第3話 名を盗む 予告編②
「まずは犯人の候補にあたりをつけようか」
ショーが真っ先に行うべきだと判断したのはそれだった。
本物だからこそ分かること、気づくことのできる手がかりや情報が有る。それを使って父に先回りして偽者を叩くのだ。
他の誰でもない本物として、真っ先に偽者を倒さなくては怪盗の名が廃るというものだ。
「犯人の候補ね……心当たりが有るの?」
「三つ有る」
ショーはクーに向けて指を三本立てて見せる。
「一つは父の会社に恨みを持つヴィラン。だがこいつらがわざわざ僕の名を使う必要は無い」
「そうね」
ショーは頷いて一本指を折る。
「もう一つは僕達ショータイムそのものに恨みを持つヴィラン。しかしわざわざ父の会社をダシにする理由が薄い。元ヒーローの“プロヴィデンス”が率いる警備会社の本社をわざわざ狙うなんて完全に自殺行為だよ」
「確かに、私達と警備会社の両方を同時に敵に回すなんて馬鹿らしいわ。もっと別の所に予告を出して、各個撃破した方が安全よ」
「となると相手は自然と絞られてくる」
「どんな相手?」
ショーは二本目の指を折り、人差し指だけを真っ直ぐに伸ばす。
「僕の正体にあたりをつけている奴だ。ショータイム一号の正体が僕なのかどうか断定できる材料が欲しい連中だよ」
「ぼっちゃまの正体を? まさか……」
「居るの? ショーの正体を知っている人なんて」
ショーは頷く。
「正確には推測可能な人物だ」
「誰?」
「ロクロー・アルバ、僕に異能の使い方を教え、ヒーローになる為の指導を行った元A級ヒーローだよ」
その名前を聞いた瞬間、クーは目を丸くする。
「ロクロー・アルバ……? もしかして元ヒーローで、
「そうだ。彼等がショータイム一号の犯行の話を聞けば、僕とショータイム一号の関係を疑う。だって彼等の多くは僕の古い仲間だからね」
「貴方が!?」
「ロクロー・アルバは多くの若きヒーロー候補生を指導し、
「筈だったって?」
「坊ちゃまはアルバ様からのお誘いを断られたのです」
「断ったの? なんで?」
「同じ人間同士で見下したり、争い合ったりするなんて間違っていると思わないか?」
「ふふっ……ショーらしいわ」
「
「世間からはヴィラン扱いよ?」
「知ったことじゃない。僕は僕の正しいと思うことをやる」
「ヒーローからも、ヴィランからも追われるって訳ね。楽しいわ」
「そういうことになるな。こんなのまだ手始めさ」
ショーの表情に恐れは無い。
彼は覚悟を決めて此処に戻ってきたのだ。
「ともかくこれは僕を嵌める為の罠。父ではなく、裏切り者の僕を狙った
「話を聞く限りはそうね」
「つまり、君を僕の都合に巻き込むことになる」
「貴方、記憶喪失の人間を拾って養っておいて今更ねぇ?」
クーはウインクしてみせる。
最初から彼女は覚悟が決まっていた。
何が有ってもショーの傍に居る。彼女の信念にも揺らぎは無い。
「安心なさい。私達は異能怪盗ショータイム。二人で一人の怪盗よ」
「クーさん……!」
「うふふ、今は二号とお呼びなさい!」
「じゃあ二号。続いて予想される
「まっかせなさい!」
「マルヤマ、父さんから当日の警備体制について聞き出して。奴らが狙ってきそうなところを重点的に護るんだ」
「おまかせを」
「ちょっと一号? 大事なこと忘れてない?」
「大事なこと?」
「予告状よ、予告状! 偽者に負けない本物の予告状を用意しなきゃ!」
「あっ!」
「おやおやぼっちゃま、うっかりなさってましたな?」
「ええい、急いで書くぞ! 爺やは父さんの様子を急いで探ってきて!」
「ぼっちゃまご安心下さい。すぐに行ってまいります」
「よーし! カンダ綜合警備保障に送りつけて、社員にSNSで拡散してもらうわよー!」
「おう!」
こうしてショータイム一号と二号は早速机へ、マルヤマは社長室へと向かう。
今までに無い危機にも関わらず、彼等は一様に愉しげな表情を浮かべていた。
*****
【予告状】
偽・異能怪盗ショータイム様
師走も半ばとなり、ますますご多忙の時期に恐れ入ります。
本年中にご挨拶をさせていただきたく一筆申し上げます。
単刀直入に申し上げましょう。
私共の名を騙り、カンダ綜合警備保障へ予告状を送った件について幾つか伺いたいことが有ります。
もしよろしければ
長く時間をかけるつもりはありませんから。
それでは、いずれまたお会いしましょう。
異能怪盗 ショータイム一号&二号
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