですので、事が終わるまで窓にお近づきにならず、このままお部屋で静かにお待ち下さい」
さっきの銃声音はそのためだろうか。
「侵入者なんて、珍しいわね」
「何でも物乞いの子供だそうです」
物乞いの子供。
嫌な予感がした。
「へぇ・・・」
この家政婦は事態が収集するまでここで待機しているのだろう。
「ちょっとトイレに」
「ご一緒致します」
何がなんでも着いてくる気だろう。
すたすたと扉まで歩き、開いた瞬間、女の子は駆け出した。
「お嬢様!!」
家政婦は怒声を上げる。
そうだろう。ここで女の子を逃がし、あろうことか侵入者の前に姿を見せてしまったそのときには、この女の首が飛ぶ。
そんなことどうでも良かった。
女の子はうっすらと勘づいていてしまった。
あぁ、箱庭から逃げ出してしまったんだって。
慌てる城内と女の子を視界に捉えるや目を丸くする憲兵たちをよそに、女の子は事の犯人の場所へ急ぐ。
こんなに走るのはいつぶりかしら。
どんな形であれ、男の子と会えることに胸を踊らせた。
どうやら庭先に犯人が居るらしい。
物乞いの子供一人に大人が数十人、なんて情けない。
どうしてここにお嬢様が、危険です、誰か部屋にお連れしろ。
女の子を目にした憲兵たちは口を揃えて言う。
無駄に広い城内を駆け、ようやく庭先に着く。
甲冑を鳴らす憲兵が輪になり、犯人を取り囲んでいるようだ。
「どきなさい」
「危険ですお嬢様」
「黙りなさい」
一言そう言うと、その場はしんと静まり返る。
所詮はそんなものなのだ。
私一人、こんな非力な子供の言葉が力を持ってしまう世界なのだ。
女の子の目論見は当たっていた。
色とりどりの花畑の中心、ひゅー、ひゅーと細く呼吸をする男の子がそこに横たわっていた。
そうだろうとは思っていた。
「今日はやけに遅かったわね」
女の子がいつもの口調で言った。
男の子はその声に気が付くと、ろくに見えない目で女の子の方に顔を向けた。
「ごめん」
ぼそっと何を言ったか聞き取り辛かったかもしれないが、これが男の子の今の精一杯だ。
「いいのよ」
女の子は男の子に近寄って、血に染まった手を握る。
そして汗や血でぐしゃぐしゃの頭を撫でる。
「今度は、壁なんてないんだね」
男の子が言う。
「そうらしいわね」
「僕たちにとって、これは悲劇かな」
「どうかしら」
「君はいつもそうやって、言葉を濁すよね」
男の子はにこっと笑った。
女の子はその顔が大好きだった。
その瞬間、涙が溢れ出した。
「答えを出すのは嫌いなの」
涙ぐんだ声で、女の子は言う。
「なかないで」
「泣いてない」
「僕は答えを知っている」
「言って」
「答えを出しちゃうと、物語が終わってしまう。これが答えだ」
「そうよ」
「こんな時間が永遠に続きますように」
男の子が息を引き取った。
女の子は男の子の手にぎゅっと握られたガラスの破片を手に取った。
悲劇というのは鏡に写すときっと、とても素敵なお話になるのよ。
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