文芸部長、幕間

 【幕間】 浅井ゆいの休日


 吾が輩は、浅井ゆいである。…………なんてね。

 私が中学の頃に教科書に載ってた、夏目漱石のあの有名な作品の書き出しをやってみたんだけど、いざやるとなるとやっぱり恥ずかしい。

 それはさておき私は、迫るゴールデンウィークの為に土曜日に自転車? 多分、ロードバイクって固有名詞の方がイメージは付きやすいと思うけど、まあ自転車に乗って近所ではないけど全国チェーンの書店で本を買います。

 土曜日は休みなんだし、あまり動きたくはないのだけれど書店が家の近くにないのが悪い。……これだから田舎は……!

 ともあれ私は今、書店にいます。

 今年から高校生! と言うこともあり、週のお小遣いが1500円アップの3000円になって私は、毎週の月曜日の朝はお母さんにこれでもかって言うくらいにお礼の気持ちで一杯。

 何故なら、こうやって週末には沢山の本が買えるから!

 私は本が好きで、いつから好きなのかって聞かれると小学生からで、明確にこの日が私を物語を引き込んだ記念日みたいなのはないかな。

 でも、本を読む切っ掛けになったのは覚えてる。

 多分、それが今の私の起源? と言うべきか発端? 発祥? なんて言えばいいのかな、そんなニュアンスの言葉。

 まあいいや。そんなことよりもゴールデンウィークを乗りきるために本、本……。

 私なりの本の選び方は多分、本当の読書家からしたら落胆すると思うけど私は別に、これを読めば通だとか、この作家を逐一チェックしてたら語れるとかそんな拘りはない。

 だって、そんなものに拘ってたら読みたいものも偏るし無理して読むものもある。私は、狭く深くより広く浅くの方がいい。

 あーでも、少し拘りはあるかな。

 例えば、グロテスクな表現が生々しくあったり、犯罪者の話だったり……あれは読んで想像すると気分が暗くなったり、気が遠退く感じがするからムリ。後は、……その、えっと……セクシャルな表現があるやつが苦手かな。

 私って顔に出るって言われるから、ああいう本を読んでると絶対、顔真っ赤になると思うしそれで、人に指摘されたら……絶っ対、ムリ。

 せいぜい、ライトノベルくらいの表現ならまあいいけど。

 そう言えばライトノベル……最近、読んでないな。

 ゴールデンウィークにラノベ三昧も悪くないかも……あ、でも、いやいやいや。

 ここでラノベの不満を言っていいのかわからないけど、ラノベって人気が出れば出るほど完結しにくいし後、途中でだれる。

 ラノベは、人気作が完全に完結してからレビューも開かずに読むって中学のときに決めたんだ。

 ラノベのレビューもネタバレお構いなしにする人が沢山いるから、それも離れた要因の一つかな。

 ……む、邪魔だ。

 中学二年生くらいかな? ラノベ棚で立読みして。その読んでる本は後で買いなさいね。

 さて、ご覧の通り私は、本が好きで基本的に選ぶ本はノンジャンル。基本的にはなんでも読むの。

 最近は、ラノベとかは離れちゃったけど今は、とりあえず文庫本やB5の出版物を読んでるかな?

 特に拘りはないけど、いつも直感でタイトルがシンプルだったりフォントデザインとかタイトルロゴがスマートだったりする本が手に取ることが多いかな。

 でもこんな気持ちは、今までにない。どんな物語も読みたい。

 きっと高校生になって、文芸部に入ったから言えるんだろう。

 最近、思うことが同じ文芸部の多田さん。彼は、普段から何もしないと装いながらも何かと提案するし私は、彼のことは嫌いじゃないむしろその逆。

 彼は最初は何もしないけど、だんだん自分から動いたり更に細かく言うなら無頓着と言い張るけど、いつも部室にいるときは何かしらの本を読んでる。

 本当の無頓着なら、とっくに部活にも来てないし部室で読書なんてしないんでしょう。彼のそんなちょっとした矛盾が可愛らしい。

 私に学校の事を聞かれると、最初に連想するのは文芸部でそれと同時に多田宏太の名前が浮かぶ。

 私自身わかることで、他人をそんな優先に考えることは珍しい。

 どうして、多田さんがそんな私の中で重要な存在になっているかと言うと、それは入部初日に文芸部存続の謎を解いたから。

 彼は正解じゃないと言ったけど、私にはあの推測は不正解じゃないと思うの。

 それにあのときの帰り道に見せた彼の笑顔は、今にでも思い出す。

 それで、私はあの時……彼となら、彼となら一緒に物語を紡げると確信した。

 そうだ急な話ではあるけれど、明日は日曜日。明日、多田さんに会って話そう。

 いつかは話さなくてはいけないこと。

 文芸部が文化祭で小説を刊行することになった今だから話しておきたい。


 そして、私は買い物を一通り終えて、多田さんにラインした。

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