山岳電魔書景(300字SS)

 手頃な石でかまどを組む。チタンマグに水を入れ、かまどの上へ落ち着かせる。

 電波は無いが充電には余裕がある。内蔵ライブラリから電子魔術書を読み出して、かまどの下へとセットする。

 中空に生まれた炎が熱をマグに伝えていく。熱は滲むように水へと伝わり、やがて気泡がぽつりぽつりと生まれていく。

 岩の一つへ腰を下ろす。マグから昇る香気の湯気は、風に攫われ赤と黄色の合間を抜ける。熱と炎が作り上げた燃えかすのようなコンクリートの街並を、見下ろし渡って見知らぬ蒼穹の彼方まで。

 ふと、空へと火球が昇った。MANAは激しく煙を吹き。

「遭難だ!」

「だれか、ロープの電魔書!」

タブレットを片手に山男が山女が仲間の救助に動き出す。

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