第三十四話「襲来、ブレン軍」


 学園島はある程度の優勢保ててはしたがそれでも基地の配置上の関係。

 そして数の絶対的不利などにより、防備が手薄なところから二百mサイズと十八m級サイズの円盤の侵入を許してしまった。

 学園島全体に避難警報が発令されている。


 =セントラルタワー=


 学園の中枢中の中枢であるセントラルタワーもそれは変わりはない。

 学園長の秘書である杏堂 ナツミは勢いよく、JOKER影浦の部屋に駆け込んだ。


「JOKER学園長まだ避難して無かったんですか!?」


「ああ、お前か」


「お前か・・・・・・って、冷静ですね」


 JOKER影浦は冷静だった。

 高そうな黒皮の椅子に座り、片手に日本刀を持っている。


「潜った修羅場の数が違うんでな。今度の相手は宇宙人か・・・・・・退魔師のアンタには相性が悪そうだな」


「私の心配よりも自分心配してください!! それよりもどうするんですか!?」


「敵の狙いは分からんが、コントロールセンターを掌握されたら元も子もない。幸い世界樹(*学園島の隣にある自然の島のシンボル。巨大な大樹)には興味は無いらしい」


「んな事よりどうするんですか!? このままだと陥落待ったなしですよ!?」


「確かにジェネシスからブラックスカルの一連の一件で相当疲弊したみたいだからな・・・・・・だが後々考えるとこんぐらい乗り越えて貰わんと困る」


「一体何を言って・・・・・・」


 宇宙人の襲来を独力で乗り越えろとは信じられない程の放任主義だ。


「それにだ・・・・・・あの円盤よりもヤバイのがいる。そいつの出方が分からん以上、俺が下手に動くわけにはいかない」


「あの円盤よりもヤバイのって・・・・・・」


 何を言っているのか分からなかったが何か意味があるのだろう。 

 こんな状況で冗談を言う人間とは思えなかった。


「ともかく今の状況で自衛隊に頼るのは酷だ。地球連邦もアテにならん。此方もある程度の犠牲は覚悟して被害を最小限に抑える事に専念する他ない」


「そんな・・・・・・」


 だが言いたい事もある程度は分かる。

 学園島の戦力は日本政府などを刺激しないように少数精鋭が基本であり、数の差をテクノロジーなので埋めるのが基本だ。

 その差が埋められた場合、例えば地球外生命体の進行のように不利になるのは子供でも分かる事だ。 


「大丈夫だ。この学園を信じろ――」


「え?」


「この学園にはヒーローがいる。それも沢山な」


☆ 



 天野 猛は確かにヒーローに憧れていた。


 しかしそれは親友の理不尽な死により、ヒーローであり続ける事がある種の呪いのようになっていた。


 それにブラックスカルとの戦いは確かに終わったが全ては解決出来たわけではない。


 だが様々な出来事を経て猛には大切な人達が出来た。


 その人達を危険に巻き込むわけにはいかない。 


 だからこれで全て一件落着。


 そう思いながら部活動しながら後処理に勤しむ事にした。


 幸せな日々だった。


 内心ホッとしていた。


 同時にその気持ちを知られるのは恐く感じていた。


 先日の学ラン仮面との対決は何も考えずにただ純粋に戦いを楽しめた。


 だが――本当にこれでいいのかと。


 ジェネシスから始まった事件のケリを付けなくて本当にいいのかと日に日に悩む様になってきた。   


「はあ!! はあ!!」


 そんな時だった。


 天野 猛は全速力疾走していた。

 後ろには城咲 春歌も付いてきている。


 事が事だけに今から家に戻るのも遅い。

 なので事態を精確に把握する為にも学園に急いだ。


「嵐山先生!!」


「おお、来たか・・・・・・」


 教室に辿り着くと猛達の担任の嵐山先生がいた。

 メガネ越しに見える目付きが鋭い。

 おちゃらけた雰囲気が感じず、マジになっているようだ。

 学園に備え付けられたテレビには今起きている事が映し出されている。

 まるでB級のSF映画の様な現実味の無い、光景。

 宇宙人の侵略が映し出されていた。


 来る途中スマフォで軽く眺めたが、こうして改めて見ても今一現実感が湧かない。


「既に学園の防衛部隊も戦闘に突入している」


「え!? ここにも――」


「バカ、声が大きい」


 その事実に思わず声を出そうとした猛だが頭をはたかれた。


「月の王国の新兵器とか言ってるバカも未だにいるが、ともかく映像に映ってるのが現実だ。まもなく避難指示が来るが何が起きるか分からない」


「警備部は?」


「詳しくは知らないが、既に避難誘導に当たってる。私達も直に避難だ」


「はい――僕は」


「間違っても戦おうとは思うなよ? 相手は宇宙から来た連中だ。カラーギャングとは桁が違う」


 と、釘を刺すように蘭子が言う。

 言ってる事は何一つ間違っちゃいないので言い返す事も出来なかった。

 同時に猛は自分の気持ちに少し驚く。

 いざこう言う状況になるとまるで騒動の中心に飛び出して戦いたくなるのだ。

 これではまるでレイの兄ちゃん(学ラン仮面)みたいな戦闘狂である。


「おい、見て見ろアレ!」


「UFOが!?」


 クラスメイトがザワザワとざわめき始める。


「遅かったか!!」


 蘭子が毒付く。

 大型の円盤。

 直径二百mの巨体が此方に向かってくる。

 更に周辺には小型の円盤が飛び回り、運動場に着地して兵士を吐き出していた。


「――悪い、前言撤回だ。戦ってくれ」


 苦虫を噛み潰したような表情で蘭子は手を覆う。


「うん! 死なない程度に頑張る!」


「なんか後ろ向きだなおい・・・・・・大丈夫か?」


 蘭子は心配になった。


「春歌ちゃんは――」


「た、猛君が戦うなら私も戦います!」


「分かった。無理しないでね。死んだら悲しいら」


「え・・・・・・」   


 そう言われて春歌は顔を真っ赤にする。 


「ラブコメやってないでさっさと行け!」


 と蘭子は檄を飛ばす。

 彼氏無しの独身には色々と辛い物があるようだ。


「んじゃあ行くよ♪ せーので飛び降りようか?」


「は、はい」


「「せーの」」


 そうして二人は窓から飛び降りる。


「「変身!!」」


 そうして 

 自分が通う校舎周辺で敵の部隊と交戦状態に突入した。


「大丈夫かな、春歌ちゃん・・・・・・」


「猛君も頑張って――」


 クラスメイトの柊 友香と橘 葵はクラスメイトと、嘗ての事件での命の恩人の無事を祈った。

 他のクラスメイトも同じ気持ちだった。


「ほら、ボサッとしてないでさっさと避難しろ!!」


 そう言って蘭子が避難指示を飛ばす。


 その一方で猛達は既に戦闘を開始していた。


 猛達は通う学園は同じ学舎などが密集している中央区。

 時計で例えるなら針の中心付近に位置する。

 何故か居住区や商業地区などを無視して、この学園地帯に直接乗り込んで来た事になる。


 そして母艦から戦闘機の役割を持つ円盤が発艦され、更にその円盤から敵の戦闘部隊が降ろされた。

 銀色の、動き難そうな昔の宇宙服を連想させるデザインだった。

 それが光学兵器の銃を持ったりして攻撃してくる。


「行くよ春歌ちゃん! 僕達の目的は避難の時間稼ぎだから!」


「は、はい!」


 ブラックスカルの最後の騒動の時と同じく、運動場で戦う。

 生徒達を無視して攻撃を集中させる。

 だが密集し過ぎているせいか遠距離武器が使えないでいた。

 変身した二人の攻撃で次々と倒されていく。


『ブレン様に抗う愚か者を倒せ!!』


『ブレン様に仇成す者に死を!!』


「こいつらもう地球の言語を!?」


「猛さん、こいつら生命体じゃありません! いわゆるロボットです!」


「宇宙人でロボットだって!? 何か色々と混ざってない!?」


 桜レヴァイザーのコンピューターがリアルタイムで自動的に敵の解析をしていたのだろう。

 巨大UFOによる侵略。

 それもロボットによる攻撃。

 まるで昔の海外映画の定番とお約束とかを詰め込んだようだ。


「だけどそれなら手加減無しでやれる!!」


 赤のレヴァイザー、フレイムフォーム。

 手に剣を持ち、炎の軌跡を描きながら敵を斬り倒す。


「私も!!」


 ピンクのレヴァイザー、桜レヴァイザーも小型拳銃型武器「ハートブラスター」の銃身から放たれるエネルギー弾で次々と撃ち倒す。

 胸部からハートバスターを発射する事も考えたが戦闘フィールドが学園であり、威力がありすぎて校舎に被害が出る恐れがあるので使えなかった。


「二人ともやってるわね」


「ええ、そうね」


 森口 沙耶、揚羽 舞の二人はそう軽口を叩きながら屋上に降り立った敵を倒していく。

 揚羽 舞は変身しての徒手空拳。

 変身した森口 沙耶もSF的なデザインの形状の杖を持って時には殴り飛ばし、時には雷や風を放出して敵を薙ぎ倒していく。


「UFOはともかく兵士はそんなに対した事は無いのが救いね」


「取りあえずあの戦艦どうするの?」


「宇宙空間ならともかく動力を何使ってるか分からない以上、大気圏内で撃破するのは得策じゃないわね。それに間違いなく校舎に被害出るわよ」


「そう――」


 つまり実質的に撃破不可能と言う事だ。

 そもそも地球外の物質で構成されているであろう円盤相手にパワードスーツの攻撃が通るのかどうか疑問であるのだが・・・・・・


「そういや顧問や凜は何処に向かったの?」


「嵐山先生(猛と春歌のクラスの担任であり、ヒーロー部の顧問でもある)は生徒達の避難誘導、凜(姫路 凜。ヒーロー部の部長)は生徒会に向かったわ。状況が混乱している今だからこそ司令部(生徒会)の機能を麻痺させるわけにはいかないんだって」


「ふーん、意外と考えてるのね」


「それよりもアンタの友人は?」


 森口 沙耶は何処までの関係かは分からないがとても密接な関係の友人がいる。

 その事を尋ねられると沙耶はわざとらしく考える素振りを見せて――


「心配ではあるけど、この程度でやられる程ヤワな子じゃないわ」


「そういや魔法少女とか言ってたわね」


「それよりもこいつら――リアルタイムで情報収集してるんだけど、日本各地で人間を拉致して回っているみたい――放っておくとこいつらこの学園の子達攫って行くわよ」


「突然の侵略行為に無差別攻撃、人間狩り――清々しい程の悪党ね」 


 と、舞はそう評した。

 逆にそこまでやってくれるからこうして平然とぶちのめせるのだが――


「小型の円盤!!」


「アレばっかりは被害どうこう言ってられないわ。私達で相手するわよ」 


「ええ」


 ここでの状況の不利を悟ったのか戦闘機の役割に当たると思われるサイズの直径十六m前後の円盤が複数やって来た。

 ヒーロー部の面々は天野 猛、姫路 凜を除いて空中戦が可能だと言うアドバンテージがある。

 地球の戦闘機ならともかく宇宙人の円盤相手にやれるかどうか不安だがともかく放っておくと校舎が文字通り蜂の巣になるので多少の被害覚悟で破壊しなければならなかった。

 二人は文字通り飛び掛かる。


 等身大のヒーローと魔法少女、地球外の兵器である円盤との壮絶な空中戦が開始された。


「粗方倒したね――意外に対したこと無かったのが救いだね」


 周辺には敵の残骸が倒れ伏していた。


「だけど他の地域がまだです――」


「そうだね。とにかく密接に連絡を取り合って救援に回っていこう」


「はい!」


 恐らくブラックスカルの時に立ち上がってくれたヒーロー達も戦ってくれている。

 手際よく敵を倒していかないとならない。


『ほう、これが地球の戦士の実力か』


「え!? 新手!?」


「大きい円盤から声が!?」


 上空の二百m級の大きい円盤から声がした。

 そして下部が開き、そこから運動場に向けてレーザー照射。

 それと共に何者かが降りて来た。


「か、怪人? いや、怪獣!?」


「地球外生命体とのファーストコンタクトになるのかなこれ・・・・・・」


 春歌の言う通り怪人と言うより怪獣然とした風貌の二m近くある体格の生物だった。


「私はブレン様の偉大なる戦士の一人! ガニメス!!」 


 人のシルエットから外れた、青い緑の一つ目のカニに似た怪獣だった。

 大きな二つのハサミ。カニの様な多脚。

 頭部からグレーのニホン角、そして白い二つの牙の様な物が伸びている。

 全高3m、幅もそれ相応のサイズだ。


「特撮物定番の名乗りありがとう。で、何しに来たの? 今確定申告並に忙しいから帰ってくんない?」


「どう言う例えですかそれ?」


 突拍子も無い例えに春歌はつっこんでおいた。


「我々ブレン軍の目的は地球征服の他にもう一つある。それは貴様達の様な優れた戦士の捕獲だ」


「だったら軍人とか捕まえればいいんじゃない?」


 丁寧に解説する怪人に対してもっともな意見をぶつける猛。


「ただ身体能力が優れた戦士だけなら我々も興味は持たん。だが特別な力を持った――例えば貴様達が来ているようなスーツの特別な動力源とそれを使いこなす戦士。それが欲しいのだ」


「じゃあどうして破壊活動なんでするんですか!?」


 春歌は怒り交じりに意見をぶつけるが。


「そうすれば手っ取り早く炙り出せるからだ。今のようにな」


「そんな――」


「一つ疑問だけど、どうして僕達以外の普通の人間も拉致しているのかな?」


「我々の理想国家建設のために働く労働力の確保だ。それ以外の理由はない」


「昭和の悪の組織並の親切丁寧な解説どうも・・・・・・んじゃあ遠慮無くぶっ飛ばすよ」


「貴様に出来るものならな」


 こうして両者の対決の火蓋が切って落とされるのであった。

      

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