MC編 終了後


「この度は、報道部部長の美代小豆みしろあずきが掲載させて頂きました"ハンバーガールず!"を読んでいただき、誠にありがとうございました!!」


 ガコッという音と共に一間開き、小豆は続ける。


「応援のメッセージもいただき、とっても嬉しいです!! これからもお姉ちゃんと一緒に、気を引き締めてハンバーガー屋さんの食レポを頑張っていきたいと思います!!」

「お前、リビングでなに独り言言ってるんだ?」



 小豆はリビングでボイスレコーダーを握っていた。そこへ風呂上がり全裸でバスタオルを首にかけた美代餡子みしろあんこが現れる。

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!? 家だからって、裸で出てこないでよ! 服着てよ服!」

「はぁ? 別に誰かに見られてる訳じゃないんだから良いんだよ。それよりも、さっきからリビングで大きな声を出してどうした? ボイトレなら自分の部屋でやりなよ小豆こまめ

小豆こまめじゃなくて、小豆あずきだよ! それと、ボイトレじゃなくて、お礼の記事を書こうと思って録音しておいたんだよ。あと、録音の練習をね!」

 小豆の反論を聞きながら餡子はキッチンへ向かい、冷蔵庫からビールを取り出す。プシュッと缶を鳴らすと、中の冷え冷えに液体を食道から暖まった体に流し込んでいく。

「……っん、あ~うま。そう言えばこの前のハンバーガーの記事どうしたんだよ? ちゃんと記事かけたのか?」

「それがねお姉ちゃん! 反響があったんだよ! 久しぶりにハンバーガー食べたくなったとか! 私とお姉ちゃんのやりとりが面白いとか!」

「ふーん。そっか、どんな記事を書いたのか知らんが良かったな」

 興味なさそうに、グビグビと腹の中にビールを注ぎ込む餡子へ、更に小豆が続ける。

「という訳でお姉ちゃん! この調子でまた続きを書こうと思ってるから手伝ってよ!」

「あ? 何で私がまた?」

「何だかんだお姉ちゃんの解説があったからこそだよ!」

「……そうだな。お前だけじゃ到底食レポなんて書けなかっただろうからな」

 餡子はビールを飲み干すと、また新たな缶を冷蔵庫から取り出す。それを見た小豆はたまらず制止の意志を投げかける。

「まだお昼前なのに、飲み過ぎだよお姉ちゃん!」

「良いんだよ。アタシはただ喉が乾いただけ。ビールは飲み物。故にどんな時でもビールは飲んで良いんだよ」

 缶を持った餡子はそのまま部屋を出ていく。

「まあ、気分が乗ったらまた食レポに付き合ってやるよ。どうせ今コンテスト用の小説制作しかしてないしな」

「お姉ちゃん大学は行かなくて良いの?」

「単位揃えたから受ける必要な授業がないんだよ。人生最後の夏休み、好きなことをし・な・きゃ・な!」

 餡子は会話中にリズムを取りながら、最後には尻で扉を押し閉めて出ていった。

「……」

 小豆はその一部始終を見続ける。

「……やっぱり、お姉ちゃんの生態を記事にした方が受けるかもしれない……お姉ちゃんの部屋の反応も多かったし……」

 そう言って、小豆は録音ボタンを切った。

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