止まり木からの便り(300字SS)

 SIMは極力軽く強く。

 翼部分には太陽光発電パネル、ボディに極小回路を入れて、最初に一度起動の魔術を手動でかける。

 電書魔術の小鳥は羽ばたく。ふわりと浮かび、風に乗って旅立っていく。


「どこに行くかな」

「どこだろうね」

「海を越える?」

「越えるかもね」


 小鳥はカメラに景色を撮す。

 街を越え、山を越え、海峡を渡り、砂漠を横切る。

 人々を捉え、群れを見守り、緑色の天蓋を越え、鯨の噴き出す潮を潜る。

 そうして、電線に、木の枝に、小屋の屋根に、氷壁の縁に止まったときに、気まぐれに足跡のようにデータを残す。


「わぁ……!」


 小鳥は旅を続けている。自身に電書魔術をかけ続け。

 小鳥は空を飛び続ける。動くこと叶わぬ子供の代わりに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る