変わった景色と変わらぬ景色と多感な小学校時代

残念なことにボクの通っていた小学校は廃校になっていて、図書館の分室になっている。仕方なかったと思う。だってボクの世代で既に2組ずつしかなくて、空き教室がばかりだったんだから。

嫌なことも楽しいこともいっぱい初めて経験した場所と当時。

テストの意味が解らなかった低学年時代。算数が苦手で引き算が10より上から引けなくて0点ばかり。そんなボクをママは毎回叩いた、お腹を蹴った。仕方ないよ。ママは頭がよかったし、要領もすごくいい人だから。何をしても躓く頭の悪い娘にイライラしてしまうのは当たり前なんだ。

中3まで続けていたピアノ。最初は嫌で嫌で、ママのことも教えていた先生の所からよく逃げ出していた。去年亡くなったママのママ、お婆ちゃんと仲良しだったから直ぐにバレて怒られた。

「私の言うことを聞いていれば出来るんだから、言うことを聞いてなさい」

頭では聞かなくちゃって、でも体は反発してた。

小5になってまさかの名字の読み間違えをされ、出席簿を書き換えなければなら

なかったちょっとした事件。……忘れ物するたびに空き教室に担任に引きずられて折檻され続ける日々。

全部でき損ないなボクが悪い。……違うよって言ってくれる人もいなかった。

ああ、あと通学班での通学途中、あとちょっとで学校、あと数メートル先を曲がれば学校って時。まだ小2だったかな?小3だったかな?ボクはバランスを崩して左顔面から転んだ。痛いとかわからなかった。でも何だか赤かったのだけは覚えてる。何が起きたかわからなくて周りの音も声も聞こえなかった。気絶でもしていたかのかな。いつママが来たとか、いつ救急車で運ばれたかも覚えていない。覚えているのは、左頬が大きなガーゼで覆われていたこと。何針か縫ったらしい。全く覚えていないけれど。今でもうっすらと傷跡がある。触らないとわからないくらい小さなもの。頬の唇寄りにね。あの時からかな?転びやすくなったのは。

何でもやりたがる子どもだったから、男の子に喧嘩吹っ掛けて見事に負けたり。怖かったのは、痴漢が多発していて……友だちが被害を受けているのを目撃したのに怖くて逃げ出した事。最低だね、ボクは。


芝園団地はある意味、小国だ。

1号棟から15号棟?くらいまであって、場所によっては何階かが丸々遊び場。遊具もある。

ボクの最初にいたとこは、一階が色おに出来るような大きな遊具があって、外に面した場所には木造の大きなテーブルと連結した長椅子がいくつか。お隣には公民館。目の前には賽の目になってる赤いコンクリートしかない赤広場があり、四隅に煉瓦の囲いがあるちょっと大きめな樹木が植わってる。四段くらいの階段を降りたその場所は、ボクらの遊び場だった。三方に階段があって、一方はさっきいた場所。それを背後に右は古い円形の屋根つきのぐるっと真ん中が空いたドーナツみたいな椅子がいくつか。目の前は上がった先に、左に行けば商店街、右にいけば更に棟が点在する。

子どもにとっては安全な大冒険場所ってわけ。どこにいっても、どんな遊びをしても危険なんかなかった。道路に出るのは親とだけ。

だって歯医者さんもスーパーマーケットも飲食店も、本屋さんや郵便局や交番、何でも揃ってる。夏場には商店街の前の広場で盆踊り。

郵便局と本屋の間の細い道を抜ければ、最後に住んでいた場所の駐輪場前。ちょっとしたボクの秘密の場所。一人でいたいときはそこにいく。

ママと喧嘩をしたら、一階ににげての木造のテーブルセットにかじりついて離れない。迎えにくるのはいつもパパ。何にも言わずに宥めて連れ帰ってくれる。すぐに手が出るママだけど、淡白が目立つパパだけど、やっぱり育ててくれたのはこの二人だから。大好きに変わりはない。夫婦喧嘩は日常茶飯事で、あそこから引っ越してからも暫くはしてた。弟は友だちのとこに逃亡。全てのトバッチリはボク。


『9号棟の9階には9羽の九官鳥がいる』なんて流行ったっけ。


体の中が軋み始めてたけど、長年の友人がいつも一緒に遊んでくれた。お絵描きしたり、人形遊びしたり。今笑ってられるのは君がいてくれるからだよ、ありがとう。今は擦れ違ってるけど、誰よりも大好き。


まだまだあるけど、芝園町は思春期全てが詰まった大切な場所。白詰草で花輪を作った思いでの場所。……あるだけでいいんだ。全てが変わったわけじゃないんだから。


━━ボクを育んでくれた場所だから


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移り変わりを感じながら 姫宮未調 @idumi34

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