永遠の青

しちみ

0.雨

――落ちていく。

しずくとなって、落ちていく。

地面に落ちた水滴は、しぶきとなって消えていく。

――それはまるで、命のようだ。


命の滴は、やがて命の雨となる。



 その夜は豪雨だった。空から降る雨は白い筋か濃霧のようで、周囲の風景を覆い隠している。腹の底に響くような轟音と、絶え間ない水しぶきは、世の終わりさえ予感させるようであった。

 西の地の、いつもは穏やかな林も、今は止まない雨にぬれている。獣も鳥も身を潜めていて、生命の息遣いは感じられなかった。――だが、ふいに、林の中に影が落ちる。直後、雨音にまぎれて重い物が草木に叩きつけられる音がした。

 木々のはざまに落下した影が、ゆっくりと動く。動きに合わせて、赤い滴が草の上に滴る。それすらも、雨水に流されて薄らいでしまったが。それでも、赤い滴は――鮮血は、何度も何度も染みをつくった。

 空気が震える。闇と水と木々に覆われ影のように思われたものは、生物だ。荒い呼吸を繰り返し、血だまりが広がりつつある地面と己の体を見比べた。

 震える。

 体が、そして心が。壊れかけた、魂が。

 止まない。止まらない。この激しい雨も、生命の消費も。

 このままでは死んでしまう。林に落ちたものは、それを悟っていた。

 同時に思っていた。

 だめだ、と。


 自分がここで死ぬのは、絶対にだめだ。


 影が再び、ゆったりと動いた。今度は、動きがだんだんと激しくなっていく。影の中心に、青い光が現れた。光は大きくなっていき――やがて、影を覆う球となる。

 この後弾けた光が、命を失いかけていたものがどうなったのかは誰も知らない。

 ただ、突然の雨は、長い間止むことがなかったという。

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