第1章 神聖教国バルディア
第4話〜巫女と大剣の男〜
目を開けると、そこは見たこともない天井だった。白く清潔で、ところどころに金の獅子の紋章が刻まれている。ホコリひとつない所をみると管理がよく行き届いているのが見て取れる。
「お目覚めになりましたか。クロト様」
「えっと、ここは......?」
クロトの眠っているベットの横には金髪碧眼の少女が腰をかけている。
「......っ!! そんなことよりっ!!
おじさんは!!クルルは!!
あのピエロみたいな男は......っ!!?」
「落ち着いて、落ち着いて下さい。
......説明いたしましょう、一体、何が起こったのか」
シェーラと名乗ったその少女が説明してくれた内容はこうだ。
あの日、ドラグロア皇帝は自らを魔王と呼称し、帝国は大陸の全国家に対して宣戦を布告。手始めに緩衝国であったパーシに進行したという。
田舎の小さな村であったため、帝国の魔獣軍に対抗できるはずもなく、パーシ・バルディア連合軍の増援が駆けつけた頃には生き残っている者はクロト、クルルの2人だけだという。
「クソッ、村のみんな、おじさん......どうしてこんな......」
「クロト様、悲しみにくれるのは分かります。ですが、私も貴方様には話さなければならないことがございます」
そう言って、彼女は一呼吸置くと。
「クロト様、貴方は、聖剣ウィルによって、勇者として選ばれました」
ーーーーーーーーーー
「勇者とはこの世に存在する7本の聖剣に選ばれし、魔王を打倒し得る者の事です。クロト様、貴方にはこれから修練を積んでいただき、勇者として帝国に現れた魔王を打ち倒していただきます」
「わかったよ」
俺はすぐさま、そう答えた。
「えっと.......よろしいの....ですか??」
「ああ、困ってる人たちがいて、自分がその人達を助ける力を持っているなんて、そこで立ち上がらないなんて、それは俺じゃない。おじさんのことも俺は許せないし、そのために俺の力が必要だって言うなら、いくらでも使ってくれ」
「.........」
「ん? どうかしたのか......?」
「い、いえ、流石、聖剣ウィルに選ばれし勇者ですね。そう言ってもらえると、嬉しいです。それでは、お体に問題がないようでしたら、これからの生活についてお話しいたしましょう、どうぞ、こちらへ」
なにか引っかかるものを感じながら、シェーラは部屋の扉を開け、クロトについてくるように促した。
ーーーーーーーーーー
クロトはシェーラにつれられ長い廊下を歩いていると一際大きな扉の前で止まるように言われた。
「ん?どうしたんだ、シェーラ」
「こちらに、お入り下さい」
どうやら入れ、と言うことらしい。
俺は扉を開けると、部屋に愕然とした。田舎育ちの自分には縁のない、本とかで見た貴族の屋敷に出てくる、いわゆる大広間といったところだろうな、などと思っていると、その奥にはちいさな人影と大きな人影が一つずつ。
「なっ!??」
そこには大剣を突きつけられている妹、クルルの姿があった。
(クルル!??なんで、襲われて......!??)
奴は、クルルを襲う奴は......敵だ。敵は悪だ。悪....そう、悪は......
滅ぼさなければ
クロトは駆け出した。手にはいつの間にか剣が握られている。そして、人知を超える速さで振り下ろされる刃によって、村の時と同様、敵の腕を切り落とす......はずだった。
「おう、やっぱ、そうなるよな」
大剣の男はクロトをはるかに上回る速さでクロトの持つ剣を打ち上げ、腕を掴み、そのまま床へ組み敷いた。
「最初から勇者因子をコントロールできる奴はいねえよ、特に、ウィルクラスになると、余計にな。安心しな、妹には手は出さねえよ、坊主」
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