第六十話「あれから」
Side 冴葉 幸一(さえば ゆきひと)
これはとある科学者の昔話。
ブレンが襲来するよりも、
ブラックスカルが暗躍するよりも、
天照学園に日本政府がテロを仕掛けるよりも以前の話。
科学者、冴葉 幸一は大企業のスポンサーとしてロボットを研究している以外はごくごく普通の研究者。
家庭にも恵まれ、幸せな人生を送っていました。
ですがその幸せは人々の手で破壊されることになりました。
アナタのロボットは平和利用のためだと言うが軍事利用される危険性がある。
アナタのロボットは戦争の道具にされる。
アナタはロボットを戦争の道具にする危険な科学者だと。
そう言われて彼は危険人物に仕立て挙げられ、平和思想と言う名の過激な人々の手により彼は行方を眩ますことになりました。
Side 天野 猛
ブレンとの戦いが終わり、少しばかりの月日が流れた。
ヒーロー部、悪の組織部は各政財界や学園とも連携して戦災復興作業とチャリティ巡業を行った。
その間にも倉崎君は宮園さんや志郎さんと一緒に闇乃さんを必死に捜索したものの、手掛かりは見つかったが途中でぽっきりと途絶えてしまったらしい。
倉崎君が言うには「闇乃さんのエネルギーは独特な物で激しい反応が検出されたのは確か」、「その付近で複数の高エネルギー体の、闇乃さんが放つエネルギーに似たエネルギーを放出する存在が確認された」らしい。
元々闇乃さんは復讐のために黒いセイントフェアリーを追って、天照学園に来訪したそうだ。
倉崎君は黒いセイントフェアリーを追うために天村財閥――悪の組織部に再合流する形になった。
そうして僕達ヒーロー部はと言うと――
☆
『これよりヒーロー部と悪の組織部による特別ヒーローショーを行います!!』
晴天の真っ只中。
ヒーローフェスタと呼ばれる行事にヒーロー部と悪の組織部(ほか、演劇部などの天照学園の部活メンバー)猛達は参加していた。
本当はロボットフェスタだったが急遽ヒーローフェスタとなり、官民問わず様々な次世代ロボットやパワードスーツを紹介している。
まあブラックスカルの事件で自衛隊ブースと警察ブースなどは散々な有様だったが――ブレン軍との戦いで多少は信頼は回復したが、国家ぐるみでカラーギャングと手を組んでイチ学園機関にマッチポンプしかけたあげく、そのカラーギャングに裏切られてこれまでの悪事を全部暴露されて危うく国家転覆されかけたのだ。
どうしても人々の目線は厳しくなってしまう。
ともかく、天照学園のヒーロー部、悪の組織部による合同のヒーローショーその物は概ね好調だ。
と言うのも演劇部などの指導もあるが、何度も地方に回りつつ復興の手伝いや地方などでチャリティ巡業などをしていてメキメキと演技力も上がってきたのも大きい。
また演劇用の資材も天村財閥や宮園財閥、天照学園に各スポンサーからの提供などで不必要なぐらいに豪華だ。
グッズの売買などもやっていて何気に売り上げも順調であり、一部はブレンとの戦いで傷付いた人達への援助、復興資金となる。
当面はこう言う感じの活動を続けることになるだろう。
☆
Side ヒーロー部・城咲 春歌、揚羽 舞
ヒーロー部、悪の組織部、協力部活などの共同の休憩スペース。
そこに天野 猛たちがいた。
それぞれショーの確認したり、休憩時間どこを回るのかとか馴れたもんである。
「自画自賛になるかもだけど、やっぱり時間制限付きだけど強力なフォームって番組だと盛り上がるから色々と美味しいんだよね。ファイズとかドライブとかさ」
天野 猛はと言うとサブカル談義(特撮方面)に花を咲かしていた。
「春歌――また始まったわね」
「ええ、舞先輩――ほどほどなところで止めに入りますんで」
「アナタも苦労するわね」
「そうですね」
後輩の天野 猛の悪クセを見て揚羽 舞は城咲 春歌に同情する。
猛は元々は気の合う人とそう言う談義がするのが好きで喋り出すとストップをかけないと延々と続けてしまう悪癖がある。
学校ではある程度セーブを掛けているがハメを外すと多少強気でストップをかけるか運良く会話が途切れないかぎり延々と喋り続けるのだ。
「ともかくキリのいいタイミング見計らって私が止めますね?」
「任せたわ」
苦笑して提案する春歌に舞も苦笑しつつ同意した。
「ちょっと大変!! なんか変な連中きてる!!」
そんな時、演劇部の部員がそう言って休憩所に飛び込んで来た。
☆
表に出てみるとみんな、「うわ~」となった。
戦争反対。
軍事利用反対。
ヒーローは戦争の道具ではない。
などなどプラカードを掲げて好き勝手にヒーローショーの舞台を占拠して自分勝手に好き放題に主張している。
さらにはスマフォをちらつかせて何かしらの実力行使に踏み切れば好き勝手に編集してネットに拡散するつもりのようだ。
この手の輩は地方巡業にも姿を現したことはあったが今回は最大の規模だった。
舞も春歌も「うわぁ・・・・・・」となった。
「まだああ言う輩いたんだ・・・・・・」
「そうですね舞先輩・・・・・・ブレン軍が暴れ回っていた時、なにしてたんでしょうか・・・・・・」
春歌も舞も含めてヒーロー部、悪の組織部、演劇部、普通の一般人含めてみなカルト宗教団体の集会を見る目だ。
正直関わりたくもないが関わるざるおえない状況で内心穏やかではない。
「どうしましょう舞先輩?」
「どうするたって言ったってねえ」
春歌と舞はどうするべきか悩んでいる
「ここは実力行使ですかね」
「あ、志郎。いたの?」
金髪の美少年、天村 志郎がヒョッコリ現れた。
サングラスに黒い外陰と言う悪の総統コスチュームを身に纏っている。
「ショーと言う事で片付ければいいんですよ」
「上手くいくのそれ?」
いくらなんでも力技すぎる。
無理矢理もいいところだ。
「なあに。最悪手違いと言う事にすればいいんですから」
「うわぁ・・・・・・発想が悪者っぽい」
「はははは、今の僕には褒め言葉ですよそれは」
などとやり取りしていたその時だった。
「おや? 今度は何やらブースが騒がしく――」
今度は他のブースの方が騒がしくなってきた。
何かしらの破壊音や悲鳴が聞こえる。
どう考えてもただごとではない。
さらに遠方にはこのヒーローフェスタの目玉の一つである50m級巨大ロボットまで稼働して暴れ散らしていた。
「ちょっとこれ、洒落にならないわよ!?」
舞の一言はその場にいた全ての人々の意見を代弁していた。
「明らかに暴走してますね――理由はどうあれ止めに行かないと。私と姫路さん、マスクコマンダーに嵐山先生で指揮態勢を整えます。演劇部の皆さんの手を借りて避難誘導しますんで先に出動してください」
志郎は早口ながら舞に算段を伝える。
演劇部の人間も防御力特化型の悪の組織部制、戦闘員パワードスーツを身につけているので最悪戦力としても運用できるが戦闘には送り出さない方が無難だ。
「分かったわ。そっちも気をつけなさいよ。春歌、行くわよ――」
「ええ――」
春歌が答えるとヒョッコリ猛が現れて「僕も準備万端だよ」と答えた。
「会場を回っているメンバーも独自に戦闘を開始してるみたい」
「ならさっさと行かないとね」
「ええ、行きましょう猛さん」
「うん」
そして三人は騒乱の地となっている会場へと向かった。
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