花と空と少女

マフユフミ

第1話

曇った空を見上げ、少女は泣いた

「空に咲く花がほしい」と。

少女の涙はやがて暗い空をこじ開けて、

ひび割れた空の隙間から、涙の雨がこぼれだした。

その涙は汚れてしまった大地を洗い流し、

濁った水は川となる。

その川を糧として、地上に咲く花。

花びらは深く深い血の赤で、

少女の体からはらりはらりと流れ出す。

「痛くないよ」

花のささやきが聴こえる。

「寂しくないよ」

花びらが少女に絡みつく。

寒かった少女は花びらに覆われて、

ほんの少しの暖かさを知る。

まるで母親の腕の中のような。

まるで優しい光に包まれる家の中のような。

そう、もうこれで寒くない。

それでも少女は思う。

「空に咲く花がほしい」と。

遠くを見つめる瞳に、やがて月明かりが映る。

ふくらんでいく欲望を月に重ねるかのように。

だって人はいつしか消えてなくなってしまうから。

そんな日が、いつかきっと来てしまうから。

だからすべてに耳を傾けていよう。

はるか遠く、失われた空。

すべてが堕ちる前に昨日の夢が傷つけられていくなら、

両手を広げこの空を抱きしめたい。

やがて少女は花びらに抱かれたまま、

ゆっくり空へと消えていく。

赤に包まれた少女はいつの日か、

空に咲く花となる。

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花と空と少女 マフユフミ @winterday

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