紹介:空

こんにちは、明音です。

今日は私の兄、空を観察してみようと思います。

あの人、一応私の兄だけど、私も理解してないんだよね色々。謎な人だから。

今日は日曜日。学校ないし家にいるんだけど……家から出る気配はなし、か。

あ、動いた。

外出るのかな? ……日向に行っただけかい。何なんだ、猫か?

あ、寝ちゃったよ。……どうしよう、何もなすぎてちょっと退屈だ。本でも読みながら観察しようかな。


……あ、起きた。


今度はスマホいじってる。多分、KAGAMI開いてるかな。

KAGAMIっていうのは、世界的に有名なSNSアプリ。多分天津の生徒のほぼ全員がやってるんじゃないかな? まあ、何かと便利だし。

お兄ちゃん返信あんま見ないから、溜まってるんだろうな。

お兄ちゃんは相当マイペースだと思う。


私はお兄ちゃんと二人暮らしなんです。

……高校生が二人暮らし大丈夫かってなりますか? 割と天津の人ってそんなんばっかですよ。天津高校は、人間もしくは妖怪とかの、何らかの事情があって居場所をなくしてしまった、または普通に生活が出来ない者が集められる場所ですから。……初耳でした?

まあ、私達にもそれなりに事情があるわけだけど、それはまた機会があれば話しますよ。

話が逸れたかな?

お兄ちゃんと二人暮らしなんだけど、私も全然お兄ちゃんのことわからないんです。

いつもどこか遠くを見てて、何か考えている風だけど、それを口にはしない。

昔はもっと口数が多かった気がするんだけど、いつからだろう、全然自分のことを話さなくなったんだ。

私としては少し寂しい。

すぐ寝るのも、何かから逃れるため? それとも、単に眠いからなの?

わからないのがもどかしく、こうやってたまに観察してるんだけどな。

もしかしたら私の視線にお兄ちゃんは気づいてるのかもね。


まあ、ミステリアスな兄です。

でも、私にとって唯一の家族。大切な人だよ。

なんて言いはしないけどね。

「明音、明音」

「ん、何?」

「これ、作った。飲む?」

そう言って渡されたのは兄お手製のハチミツ柚子茶。

私が好きだって言ったらたまに作ってくれるようになった。いつも今みたいに色々考えてるときにくれる。

……うん、優しいんだよね。


観察をやめてにっこり微笑み、兄の隣の席でハチミツ柚子茶を飲んだ。


やっぱ、自慢の兄だ。

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