第2話宝箱の中身は

 今日もまた、私の宝物が増えた。


 よろよろの折り紙には、大きな丸のなかに小さな丸が二つ、横棒が一つ描いてあり、大きな丸の上には茶色のクレヨンでぐるぐるが描かれている。


「幼稚園でママ、描いたよ」と言ってケンタがくれた私の肖像画だ。


 ケンタの絵は、私だろうとパパだろうとばぁばだろうとじいじだろうと全部同じ顔だ。でもケンタが「ママ、描いた」と言ってくれたのだから、これは私。

 私はお礼を言って、その絵を宝箱の中にしまう。


 宝箱の中身は、私を描いた絵、そしてケンタから私へのラブレター。


 最初に貰った手紙には「すさ」と書いてあった。

 次は「すき」

 次は「まま すき」

 ひらがなが書けるようになったのが嬉しいらしく、よくお手紙をくれる。

 少しずつ、少しずつ、「お手紙」っぽくなってくる。

 私はそれに貰った日にちを書き込み、全部宝箱にしまう。


 宝箱には名前がある。


 「中二箱」


 ケンタが大きくなって、中二位で反抗期になって、「うるせーな、うぜーんだよ」とか私に言うようになった時。


 そっとこの「中二箱」を一人で開け、微笑み、ぐずぐずと涙を流そうと思っている。

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