ゲーム風スキルは異世界最強なんだよ!・ω・`)ノ

@parume

プロローグ~記憶の映画館~

ぶろぐvar

http://suliruku.blogspot.jp/2016/10/blog-post_86.html


Q.人は死んだらどこに行く?


僕の場合は、この一人ボッチの映画館だ。僕以外、誰の姿もなくて薄暗い。

正面に設置された四角いガラスが、今までの大事な人生の一場面を……次々と投影している。

輝く黄金の尻尾が素敵な狐娘が、生肉を美味しそうに食べている最中に襲われて密猟者に殺されて、守れなかった事を悔いて泣く僕。

活気あふれる狼娘が、戦場で純潔と命を散らして果てる悲劇、そして、地面に転がって無残に死んだ僕。

商売王になる事を夢見る猫娘が、皮肉にも金持ちの家で剥製にされ、無残な屍を晒し続ける現実。

僕の人生は、大事な女の子を守れずに、いつも負けてばっかりだ。

何度死んで、何度転生しても、人生の最後は圧倒的な敗北で彩られている。

……もう疲れた。人生を生きる事そのものに疲れたよ……。

これだけたくさんの犠牲と、辛い思い出を背負っていたら、身体が生きていたとしても――精神が死んでしまいそうだ。

記憶が重くのしかかってきて、考えるのも嫌になってくる。

大事な女の子達が居た事すら忘れないと、僕はこの無限地獄へと陥った人生を生きる自信がない。

そろそろ――頭の中を綺麗に整理しないと、頭痛に悩まされる頃になったという事だろう。

死んで生まれ、死んで生まれ、死んで生まれ、僕の人生には全く終焉の兆しが見えない。


『……記憶を削除するお……?』


すまないな、邪神の皆。

記憶を片付けないと、僕の頭はゴミ屋敷のようになってしまう。

背負った荷物を捨てないと、旅を続けられないんだ。

僕は……もう身軽になりたい……。


『どの記憶を忘れるお……?戦いの記憶を削除するお……?』


邪神が呟くと、狐娘との心温まる日々が投影された。

彼女は生肉が大好きで、舌の上で脂が溶ける馬刺しが大好物だった。

動く度に、大きな尻尾が揺れて動いて、僕の心を癒してくれるムードメイカーさん。

……この記憶ですら、僕の精神に重くのしかかり苦しめる。

僕は百年単位で生きた人生の記憶とともに――狐娘との大切な思い出を削除した。

精神が楽になって、何故か、目から水滴が落ちた。


『次はどの記憶を削除するお……?』


今度は、活気あふれるスポーツ大好きな狼娘の映像が投影された。

白金のような毛艶の獣耳が愛らしくて、下ネタが大好きな……良い娘だった。

力仕事が得意で、いつも僕の隣に居て戦ってくれて心強い良いパトーナー。

……僕は百年単位で生きてきた人生の記録とともに――彼女の事を忘れた。

頭の中が楽になって、リラックスできたのに、目から涙が出て不思議だ。


『つ、次はどの記憶を捨てるお……?』


もう……半分くらい一気に捨てよう……。

そうしないと……僕は……楽しく生きていけない気がする……。


『おいこら!?猫娘の扱いが酷すぎるぞ!?』

『酷すぎるお!?ここは猫娘の事を思い出しながら、記憶を削除するシリアスな場面だお!?』


いや、一回一回、映像確認してから記憶削除とか効率悪いし……。

削除した事すら忘れてしまうから、僕視点だと意味ないし……。

そもそも、邪神どもの事すら、記憶を削除したせいで、どこの誰なのか分からないし……。

お前ら誰だっけ?お前ら、何人いるの?


『ひでぇ!?』

『長い付き合いなのに酷いお……』

『うむ……犬さんの記憶容量を上げる方法を考えないと……そろそろダメになってきたな……』


……こうして、僕は五千年に相当する記憶を削除した。

なぜか、頭は軽くて気分爽快なのに、心が苦しい……。


『会話中に酷いお……』

『猫娘のナズーニャンが可哀想だお……』

『次の人生を頑張るんだぞ……犬さん』


ああ、僕は今度こそ生き抜いて見せる。

そして、人生初めてのガールフレンドを作って、獣人を繁栄させて幸せになるんだ……。


『ツッコミを入れて良い場面かお……?』

『いや、犬さんは記憶を削除して、完全になかった事にしてしまったんだ……。

教えない方が良いだろうな……うむ』


さぁ、映画館の上映も終わり、僕が転生する時がやってきた。

今度こそ幸せな家庭を築いて、ゆっくりモフモフして過ごすんだ……。

視界がブラックアウトして、僕の意識は深い暗黒へと染まった――









意識が覚醒した。絶望的な難易度の人生が始まった!

……。

……。

……。

……あれ?なんで、僕は映画館に居るんだ?

転生したんじゃないのか?


『犬さんは赤ん坊の頃に死んでしまったお』

『また……過去の映像を見ないといけないですぞ!』

『うむ……私達も、犬さんの人生を見せられる訳だからな……見飽きて辛くなってきた……』


もうやだ……この人生の難易度……

……僕の人生ヘルモード……。

ああ、獣娘のガールフレンドを作れた記憶もない……。

可愛い娘とイチャイチャして平和に暮らしたいなぁ……。

投影される映像のほとんどが……人間と繰り広げてきた戦いの歴史ばっかり……


『獣娘のシーンがないから、余計に視聴が辛いお……』

『激しい戦争映画も見すぎると飽きてくる件』

『うむ……なんと言えばいいのか……獣娘の姿が皆無だと……映画はむさくるしい場面だらけだな』


……女友達がゼロで悪かったな!お前ら!

今度こそ、転生して、素敵な尻尾が似合う獣娘と仲良くしたい!

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