5 第一発見者の話

僕たちは、次に第一発見者の人の話を聞くことにした。第一発見者は、ルベルク・サルトという外国人の男性だった。

「オ~。そうですね。私が企画展示室に行こうと思ったら、いきなりレディの叫び声が聞こえたので、びっくりしたってことぐらいしか。」

ピシッとしたスーツを着ていたルベルクさんは、首をかしげた。僕は、ルベルクさんの胸元にきらっと光るものを見つけた。よく見ると、それはエンブレムをかたどったブローチだった。

「そのブローチかっこいいですね。」

「オ~。そうですか?これは私の母国のシンボルなんです。」

ルベルクさんは大事そうにブローチをなでながら言った。

「へー」

僕は、ちらっと未知流さんのほうを見た。未知流さんは、ブローチを見ながら、何か考え事をしていた。

「何かわかりましたか?」

「うーん。なんにも。」

未知流さんは、何にもなかったかのように、すっとぼけた。

「なんにも・・・」

僕は、少しあきれてしまった。さっきまで考え事をしていた未知流さんの顔が嘘みたいに消えている。

「そういえば、まだ現場見てませんでしたよね?」

僕は、思い出してそういってみた。

「ん?・・・あぁ、そういえばそうだったね。じゃあ、現場みてみようか。」

未知流さんは、また考え事をしていたみたいだけど、何にもありません、というふうにさっさと企画展示室のほうに行ってしまった。僕は慌てて未知流さんを追った。

 僕たちは、犯行現場の企画展示室に行ってみた。中に入ってみると、真ん中のガラスケースに黄色い規制線がはられていた。そのガラスケースは、真ん中にぽっかりと穴が開いていた。

「なにがあってんでしょうね。あんな穴が開いちゃて。」

僕は、穴が開いたガラスケースを見ながら言った。

「本当だね。そうだ、レク、ガラスケースの下に何か落ちてないかい?」

「えっ。」

思わぬ未知流さんからのお使いで、少し戸惑ったけど、僕は、規制線の奥にあるガラスケースに近づいた。その下をみると、何やら液体が固まった感じになっていた。

「ありました。ガラス破片ってわけでもなくて液体みたいな・・・。一応とっておきますね。」

「そうしておいて。」

未知流さんは、何やらほかのことを考えてるみたいに、気に抜けた返事だった。まあ、仕方がないか、と思い立ち、ピンセットで固まった液体をはがして、小瓶にいれた。

「未知流さん、取れましたよ。」

僕は、未知流さんに声をかけた。今度は、しっかりした返事が返ってきた。

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