第4話−1

 それは、今から一ヶ月ほど前の話。マキは久し振りに、レイナの家に遊びに行った。その時、初めてレイナの父さんと会ったらしい。本当の父さんでない事は既に聞いていたけど、血が繋がっていないようには思えないくらい、二人は普通の親子のようだったそうだ。

 レイナとは対照的に、マキは父さんと良く喧嘩をしていた。何かにつれうるさい、あたしのやる事を頭ごなしに否定しようとする、といった愚痴は、あたしも良く聞かされていた。最近は、あまり口を聞かないようにしているけど、向こうから無理矢理話しかけてきて、すぐ喧嘩になると、さんざん言っていた。

 その日も、家を出る前に喧嘩をしてきたので、マキはレイナに父さんの愚痴を言いまくったそうだ。レイナは、マキの愚痴を聞いて「駄目だよ、お父さんとは仲良くしなきゃ」と言ったらしい。これをきっかけに口論となり、マキは遂にキレてしまった。

 マキは、どちらかと言うと感情的な子だ。人前では、周りに気を使ったり、またキレてしまわないようコントロールしているから、マイナスの感情をそのまま表に出すことは滅多にしない。けれど、あたしと二人きりになると、時にはかなり辛辣な事を言う事もあった。マキが愚痴を言いまくっている時は、かなり感情が高ぶっていて、恐らくはマキ自身にも感情のコントロールが出来なくなっているんじゃないかと思う。そういう時には、ちょくちょく失言や暴言が混じるから。

 たぶんレイナは、マキのそんな激しい一面を知らなかったと思う。少なくとも、あたしが見ていた限りでは、マキはレイナと一緒の時は態度が柔らかかったから。レイナに毒気を抜かれていたのかもしれない。

 とまれ、悪気は無かったとは言え、レイナはマキの逆鱗に触れてしまった。そしてマキは、弾みで「お父さんの本当の子供じゃないじゃない」という台詞を言ってしまった。言ってしまってから、さすがにしまったと思ったらしく、そこで口論は終わったそうだ。一応、その場ですぐに謝ったものの、気まずい雰囲気は消えず、すぐに帰ってきた。マキがレイナと会った最後の日は、こんな風に終わってしまった。

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