脈探し(300字SS)

 タブレットをタップする。魔術書は音も立てずに起動して、付近の様子を探り出す。温度に湿度、電磁波、それから。不明なことが多いとはいえ電書魔術に死角はない。

「ここだ!」


 *


 両手に持ったL字の棒が何もない場所で不意に開く。奴は僕らをちらりと見やり、紅い唇を三日月型に歪めて見せた。

 タブレットを細い指でドラッグ、タップ。俺たちの努力と徒労のスコップ跡から五メートル。地面がみるみる掘られていく。

「スマートだな」

「うるせぇ」

 やがて音が湿り始める。ねぎらいの声が奴にかかる。

 人の輪の中で奴は笑む。勢い余って虹がかかる。

「ほれたな」

「うるせぇ」

 鋭い視線がよこされ、逸らされ。

「脈はないな」

「……うるせぇ」

 奴は微笑む。

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