SaveNo.2~最大Lv1の俺が降臨クリィチャーに出くわしました
「さ、最大Lv1って・・・」
千春が驚愕の表情を向ける。
そりゃそうだ、俺の最大Lvが1しかないんだからな。
てか、俺の最大Lvが1ってことはこれ以上Lvもステータスも上がらないってことだろ?。
・・・死んだな。
勇也は、その場に座り込んで、まるで地蔵のように動かなくなってしまった。
「待って待って!なにかおかしいでしょ」
落ち込んでいる勇也に千春が声をかける。
「何が?」
「ここゲームの中なんでしょ?なんで最大Lvが1しかないの?」
「た、たしかに・・・」
言われてみればそうだ。この世界はゲームの中なのに、なぜ俺の最大Lvが1しかないんだ。
バグってこともまずありえない。・・・・・・謎すぎる。
「・・・もしかしてさ」
「「グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」」
千春が何か言いかけた瞬間、謎の雄たけびが聞こえてきた。
「なんだ!?」
「降臨クリィチャーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一人の冒険者らしき奴がそういいながら走っていった。
「おいおい・・・降臨クリィチャーってまさか・・・」
「ねぇ勇也・・・アレ・・・」
俺は千春の指を刺すほうに目を向けると、そこには、さきほどのグランドヒューマノイドよりも遥かに大きく、全身は鎧で、背中には暗闇のように黒い翼、手には山でさえ切れてしまいそうな、大剣をもっている、完全に人ではないヤツが立っていた。
そう・・・《魔帝 ゾルドミアス》が。
――――――――――――――――□■□■□―――――――――――――――――
「マジかよ・・・」
「逃げよう!勇也!」
「お、おう!」
俺と千春は全速力でその場を離れた。ただ生きることだけを考えて。
だが―――その思いは、一瞬でかき消された。
ドスッドスッ
俺らの走る音ではない音が響き渡る。
おもむろに、後ろを振り向くと―――ゾルドミアスが大剣を構えながらこちらへ向かって来ていた。
「ヤバイ!千春!」
「勇也!」
俺と千春はあっという間に追いつかれた。
「勇也・・・」
「・・・千春」
俺と千春が思ったことは一つしかなかった。それは―――
《死》
それしか思いつかなかった。
ゾルドミアスが大剣を勇也たちめがけて、振り下ろした。
―――その瞬間、勇也の頭の中に一つのことが浮かんだ。
―――――――――千春―――――――――
勇也は一人の男である。勇也は一人の男子高校生である。
普通に生きて、普通に泣いて、普通に笑う、普通の一人の人間だ。
ゲームばかりをしていて、回りから遠ざかられていた存在を、唯一認めてくれた、幼馴染という関係の女の子。
勇也は思った。「俺が死んだら千春はどうなる?」
(俺が・・・俺が弱いから・・・でも、せめて・・・アイツは・・・アイツだけでも・・・)
勇也はこの時思った。「たとえ自分が死んでもかまわない」と。
(俺が・・・俺が・・・)
勇也は決心した。
( ( (俺が千春を守る!!!!) ) )
―――――ゾルドミアスの大剣が俺たちを切り裂こうとした瞬間―――――
(もう・・・ダメだ・・・)
千春がそう思った時、勇也は――――――隣にはいなかった。
「―――グルォォォォォ・・・」
千春が気づいたときには、地面にゾルドミアスが倒れていた。
「一体何が・・・」
千春が驚いていると、後ろから「スタッ」と何かが着地した音が聞こえてきた。
千春が後ろを振り返ると、そこには―――――
白いオーラをまとった、一人の少年が立っていた。
――――――――――――――――□■□■□―――――――――――――――――
「あなたは?・・・」
「・・・」
千春が声をかけるが、反応がない。
少年は、その何もかもが白く、千春よりも少し背が高かった。
だが、千春はその少年に、何かの面影を感じた。
まるで・・・《勇也》のような・・・。
「もしかして・・・」
「グルォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
「!?」
話しているうちに、ゾルドミアスが立ち上がっていた。
ゾルドミアスは、千春めがけて剣を振り下ろした。
「キャッ!!」
バキン!
千春の頭上から、金属の折れる音がした。千春は閉じていた目をゆっくり開けた。
「なっ・・・嘘・・・」
目に入ったのは、先程の白いオーラをまとった少年が、ゾルドミアスの大剣を軽く殴っただけでその大剣を折る瞬間だった。
「待っていろ・・・」
「え?」
そう言うと、少年は「ヒュンッ」と音をたてて、一瞬でゾルドミアスの顔の前まで移動した。
少年が、ゾルドミアスの顔面を殴ると、ゾルドミアスは軽々と地面に打ち付けられた。
「グルァァァァァァァァァァァァァ!!!」
地面に打ち付けられたゾルドミアスは、少年を握り潰そうと試みる、だが、その握り潰した手は一瞬にして吹き飛び、中からゾルドミアスの返り血を浴びた、少年が現れた。
「弱いな・・・所詮はその程度か」
「グルゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・」
「「「スピアプラ」」」
少年はそうつぶやき、ゾルドミアスに向かっていった。だが、先程よりもスピードが上がっている。
「早い・・・」
ドスッ!ドスッ!と重い音と共に、ゾルドミアスの体に少年のパンチがめり込んでいく。
何十・・・何百・・・と高速で繰り返される。
「グルゥゥゥ・・・」
「これで最後・・・!」
少年がゾルドミアスにとどめの一撃を食らわせようとした瞬間、突如、少年の白いオーラが消え、少年は地面に落ちていった。
「あっ!」
千春は少年の落ちた場所へ駆け寄った。
少年の顔を恐る恐る覗き込むと、
「勇也・・・」
そこには、千春の幼馴染の切坂 勇也がいた。
――――――――――――――――□■□■□―――――――――――――――――
「ん・・・ち・・はるか・・・」
「今の少年ってやっぱり勇也だったんだね・・・ねぇ勇也、何があったの?」
「・・・それは俺にもわからないんだ。気づいたら、胸が熱くなって、力があふれ出てきて・・・そこから・・・」
勇也と千春が話していた時、いきなりゾルドミアスが立ち上がった。
「グルァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「しまった!」
気づいたときには、ゾルドミアスの拳が迫っていた。
「くそっ!」
勇也は両手を構えるが、力が入らないことに気づく。
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
俺と千春は目を閉じ、死を覚悟した。
その時だった。
「――――――よくがんばった。少年よ」
声が聞こえ、二人は恐る恐る目を開けた。
そこには、胴体を剣か何かで貫かれた、ゾルドミアスの死体と、金髪で白いマントを羽織った、青年が立っていた。
「アナタは一体・・・」
千春は恐る恐る聞いた。
「俺の名前は《アーサー・フリーデン》ギルド、《光剣の騎士団》のリーダーをやっているものだ」
「光剣の騎士団って・・・あの光剣の騎士団か?・・・」
「いかにもそうだ」
「ねぇ・・・どうしたの?」
「光剣の騎士団・・・このゲームの頂点に立つ最強のギルドだ。そのリーダーということは・・・」
「まさか・・・」
千春は理解した。
「そう・・・つまりこの人は・・・この世界の頂点に立つ人だ」
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