1話「犬さん、覚醒する」
ぶろぐvar
http://suliruku.blogspot.jp/2016/10/1.html
『目覚めるんだお』
『犬さんは転生して三歳児になったんですぞ。覚醒の時ですぞ』
『暴走トラックには勝てなかったよ……』
見知った邪神の声に、僕は意識を覚醒させた。
すぐ、目の前に、大量に伐採された木材が、無造作に放置されている。
木材の切れ口が恐ろしいほどに滑らかだ。
斧やチェンソーでは絶対にありえない、そんな鋭い切断面。
きっと、ウォーターカッター並に何でもスパスパ切る道具を使ったのだろう。
【ナイフ格闘術がLV99になりました。これ以上はレベルが上がりません】
ナレーション邪神さんが、今の現状を教えてくれた。
どうやら――これらの木々を伐採したのは、覚醒する前の僕がやったらしい。
僕の持つ能力は、15スキル限定でどんな技能も、恐ろしい習熟速度で極める事ができるという代物だが、重機でやるべき仕事を、ナイフでやるなんて――
「アホすぎるだろ!?覚醒する前の僕!?
もし、僕が居る方に、木が落ちてきたら人生終了じゃないか!
子供だからって安全意識無さ過ぎるだろ!」
『いやいや、違いますぞ、犬さん』
『素手で伐採していたんだお。事故って落ちてきた木も素手でバラバラにしてたお』
『どんな苦難も素手で切り抜けてきた幼児だった』
「素手でどうやって木を切断するんだよ!?
チェンソーでも、木を真っ二つにするのが大変なのに!
植物の細胞って固いんだぞ!」
『ほら、手に魔力を纏えばワンチャンスですぞ?』
『これで君は今日から、素手で何でも切断できるビックリ人間しゃん』
「三歳児の犬コロが、そんな事したら異端認定されるわ!
しかも、あれだろ?
今回も獣人が差別されまくって、同族の女の子に会えないってオチなんだろ!
地球は俺たち獣人が生きていくには狭すぎるだろ!」
『大丈夫ですぞ!今度は地球じゃないっぽい!』
『獣耳の獣人が住む集落が近くにありますお』
「やったー!
同胞がたくさん居る世界だぁー!」
『異種族の大国に包囲されているから、一つミスすれば絶滅ルート!』
『犬さんは大変ですお。戦争になったら物量で押しつぶされて人生終了だお?』
「喜ばさせた後に、僕を絶望へと突き落として楽しいか!?
この邪神どもめ!」
『邪神じゃないですお!』
『ご先祖様だと言ったら、何度言ったらわかるんだお!』
『酷い!何度も助けてあげたのに!』
『そんなー』
「僕の転生術スキルを利用して、魂に寄生して勝手に付いてきているだけだろ!?」
そうだ。浮遊霊状態の邪神どもの相手をしている場合じゃない。今の僕の外見を確認しよう。
三歳児だから、周りに広がる森が、巨人が住んでいる森のように大きく感じる。
手はよく運動している小さな手だ。
細長い尻尾がお尻から生えていて、白銀のような銀色である。
衣服は、高級感溢れる……絹製の白いズボンとシャツを着ている。
合成された絹ではない。天然の絹だ。
つまり、製造コストがやたらとかかる高級品だ。この衣服。
白いって事は、まだ新品なのだろう。
つまり、僕は――とんでもない裕福な家に産まれたんだ。
「僕はどんな家に産まれたんだ?」
『領地持ち貴族ですお!』
『しかも、可愛い世話役付き!』
「僕の顔はどんな感じだ?」
『将来的にイケメンに成長のは間違いなし』
『羨ましいですお?』
「やったー!
今度の人生は勝ち組だ!ようやく僕の人生が始ま――」
『でも、頻繁に敵対勢力がやってくる準紛争地帯』
『頑張るんだお。オラたちは犬さんを暖かく見守っているお』
『獣人を繁栄させて欲しいですぞ、偉大なるモフモフ神を復活させて欲しいですぞ』
「お前ら!
本当に希望をプレゼントしてから、絶望させるのが好きだな!
僕の反応を見て楽しんでいるだろ!?」
『犬さん!それよりも狐娘が危ない!』
『世話役のモーニャンたんが山賊達にエロゲーチックな事をされそうな寸前だお!
金髪美少女を守るのは男の義務だお!』
「なんだって!?
可愛い娘が危ない!?しかも、狐娘だって!?」
『犬さんの世話役ですぞ!』
『早く助けに行くんだお!
オラ達の視界をジャックすれば、居場所がわかるお!』
僕は、すぐ様、交信術を使った。
僕の技能スキルは、転生する際にほとんど失われるが――0歳の頃から、この邪神どもが語りかけてくるから、テレパシーなどが使えるようになる交信術スキルが三歳児になる頃にはLV99になっている。
この交信術は極めると、他者の身体を借りて、視覚や聴覚などを通して、遠い場所を見る事が可能なんだ。
次々と邪神どもの身体を使い、ここから50mほど離れた森林地帯に、複数の人影があるのを見つける。
薄汚れた衣服を着た男たちが5人が、愛らしくて美しい狐娘の巫女服を脱がして強姦する寸前だった。
狐娘は大きな黄金の尻尾と、少し大きな胸がとっても魅力的で、人間の年齢で例えるなら十歳児くらいの体格に育っている。
肌は健康的に焼けていて、とっても僕の好みだ。
彼女がモーニャンという世話役なのだろう。
早く行って助けるべく、僕は足音を立てずに地面を走った。
現場は、商人とか絶対通らない獣道。
通るのは、狩人とか、アホな覚醒前の僕とか、野生動物くらいしか通りそうにない酷くて狭すぎる道――
「なんでそんな場所で、山賊が出るんだ!?
あいつら、もっと儲かりそうな交易ルートで仕事しろよ!」
『自動車が発明されると、自動的に消滅する職業だぁー!』
『地球だと絶滅危惧種?保護した方が良いんじゃ?』
「山賊は職業じゃなくて犯罪者だよ!?
それに地球の山賊は、武装勢力って名前で存続しているだろ!
……というか!
ここ地球とは全く違う星か!
戦闘車両も保有してない山賊なんて、今時いないだろ!」
『漫才している場合じゃない』
『はよ、モーニャンちゃんを助けに行け』
「言われなくても!既に走っているよ!」
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1話時点の残りスキルスロット 15/15(0)
①転生術LV99 極
転生すると記憶が残る。意図的に不都合な記憶を削除する事も可能
この能力を維持しているスキルでもあるから、破棄すると主人公は普通の獣人さんになっちゃう。
②交信Lv99 極
(ネットの皆が索敵して、会話までしてくれる。寂しくないお)
レベルアップすると、他人の視界をジャックして、広い範囲を見る事ができる。
戦争向け
③ナイフ格闘術L99 極
残りの容量を大量のゴミスキルが埋め尽くして、機能不全状態。
早く破棄しなきゃっ……!
今まで取得した技能スキルまとめ + ゴミスキル
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Game_fuu_sukiru/Ginou.html
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山賊「人間は売れる(確信」
武装勢力「麻薬で子供たちを洗脳して、殺戮マシーンにするよー」
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