第6話 勇気~まどかside~
「ホントなの?平沢さん。」
「ホントだよ。」
「そう。これからは、ちゃんとやるのよ!」
「「はい。」」
ホッ・・・。私は、ホワイトボードに『瀬戸君、ありがとう。』と書こうとした。
「それより、瀬戸君。教師をあんたとか、お前とか呼ばない!!教師を何だと思ってるの!!」
え・・・?どうして、瀬戸君を責めるの?
先生の叱り声を聞きながら、ぼー然とした。
気が付くと、
バーン!! ホワイトボードを机に叩きつけていた。
『どうして、瀬戸君を責めるの!?掃除をさぼったのは私たちです。』
息しか出ない声で叫んでいた。
『先生は、ゴホッたす・・・ゴホッゴホッ!』
苦しみながらも話そうとする私を呆然と見つめる先生が、悔し涙で滲んで見えた。
「小谷、落ち着け。」
そう言うと、瀬戸君は私の背中をさすってくれた。その優しい暖かい手に助けられた。
「思いっきり叩きつけすぎだろ。ヒビ入って使えそうにないけど。」
ホワイトボードのない私に残された手段は、ノートに書くか、黒板に書くか。
私は、黒板に書きたかった。だから、自然と黒板を見ていたのかもしれない。
「もう、落ち着いたか。・・・書いて来いよ、思う存分。」
瀬戸君は、そう言うと背中を押してくれた。
『どうして瀬戸君を責めるのですか?掃除をさぼったのは私達です。瀬戸君が責められる理由なんてない。先生は、助けてくれなかった。一昨日だって私が一人で掃除してるのを見たはずです。だってあなたは、教室の横を通ったんだから。“教師を何だと思ってるの!?”って、こっちが聞きたい。一人で掃除している生徒を見捨てることが教師のすることですか?勉強を教えることだけが教師の仕事ですか?そんなの塾でもできる!!・・・誰にも瀬戸君を責められない。だって、掃除を手伝ってくれたのは、先生ではなく、瀬戸君でしたから。・・・どうせあなたは、いじめがあっても見て見ぬふりするんでしょ?そんな教師必要ない!!』
何を書いているのか、途中で分からなくなった。それでも、書き続けた。
先生は、泣き始めた。その姿にも怒りを覚えてしまった。
『泣きたいのは、こっちです!!あなたにわかりますか?教師に見捨てられた生徒の気持ちが!!』
無意識に黒板に書いていた。
「・・・1時間目の用意しなさい」
そう言って、先生は教室から去った。
私はその場を動けなかった。あふれてくる涙が私の視界を歪ませる。
泣き叫んでも、息しか漏れない。その息もみんなの動き始めた音にかき消される。
『何で!!・・・ゴホッゴホッ!!』
「大丈夫だ。落ち着け。」
瀬戸君は、気づいてくれた。
「先生に保健室行ってるって言っといて。」
そう言うと、瀬戸君は、私の手を引いて保健室に連れて行った。
君の手は、いつも私に勇気をくれる。
君の手は、いつも私を慰める。
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