3 初仕事は宝石

次の日、僕は、事務所を訪れた。すると、未知流さんが、

「ちょっときて。依頼人がきてるんだ。」

と、言った。僕は慌てて、未知流さんの隣に座った。向かいには、少しやせたおじさんが座っていた。

「紹介するよ。こちらは依頼人の東山透ひがしやまとおるさん。」

未知流さんがおじさんを紹介したので、僕も名乗った。

「僕は、幸村玲玖、といいます。未知流さんの助手をしています。」

「玲玖君ですね。わかりました。私は、東山と申します。東山美術館の館長をしています。」

おじさん・・・東山さんはそう言って、ぺこっと頭をさげた。東山美術館なら僕も知っている。東山美術館で有名なのは、〝桜のチェリーフラワー〟という大粒のガーネットだ。

「いったいどんな、依頼なんですか。」

僕は、気になって東山さんに聞いてみた。東山さんは、思い出したかのように話し出した。

「あ、あぁ、そうでしたね。実は、当館の企画展で展示していた〝青いブルースター〟が何者かに盗まれてしまったのです。」

「えっ!」

僕は、思わず声をあげてしまった。

「それはいつ頃の話ですか。」

未知流さんは冷静に質問をした。

「あ、そうですね、たしか・・・昨日の2時くらいだったと思います。企画展の展示室を監視していた、石川幸子いしかわさちこが何者かに襲われ気絶させれたんです。それを発見したのが外国人の男性でした。彼が『宝石がない。女のひとが倒れてる。』って大声で叫んだんです。それを聞いた受付の坂上咲さかがみさき佐藤小恋さとうここが警察に通報したんです。」

東山さんが一息に話した。

「う~む。」

僕はうなってしまった。今の話からは、全くわからなかった。

「わかりました。それでは今から現場検証をしましょう。レク、準備して」

未知流さんにいわれ、僕はコクンとうなずいてショルダーバッグの中身を確認した。こんなこともあろうかと、いろいろ準備してきたのだ。入れてきたものは、ノート、ペン、虫メガネ、ピンセット、スポイト、小瓶が数個、ゴム手袋、懐中電灯だ。どれもこれも探偵物を読んで探偵たちが持っていそうなものを、選んで持ってきたのだ。

「準備できました。いつでも行けますよ。」

未知流さんにそういい、僕は立ち上がった。

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