第4話 叫び、涙~まどかside~
今日も一人で掃除なのかな・・・。
昨日は、瀬戸君が助けてくれたけどもう助けてくれないだろうな。
今日はちゃんと言い返さなきゃ。
ガラガラ・・・
「おはよー!まどかちゃん!!」
『おはよー、茜ちゃん!』
茜ちゃんは、明るくて運動神経抜群なんだ。
それに、友達思いだから、すごく友達がたくさんいるの。
このクラスになって、一番最初に「友達になろう!」って言ってくれた子。
はぁー・・・茜ちゃんと同じ掃除班だったらよかったのに・・・。
私は、席に着いた。
瀬戸君、まだ来てないんだ。
「まどかちゃん、昨日のMスタ見た!?」
『うん、見たよ。“moon dragon”出てたね!』
(moon dragonとは、今若者に超人気のロックバンドのこと。)
茜ちゃんは、私が書いてる間も待っててくれる。
カレみたいに・・・。
「そーだよ!!新曲めっちゃかっこよかったよねぇー。・・・今日の放課後、買いに行くか。」
『いいなぁ。買いたいけど、今月ピンチなんだー・・・。』
「じゃあ、貸してあげる!!」
『ホント!?ありがとー!!また今度、何かおごるね!』
「じゃあ、クレープで!!」
キーンコーンカーンコーン
「じゃ、またね!」
あれ?瀬戸君、まだ来てないな・・・。
「席ついてー!出席とるわねー。有田さーん。」
「はい。」
「小谷さーん!」
『はい。』と言えない代わりに手を挙げた。
「瀬戸くーん。」
ガラガラ
「ふわぁーい・・・。」
「瀬戸君、遅いじゃない。何してたの?」
「ねぼー・・・。」
「これからは気をつけなさいよ。・・・」
瀬戸君、今にも寝ちゃいそう。なんか、かわいいな・・・。
『おはよう。昨日は本当にありがとう。』
ホワイトボードには、書かずに紙に書いて渡した。
パサッ・・・
『おはよう。』と瀬戸君は、返してくれた。
たった4文字なのに、君からもらったこの言葉はとっても嬉しかった。
ーーーキーンコーンカーンコーン
「小谷さん、今日も塾があるから掃除お願いしていい?」
「あ、私も病院行かなきゃいけなくて・・・」
「私も今日用事があって・・・」
「私もちょっとお母さんから頼まれたことがあって・・・」
「「お願い?」」
ホワイトボードに『みんなでやればすぐに終わるよ。』と書こうとしたけど、右手を掴まれて書けなかった。
「いいよね?・・・あんたはただ、頷けばいいんだよ。」
っ!!
私は、頷いた・・・。
気づくと、教室には私しかいなかった。
何で、何で、私の声は出ないの?
言葉が喉の奥まで出てるのに、声にならない。
『うあぁぁぁぁ!!・・・ゴホッ、ゴホッ!!』
叫んでも息が漏れるだけ。
そしてその後、咳が出て苦しくなる。
「叫んでみて気持ち良かったか。」
『!!』
どうして、瀬戸君がいるの・・・?
『なんで・・・』
口パクだった。なのに、君は・・・
「今日“も”ただの気まぐれ。」
涙が、瞳に溜まっていた涙が、流れた。
「さっさと掃除すんぞ。黒板頼む。」
・・・今、私の喉でつっかえている言葉たちをこの黒板に書いてもいいかな?
すぐに消せばいいー・・・
《どうして僕には声がないの?伝えたい言葉がたくさんあるのに、全部が喉の奥で引っかかって、息苦しくなる。声さえ出れば、この苦しみから解放されるのに。必死に口を動かしてみても、叫んでみても、漏れるのは、息だけだ。それなのにどうして君は、息しか出ない僕の声が聞こえるの?どうして僕の叫びが聞こえるの?・・・君になら伝わる?・・・僕はもう一度、たったもう一度でいいから、歌いたいー・・・》
黒板に書いてみると、少しスッキリした。
「・・・だって、小谷の表情わかりやすいし。」
『へっ?』
まさか、返事が返ってくるとは・・・
「ほら、今だって驚いてる。“まさか、返事が返ってくるとは・・・”みたいな?」
『!!』
「あ、図星。・・・ほんと、わかりやすい(笑)」
キュン!!瀬戸君が笑った途端私の心拍数が上がった気がした。
「掃除、さぼるか?」
『へ?』
「今日、七時間授業だったし、それに俺たちも全然掃除しようとしてないし。掃除やったら、終わるの5時半ぐらいになるけど?」
『・・・さぼっても怒られないかな?』
今度は、ホワイトボードに書いた。
「怒られないだろ。まぁ、怒られてもあいつらだってさぼってんだし、いいんじゃね?」
『そっか・・・さぼっちゃお!』
私は、黒板の言葉を消そうとしたー。
「待って!・・・なんか歌詞みたいでかっこいいから、写メらして。」
『へっ!?』
パシャッ。
『ちょ、恥ずかしいから消して!!』(口パク)
「いいじゃん、記念だよ。掃除さぼった記念。」
掃除さぼった記念・・・、君と。
私は、スマホを取り出し・・・パシャッ。
「なんだ、小谷も撮ってんじゃん。」
私たちは、黒板だけ消して教室を出たー・・・
「なぁ、小谷って電車?」
頷いた。
「桜台からだよな?」
頷いた。
「俺も。・・・てか、腹減った。」
グゥー・・・
「腹の音で返事すんなよ(笑)。」
恥ずかしい・・・。
「クレープでも食うか?」
頷いた。
クレープ屋さんに着いた。
「小谷は、何する?」
『ストロベリー&チーズケーキ!』
「了解。」
「ご注文はお決まりですか?」
「ストロベリー&チーズケーキ1つと、チョコバナナ1つで。」
財布は・・・っと、あった。
「お会計は、2つ合わせて780円になります。」
「これでお願いします。」
へっ!?
「800円から頂戴しますね。お釣りは20円になります。・・・こちらが、ストロベリー&チーズケーキになります。」
『あ、ありがとうございます。』
「こちらが、チョコバナナになります。」
「・・・あざす。」
私、お金払ってないよぉ!
「あ、あそこのベンチでも座るか。」
頷いた。
座ってすぐに、ホワイトボードに書いた。
『お金いくら?』
「いらない。・・・ん、うめ。」
いらないって!!
ホワイトボードにもう一度書こうとした。
「もうそろそろ財布しまったら?」
『昨日も瀬戸君に助けてもらったのに、今日はクレープ奢ってもらうなんて悪いよ。』
「だから、昨日のも、これも気まぐれだから。・・・助けたつもりないから。」
その言葉は、私の涙を流した。
「・・・涙腺弱すぎだろ。」
君の気まぐれは、優しい気まぐれだよ。
パク・・・
涙を流しながら食べたクレープは、甘酸っぱい恋の味がしたー・・・
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