第6話〜聖剣ウィル〜
ガルドに虫型魔獣の巣に落とされて早一週間。
クロトの動きはもはや別人のものと化していた。
はじめは噛み付かれ、刺され、体液まみれになっていたクロトだが、今では虫たちを倒しながらも返り血一つ浴びていない。
「そういや、こいつら倒してもキリがないな......どこから湧いて来るんだ?」
などと考える余裕まで出て来ていた。
なるほど、さすが聖剣ウィルに選ばれるだけのことはある。センスがいいな。
そう思ったガルドは修行を次の段階に行くべきだと判断する。
「よし、坊主上がって来い!そろそろ次の段階に入っても良いだろう!」
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「お疲れ様です!兄さん!」
修行から帰るとクルルが出迎えてくれた。
村が帝国に襲われた日、当然俺たちの家も跡形もなく破壊されていたらしい。途方に暮れていた俺たちだがシェーラは一軒の空き家を俺たちにくれた。
流石に悪いと断ろうと思ったが、シェーラ曰く「勇者とはそういうものです」と譲らないので、ありがたくクルルと住ませてもらっている。
「クルル、お前は調子どうなんだ?」
「ええ、先生たちもとても優しいので、楽しいです!」
修行を始める前にガルドから言われた修行の第二段階、それは「ぬるい環境にいつまでもいてもしょうがねえだろ、国のダンジョン周りでもするか!!」ということだった。
だがそこでクルルは「兄さんのが行くなら私も行きます!!」と言い出してしまった。
俺は諦めるよう説得したがクルルは聞かなかった。ガルドはそれなら、とバルディアの魔道士たちから魔術の教えを受けるように言っていた。
クルルはもともとかなり頭が良い。
特に魔術士たちによると魔術においては天才と言える程らしい、特に赤魔法に関しては既に基本的なものは全てマスターしてしまった。
ガルドによると、勇者因子は勇者と近しいものにもその恩恵を与える。おそらく、クルルのそれもそういうことだろうと言っていた。
「なあ、クルル、本当について来るのか?これは遊びじゃないんだぞ??」
「何を言っているんですか、兄さん!私たちは、2人だけの家族じゃないですか......怒りますよ?」
クルルは本気で怒っているようだった。
「そう.......だな。悪かった。分かった、お前のことは俺が必ず守るよ」
「兄さん......っ!」
クルルの顔が真っ赤になっているようだがどうしたんだろうか。
俺らはしばし家族の時間を過ごした後、ガルドの元に向かった。
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「よし、お前らきたか!!いいぞ!入れ!」
ガルドのいる部屋の前に来ると部屋に入るように促される。
「まあ、もう驚かないけど......なんで部屋の近くに来るって分かったんだ?」
「そりゃあ、音とか気配とか、匂いとかもか?ハハハッ!」
本当にこの人はどうなってるんだ...
「そんなことよりよ、明日からのダンジョン周りの為に、お前の持つ聖剣ウィルの力について説明をしとくぜ」
ガルドは面倒くさそうな顔をしながらも話を続ける。
「聖剣ウィルはいくつもの力を持つ聖剣だ。本来ならその全てをうまく使って戦うんだが......封印によって今は全ての力を使えないようにしてある。まあ、加護だけはどうしようもねえけどな」
いくつもの力....か。
「とりあえず第一の力、アサルトアーツについて説明するぜ。聖剣ウィルには使用者の思った通りの形に変化する能力がある。聖剣つっても中には剣の形じゃねえものもあるからよ、聖剣てのは勇者を選定する武具の総称だと思ってくれや。おら、とりあえず、ウィル出してみろ。」
俺はガルドの言う通りに聖剣ウィルを呼び出す。聖剣は普段は実体化していないが呼び出そうと念じると実体化する。
ガルドはそのまま聖剣ウィルに触れるとキンッ!といいう高い音がした。
「今のは...??」
「ああ、第一の封印を解除した。これは俺の聖剣ホープの力なんだが...まあ、それは良いだろ。今の坊主の実力ならそこまでならもうのまれずに使えるはずだ」
そう言うとふう、吐息をつくガルド。
「まあ、今日はそれで話は終わりだ。明日からはダンジョン周りだ、お前らは家に帰って早く寝ろよ」
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ガルドはクロトたちが部屋を出ていくの見送るともう一度ため息をついた。
「思ったより早いが、まあ、いいだろ。奴に会ってクロトがどうなるかは俺じゃわからねえが。やるしかねえな」
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