第五十九話「それぞれの道へ」

 あの戦いから少しの月日が経過した。


 世界中――特に日本の被害は甚大で今も復旧作業がそこかしこで続いている。


 地球連邦も月のアルテミス王国も同じくだ。


 そうした中で世界を救ったヒーロー達は暫くの間、救助活動に従事し、それが一段落すると――


 Side 倉崎 稜、宮園 恵理、カルマ、ティリア、マリア、御守 摩耶


 端的に言って倉崎 稜と宮園 恵理はしばらく離ればなれになった。


 見送りのために人で混雑する天照学園と本土を繋ぐ天照大橋の前で稜と恵理はいた。


 恵理の後ろにはカルマやティリア、マリアに御守 摩耶などがいる。


「まあ契約は続行ってワケだ――また来るよ」


 と、カルマがぶっきら棒に言う。


 契約とは宮園 恵理が追っている組織の追跡とそれに伴う恵理の護衛任務の事だ。


 ティリアも「また休みが取れたら顔出すからな?」と笑みを浮かべていた。


「んじゃあ稜――お別れね?」


「ええ」


 二人は別れの前で二人きりで過ごした。

 

 その前は闇乃 影司のお墓参り――と言ってもいいのか――家の管理のために影司の家や学園に立ち寄った。


 あの天照大橋の一件もあるが、何だか死んだような気はしないのもある。


 生きているだろうが不吉な予感があるからだ。


 なので皆、死んだと言うより行方不明と言う認識が強い。


「正直まだ私は復讐を捨て切れてないけど、以前よりかはマシよ。取りあえず手の℃届く範囲で復旧作業を手伝いながらあの組織を追うつもりよ」


「はい。何があったら直ぐにでも駆けつけます」


「そうならない事を祈るわ。じゃあね」


 そして二人は衆人観衆の視線など気にせず口づけをした。



 Side 森口 沙耶、春龍


 ホテル七星。


 今は避難施設として一部部屋を解放した。


 オーナーである中国人女学生の春龍は忙しい日々を送っていた。


 だが来客者を出迎えるぐらいの余裕はあるらしく、眼前には森口 沙耶がいた。


「皮肉なもんよね、宇宙人のテクノロジーの御陰で復旧が想像以上に早く進むだなんて」


 沙耶の言う通り、今日本は宇宙人のテクノロジーはそこかしこに転がっている状態だ。

 世界中や宇宙にも部隊を展開したが、日本はその量が桁違いだ。

 それを得るために世界中から支援の手が続々と集まっており、しぶとく生きてた日本の政治家連中はこれを利用し、デザイアメダルの一件で低下した国際的な地位の回復を目論んでいる様子だった。


 世界の危機も喉元通り過ぎれば人間なんてこんなもんである。

  

 春龍も「まあ私達も同じ穴の狢だけどね」とボヤく。


「だけどその日本政府もまたきな臭くなってるのよね」


「へえ~話を聞きましょうか?」


 沙耶が出した話題に春龍は興味を持った


 

 Side 黒崎 カイト


 黒崎 カイトは恋人のアサギの墓参りを済ませると再び彼は旅に出た。


 今度はもう何が現れても迷わないだろう。

 

「またメダルの化け物か――」


 急速に復旧が進むとある町でデザイアメダルの化け物が再び出現する。

 デザイアメダルは日本全国各地にばらまかれているのだ。

 ある日、突然どこかの町中に出現したとしても驚くことではない。 


「しかたない――変身!!」


 再び言うがもう黒崎 カイトは迷わない。

 

 答えは得ているのだから。



 Side JOKER影浦


 大統領と月の王国の国王とのモニター越しでの極秘会談を終えた。

 内容は先のブレンとの戦いについてだ。


 どんな巨悪を倒しても平和を掴み取ったのなら人の営みは続いていく。


 それはつまり政治の世界も続くと言うことだ。


 相変わらず日本政府との仲は悪いがそんな事を心配できるのも平和だと言うのだろう。


 だが困ったことに――まだまだ新たな戦いの兆しが大小合わせて迫ってきている。


 その戦いの波を上手く潜り抜けられるかは――少なくとも自分のようなロートルが鍵ではないとJOKERは考えていた。



 Side 嵐山 蘭子、マスクコマンダー、揚羽 舞、グレース・ナディア、姫路 凜、天村 志郎、ホーク・ウィンド、風間 忍


 正直言うと嵐山 蘭子は懲戒免職を覚悟していた。


 しかし天照学園の学園長本人から「あの危なっかしい連中の事を任せた」とお願いされた。


 勿論罰則はある。


 学園島や日本本土の彼方此方でチャリティイベントをしてこいとの事だった。


 それで連日大忙し。


 時にはデザイアメダルの怪人とも戦いリアルヒーローショーをする事もある。


 それ抜きでもトラブルは頻発する。


「お前はいいかげんナンパすんのやめんか!?」


「ぐぉ!? 


 例えばグレースが同年代の少女をナンパして姫路 凜が殴り飛ばしたりとか。


(なんで私こんな人気なんだか・・・・・・)


 揚羽 舞は相変わらずの人気で囲まれたりとか。


「いや~予算があるって良いことですね」


『もうやり過ぎないようにとは言わないが、せめて他人の迷惑は考えような?』


 天村 志郎が何時の間にやら部員増やして戦闘員用パワードスーツや物騒なパワードスーツやロボットを開発して顧問に就任したマスクコマンダーに諫められたりしている。


(さて、あの二人はどうしてるかな――)


 ふと嵐山 蘭子はあの二人―天野 猛と城咲 春歌の事を気にかける。


 

 Side 天野 猛、城咲 春歌

 

 人工島である天照学園の傍にある天照島。


 海の潮風と対岸にある町が見える見晴らしの良い場所にある墓地。


 こうしてまた墓参りが出来た。


 デザイアメダルの一蓮の騒動で死んだ少年、猛の親友、加島 直人。


 そしてアーカディアの纏め役で研究員だった若葉 佐恵。


 闇乃 影司の墓は作られてない。


 倉崎 稜の言う通り、なんとなくだが死んでない可能性があるからだ。

 

 理由は分からないが確信に近い確率で。


 そして次会う時は敵であるような嫌な予感もついて回る。

 

 天照大橋での一件が原因だろう。


 だけど対外的には行方不明扱い――法的には限りなく死亡に近い扱いになっている。


「春歌ちゃん・・・・・・僕、強くなろうと思う」


「どうしたんですか急に?」


「皆、心の奥底ではそう思ってる。今回の一件で色々と思い知らされたから――」


「確かに私もそう思う部分もありましたが・・・・・・」


「・・・・・・以前言った言葉、変身出来なくても人はヒーローになれるんだって。今度はそれを伝えていきたいって気持ちは変わらないけど――上手く言えないけど、今度また強い敵が現れても大丈夫なぐらいに強くなりたい。そう思ったんだ」

 

 静かに、そして決意を込めて気持ちを述べた。


「なら――その時は私も一緒です」


「・・・・・・その前に親や先生が許してくれるかな?」


「そうですね――その前に、補修のヒーロー活動を頑張りましょうか?」


「ははは、そうだね」


 そして二人は皆の場所へと戻っていく――


 ブレン編END

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