第二十七話【修正! 合衆国の見解(2番目)】
国務長官と国防長官がやり合ったのには原因があった。元々仲が悪かった——というのは冗談だが、まあ価値観の違いだろう。
とは言え一番最初の声明、要は国務長官が最善と信じるそのコメントには俺からみても問題があると言うほかなかった。だから変えたのだ。
◇
ここで少し時を遡る。
◇
俺は大統領補佐官の一人を呼び出し、
「あのコメントは問題だった」と言った。
「同感です」と補佐官は返事した。ついでに分析まで付け加えてくれた。
国務省の中には日本が周辺国との領土問題を加熱させ、近頃は合衆国と中華人民共和国の関係にまで悪影響を及ぼしつつあることを不快に思っている勢力がいる。既に一部の有力メディアがこの手の論調で記事を書いており連中の拠って立つ地は造られていた。
だがそうした者には構わず、もれなく新たなコメントを発表し直すべきだ、という流れになった。新たなコメントはこうだった。
『核を使った恫喝を我々は許すことはない。アメリカ合衆国が提供する核の傘は同盟国の安全を保障する』
重要なことなので繰り返してみるぜ。新たなコメントは
『核を使った恫喝を我々は許すことはない。アメリカ合衆国が提供する核の傘は同盟国の安全を保障する』だ。
報道官がこれを発表した。ホワイトハウスからの追加声明という形で。一応国務省の顔は立てたつもりだ。これでサトーも大丈夫だろう。合衆国も大丈夫だろう。
しかしなぜ一度出した声明を新たに上書きしたのか? 当初の声明に不安を覚えた日本のサトーから電話が掛かってきたからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます