第二十六話【激突! 国務長官VS国防長官】
『核を使った恫喝を我々は許すことはない。アメリカ合衆国が提供する核の傘は同盟国の安全を保障する』というホワイトハウス第二番目の声明によりあちこちで対立が始まっていた。
国務長官が血相を変えて飛び込んできた。来るなり言いやがった。
「なんです? あのコメントは」
むろんそれはホワイトハウス第二番目の声明のことだ。
「それが理解できないのか?」俺のその言葉に国務長官は相当カチンときたらしい。まあ俺に〝バカ〟と言われたも同然だからな。
「そもそも、日本とロシア、日本と中国の対立の理由を知っているのですか?」
なんだ! コイツは、俺を試す気か? ふざけやがって!
「そんなものは先刻承知だ。領土問題だ」既に補佐官から国務省の内情は聞いていたから、この返事は〝即座〟だった。その〝即座〟な反応がよほどカンに障ったのか、国務長官の顔が乱れ始めた。返事に怒気熱気、脅迫の意が籠もる。
「日本の領土紛争で合衆国が核戦争のリスクをとるのですか? そんなものに国民が納得するでしょうか?」
「う……」俺は瞬間つまった。
確かに国民は納得などしないだろう。
だが、コイツの言っていることは国民的には正しくても、ワシントンの政治家的には正しくないような気がする。しかし国民の支持を経て大統領になったわけではない俺が国民を持ち出された場合弱い。そこへ助け船がやって来た。船と言うかもはや戦艦だな。
今度は国防長官が血相を変えて飛び込んで来る。
国務長官が大統領執務室で暴れ回っている(?)とホワイトハウスの誰かが通報(密告?)したのだろう。その顔もまた怒りに満ち満ちていた。誰に怒っているのかという感じだが国務長官に対してだろう。
国防長官は実にワシントンの政治家的模範解答を語ってみせた。しかし俺は不安になってきた。これは国民を納得させ得る主張だろうか?
果たして、国務長官は俺が内心考えたことを口に出して反論してみせたのだ。
しかし——
「お前のような奴は出世は無理だ。田舎へ帰れ」
国防長官がまるで俺が言うような粗野な台詞を口にした。これに国務長官が激しく反応。信じられないような大音量の悪口雑言の応酬が始まった。扉の外まで聞こえているかもしれない。俺の前任者はいったいどういう基準でスタッフを集めたのだ? 政治家として失格の烙印を一方的に押された国務長官は捨て台詞を残して去った。
「マスコミがどうあなたについて記事を書きますかな⁉」奴の言う〝あなた〟の中に国防長官だけでなく、大統領である俺も確実に入っている。
国防長官は国務長官が去った後もなお罵り続けた。国防長官は「アイツを今すぐ罷免すべきだ!」とまで言ったが、もちろんそんなことができるはずもない。
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