第3話 青い果実
娘が近くにいるのかもしれないな。わからない・・・。
貴女との話に興味があるのだろうか。
大江健三郎の「美しいアナベル・リィ」の中にさぁ、米軍のフィルムに収められてたという噂のある日本の少女がいた。
白い寝具をフワリと着て、カメラ目線をおくっていたのだろうか?
色気もフェロモンもなく、エクスタシーという言葉さえ知らなかっただろう。
惹きつけるのは妖艶さでも豊満な肉体でもない。
触れると崩れそうな存在だ。
これから自分に起こることを予感する。怖いのに、何が怖いのかわからず私に抱きついてきそうなまでの可愛らしさ。
honey dew honey dew
甘い蜜の雫よ
あどけない顔をして、自分から湧き出てくるものが、誰かを魅了すると気が付くかどうかのスレスレのところにいる。そうだ、普通の女性とは違うのだから。
だが、あどけなさとしたたかさがオンナにはあるのかもしれない。
ああ、私はもう興奮しているよ。
しかし、くれぐれも・・・念のため・・・愚かな輩とは一緒にしないでおくれよ。
スッーと深呼吸すると、扉があるのが見えるんだ。
貴女は以前言っていたじゃないか。
女の理性のふっ飛ばし方を。浮世絵に出てくる女のように足の指を立てて・・・。
額に汗をかきながら顔を左右に振るんだろう?
エクスタシーの姿を教えたくはないのかい。
ああ、やっぱり・・・教えてやってほしくはないな。
汚れなき乙女を
全く手をかけずに
彼女のことを想像するさ
私は、魅了されるよ
そうなんだ。実行してはいけない。
そう。触れると崩れてしまうだけでなく、汚れてしまうのだから・・・。
汚しては、いけないんだ。
私の・・・大切な・・・壊れそうで、清らかな存在を・・・。
扉のあちら側とこちら側
イメージの中で広がり膨らむからこそ
愛おしく・・・興奮を覚えるのさ。
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