エピローグ

如月君と交際を始めて半月が過ぎようとしていた。


部活のテニスも始めたので、以前の平凡で退屈だった毎日が嘘のように忙しくなった。


「双葉さん!ボール拾いお願いね!」


「はい!すぐやります」


「双葉さんはボール拾いは良いから、わたしの練習に付き合って、ボール拾いはあなたがやって!」


「部長、そんな‥」


「文句あるの?だったらわたしの練習相手やってくれる?」


「それは‥無理です」


「じゃあ、ボール拾いお願いね、双葉さん行くよ」


「はい、岡山部長‥」


「どうして二年のわたしがボール拾いなの?岡山さんは何であの新しい一年生に肩入れするのよ?」


「諦めた方が良いよ、双葉さん中学の都大会でベスト16だって」


「えっ!ベスト16?」


「今度の部長は実力主義だから仕方ないよ」


「そんな子が何で今まで部活やってなかったのよ」


「しかもすごいイケメンの彼氏がいるんだよ、彼氏もテニス相当上手いらしいよ、部活の帰りに三軒茶屋駅でよく見かけるよ一緒に帰るとこ」


「え〜っ、羨ましい!」


「おしゃべりしてるとまた部長に怒られるよ、さっさとボール拾いやった方が良いよ」



「岡山部長、わたしボール拾いやりますよ?」


「そんなのやらなくていいから、実力ある人はもっと練習しないとダメだよ、そんな時間もったいないよ」


「部長‥」


「だいたいみんな甘いんだよ、だったらもっと上手くなれって言いたいよね、テニスの部活は遊びじゃないんだからね、双葉さんが入部してくれて良かったわ、次の大会期待してるからね」


「はい、頑張ります」




「巧、待った?ごめんね遅くなって」


「いや、僕も今来たとこ、和加奈は毎日楽しそうだね?」


「うん、とっても充実してる。公私ともにね!」


「琴美がね、和加奈にテニス教えて欲しいんだって」


「わたしに?巧が教えたらいいじゃん」


「僕じゃダメだってさ」


「どうして?」


「和加奈に料理と同じように教えて欲しいんだって、テニスも絶対上手く教えてくれるからってさ」


「そっか、わたしで良ければ構わないけど」


「琴美喜ぶよ、それと今日はうちでご飯食べようよ?」


「巧の家で?」


「琴美がご馳走してくれるってさ」


「琴美ちゃんが?実は部活で疲れてもうお腹ぺこぺこ、喜んでご馳走になります」


「琴美、名コーチのおかげで料理の腕上げたんだよ」


「それは楽しみだな」


「じゃあ、これから帰るってメールしておくよ」


「わたし巧に会わなかったら、ずっと平凡で退屈な高校生活だったと思う、巧に会えて本当に良かった」


「それは僕も同じ、和加奈とこうしていられるなんて夢みたいだからね、高山さんに感謝かな、ラブレター落としてくれて」


「高山さんか‥そうだね、彼女、今は別の人にご執心みたいだよ」


「和加奈、彼女と話すことあるんだ?」


「うん、巧が彼女に言ってくれたから‥」


「何をだい?」


「ずっと前から双葉和加奈が好きだったって‥」


「僕、そんなこと言ったかな?彼女に‥」


!わたし謝られたんだよ彼女に、でも嬉しかった」


「本当のこと言っただけだよ」


巧は少し恥ずかしそうに答えた。


「お母さんがね、巧をいい加減紹介しろってうるさいんだよね、そろそろ家に来てくれないかな?」


「うん‥でも緊張しちゃうよね」


「大丈夫だよ、お母さん優しいから、今週の日曜日なんてどうかな?」


「わかった、行くよ」


「本当に!お母さんにメールしよ、善は急げ」


「和加奈、電車来たよ、琴美が待ってるから早く行こう」


「うん」


わたしの右手は、彼の左手にしっかり握られている。


わたし達を乗せた世田谷線はゆっくりとしたスピードで三軒茶屋駅を出発した。



 ー完ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋文(ラブレター) 神木 ひとき @kamiki_hitoki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ