第22話 異世界求職者-18

「転生者に対抗しようと一般人が考えたら、精霊術を極めて精霊師になるか使役術者になるくらいしか方法がないのが現状なんだ。人生の全てを捧げても会得できるのはほんの一握りだけどな……」

「使役術って、一朝一夕で身に付くものじゃないってことか?」

 訓練している暇はない。

「使役術は精霊術に比べれば運に拠るところが大きい。わざわざ常人種の下僕になんかなりたいという個体なんているわけないだろう。使役されると言うことは主よりも格下だと定義ずけられることを意味するんだ。基本的に人に使役されれば力は著しく低下する。そんな条件下で受動的な努力をしても効果は期待できないわけだ。一番確実なのは転生者の仲間になって、上位種を半滅してもらい弱ったところで契約を結ぶという方法だろうな」

「使役術の概要はわかった。具体的な方法を教えてくれ」

「一つだけ言っておくが、もし彼女が契約を拒んだ場合は、俺とフェンで介入させてもらう。見ず知らずの水神より、仲間である栄太の方が大事だからな」

 会ったばかりの俺を仲間呼ばわりしてくれるなんて、ソールは本当に主人公ぽいな。

「了解」

「名前で存在を縛る。ただ、それだけだ。くれぐれも心を見透かされないように気をつけろ」

 ソールのアドバイスを念頭におきながら、優しくデアダクリの上半身を起き上がらせた。

「もしかしたら、デアダクリは助かりたいなんて思っていないのかもしれない。結局これは俺の自己満足だ」

 頼むから抵抗しないでくれよ。

「……」

 名前か。海、川、湖、水月……水から連想できるものが良いとは思う。

 泡、炭酸水、淡水……デアダクリの淡い笑みが一番記憶に残っている。

「新しい名前はアワイだ」

 デアダクリが静かに目を開いた。

「主様。こんな所をあの御方に見られたら嫉妬されてしまいそうにございます」

「身体の調子はどうだ?」

「不思議な感じが致します。これまでに感じたことがないほど晴れ晴れとした気分にございます」

「良かった」

「これからは主様の従僕として精一杯務めさせて頂きますのでーー」

「何か堅苦しいな。俺のことは栄太って呼んでくれ」

「それでは栄太様と呼ばせていただきとうございます」

「よろしく、アワイ」

「はい、栄太様」

 差し出した手をアワイが掴んだ。

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