第2話−1
次の日の昼休み。マキの提案で、体育館の脇で一緒にお昼を食べる事にした。適当な木陰に座って、食べながら最初はいつも通りの、他愛のない話をする。わざわざこんな人気のない場所を選んだのは、たぶん昨日の話を続きをするためだろうと予想していたけど、やはり幽霊の話を切り出してきた。
「昨日の話だけど」パックのラテを飲んで、一呼吸置いてからマキは続けた。「話が途中で切れちゃったけど、誰か詳しい人に話を聞いてもらって、って言ってたじゃない?家に帰ってから思い出したんだけどさ。うちのクラスの、有島って知ってる?」
「いや……聞いたことない」
「なんか真面目そうって言うか、ちょっと暗そうな男子なんだけど。いや、確か成績も良かったんじゃないかな。とにかく、噂だけど、そいつが幽霊とか、そのへんの話に詳しいらしいのよ」
「その子に、話を聞いてもらうって事?」
「他に当てがないからねー。ユウコは、誰か知ってる?」
「うーん、ごめん、知らない」
そもそもオカルトにあまり興味が無いのに、この手の話を相談出来る相手に心当たりがある筈もなかった。そう言えば、マキもオカルト話には、そこまで興味が無かったと思う。
「お金の事もあるしさ。そいつに解決してもらおうってんじゃなくて、取り敢えず相談してみようかな、って」
「なるほど。取り敢えず、試してみる?」
「それでね」マキは、あたしの顔を覗き込んだ。「一緒に来てくんない?」
放課後。さっさと支度を済ませて隣のクラスに向かうと、入り口のところでマキが手を振っていた。
「ごめん、ちょっと急ぐ。有島くん、もう出て行っちゃった」
小走りで校門に向かう。
「有島くーん!」
マキが校門の手前で呼びかけると、そこにいた男子の一人が、振り向いた。ちらとマキの顔を見る。彼が有島くんで間違いなさそうだ。
ちょっとびっくりしたような表情で、こちらに身構えているようにも見える。髪型はごく普通のショートカットで、確かに真面目そうな雰囲気がある。ただ、マキが言っていたような、暗そうだという印象は特に感じない。
「ごめん、ちょっと話がしたいんだけど、いい?」
「話って、僕に?」
彼は、戸惑ったような調子で答えた。
「噂で聞いたんだけどさ。有島くんって、幽霊とかに詳しいって、本当?」
「ああ」彼は、なるほどという表情をした。「一応、興味があって、色々と調べたりはしているから、普通の人よりは詳しいとは思うけど」
「ちょっと、相談ごとがあるんだけど、聞いてもらっても大丈夫?」
「こっちは大丈夫だけど、期待に沿えられるかは分からない。さっきも言ったけど、あくまで好奇心で調べてるだけで、あまり本格的に勉強してるわけじゃないから」
抑圧があまりない声で、ゆっくりと話した。
「真剣な相談なら、信頼出来る霊能者に相談した方が良いとは思う」
「いや、そもそも本当に幽霊なのかも分からないし、とにかく、ちゃんと幽霊の話が出来る人に聞いてもらいたいの」
そうか、と有島くんは小さく呟いた。
「まあ、自分でお役に立てそうなら。取り敢えず、話は聞いてみるよ」
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