第三十三話「宇宙からの破壊者」


 その日、天照学園は騒がしかった。

 現在、日本の地球上空の宇宙空間の空間が湾曲しているのだから。

 何かがワープアウトしてくる。

 その事実だけで混乱した。


「春龍様!!」


「分かっているわ! 九龍本部と何時でも連絡が付くように体勢を整えて置いて!」


 ホテル七星。

 春龍は学校から抜け出し、オフィスで部下に指示を飛ばしていた。 

 彼女の脳裏には黒の魔法使い「森口 沙耶」との以前話したやり取りが蘇っていた。


 ――サイエンスエリアでちょっと宇宙の異変を観測してるの。


 ――何? 宇宙人でも襲来するアルか?」


 ――異世界人なら目の前にいるわよ? 今はまだ小さいけどそう遠くないウチに一種のワープ空間が開くわ。場所は日本上空。データーはこれに。


(まさか本当に宇宙人でも来るのかしら?)


 もしこれで邪悪な宇宙人がやって来て地球を征服するとかなったら最悪だろう。

 正直言えば普通に考えればそんなのありえない。

 わざわざ太陽系の辺境惑星まで来て、はるばる地球を侵略するなど非常識にも程がある。


「春龍様! 未確認飛行物体が出現したようです!!」


「え、嘘ぉ!?」


 少し冗談で考えていたら本当にそうなった。

 せめて世界征服を目論む宇宙人とか乗ってませんように――

 そう祈るのであった。



 月の王国との第三次世界大戦を経た現在。

 この時代になると宇宙艦隊も存在する。

 異常を探知し、周辺宙域には国連軍、あらため地球連邦軍宇宙艦隊並びに自衛隊の宇宙軍もいた。


 この世界において地球連邦軍とは月の王国との独立戦争、第三次世界大戦において誕生した組織の事を指す。人類圏の統一を目指した組織と言う大義名分があるが色々と謎が多い組織である。

 ちなみに自衛隊と地球連邦軍は言わば別の組織であり、これは日本国憲法の弊害で国内で揉めたのが原因である。


「嘘だろ――」


「何なんだアレは――」


 眼前に現れたのはB級映画に出て来そうな巨大な黒い円盤だった。

 直径三千m級。

 常識を遥かに超えるサイズの船だ。

 周囲には小型の円盤が飛んでいる。


 地球の空母でも三百mを超えれば良い方である。

 当然厳戒態勢で出撃準備を行った。

 宇宙戦闘機も発艦させている。

 万が一に備えて宇宙戦仕様の軍用パワードスーツも戦闘状態で待機させていた。


 一体はアレは何なのだ?


 どう言う事だ?


 宇宙からの侵略者なのか?


 様々な憶測が飛び交う中、地球へと降下していく。


 相手の正体が分からない以上、攻撃命令など出せる筈もなくそれをただひたすら呆然と見詰めていた。


「あの物体の降下地点は分かるか!?」


 国連軍の宇宙艦隊指揮官は指示を飛ばした。


「日本上空に進路修正しながら降下して行ってます!!」


「それは確かか!?」


「はい!」


 その瞬間、轟音が響き渡った。


「円盤が攻撃を開始!! 艦隊に攻撃を受けています!!」


「最悪だな・・・・・・やむを得ん!! 攻撃開始しろ!!」


「敵航空隊とも戦闘開始!! 敵円盤、民間施設だろうが軍人施設だろうがお構いなしに攻撃しています!!」 


「地球の旅客機にも攻撃!! 各都市にも攻撃を行っています!!」


 最悪のファーストコンタクトだった。

 宇宙軍は必死に奮闘したが多大な犠牲を払い、円盤の地球――日本への降下を許してしまう。



 日本でも大騒ぎになっていた。

 大パニックと言っていい。

 政府から日本全国の自衛隊、警察までもが緊急警戒体勢になっていた。

 宇宙空間からの都市部目掛けての無差別砲撃で消防も出動している。 


 突然の宇宙人の来訪。


 無差別とも言える一方的な破壊活動。


 多くの創作物に出て来る悪の地球人そのままである。


 巨大円盤は日本の中部地方に降り立つ。

 自然豊かな山に囲まれた地帯。

 どうしてそこを選んだのかは分からない。

 そこに直径三Kmの巨体を降り経たせると各所に200m級の大型、戦闘機サイズの小型の円盤を飛ばした。    


 その傍らで現地に急行した自衛隊の航空機に攻撃を開始する。


『た、対空砲火が激し過ぎて――』


『うわあああああああああああ!!』


 巨大円盤のエネルギー兵器による対空砲火。

 そして円盤の攻撃により次々と自衛隊は落とされていく。

 自衛隊の腕がどうこうと言うレベルではない。

 相手のテクノロジーと火力の桁が違い過ぎるのだ。


『クソ!! 遅かったか!!』


 この惨状を見て、ある一人の戦士が飛んで来た。UFOの全景が見える上空で立ち止まる。


 神々しい光のオーラーを身に纏い、白い戦隊スーツでマントを靡かせて黄金の鎧を身に纏い、長い純白のバトンを右手に所持。 

 戦乙女を連想させる様な羽根飾りの装飾をヘルメットに身に付け、宝玉が埋め込まれたバックルベルトを巻いている。

 両手に赤いグローブを足に紅のブーツを履いている。


 彼の名はマスタージャスティス。


 極僅かの人間にしか知られてない、地球正義の神である。

 遂先日まで天照学園のJOKER影浦学園長達などと一緒にこことは違う異世界の騒動で掛かりきりだったのだがまさかそれがこんな結果を招くとは。


『貴様がマスタージャスティスか』


『貴様は!?』


 脳に直接声が響く。

 恐ろしくも、くぐもった声だ。


『私は暗黒の神の遣いブレン――私がこの星が欲しい』


『何故この星を狙う!?』


『この星には超科学技術が沢山眠っている。その力を持ってより高みに、何れは全宇宙を支配する王となる』


『話しても無駄か!!』


 実力行使に打って出ようとした。


『おっと貴様の相手はこの私だ』


『貴様は!?』


 背後に謎の存在が控えていた。

 二本のアンテナと土星の輪っかのようなかぶり物を付けマントを靡かせる、大きな杖を持っていた。

 紫色の禍々しいオーラを放ち、並大抵の人間ならば相対するだけで押しつぶされそうなプレッシャーを放っている。

 マスタージャスティスは知っていた。


 この存在を。


 同時に理解した。


 先ずこの化け物から倒さなければならない事を。


 ――数秒後、両者がいた地点で激しいエネルギーのぶつかり合いが観測される事になる。



 増田 美子は何時もの通り、自分の看板番組であるヒーローウィークリーの為に取材を続けていた。

 最近はヒーローの世間の評価の声なども取り扱っている。

 ブラックスカルの事件で一躍英雄視されたが時間が経つと冷静な主張が。

 例えば「ヒーローの存在は法的にはどうなのか?」とか、「これでは税金の無駄遣いにしかならない。軍事増強が必要だ」とか「もしもヒーローが犯罪に走ったら誰が取り締まるのか?」など興味深い意見が出て来る。

 ヒーローを取り扱う番組としては成る程と思った。


「なにこれ・・・・・・」


 そんな取材活動中の矢先に大事件が起きた。


 巨大円盤の襲来。


 一方的な破壊活動。


 事態が巡るましく動いていた。


「今日本はどうなってるの・・・・・・」 


 もう大パニックだった。

 空港も円盤の攻撃で墜落した旅客機による火災が発生している。

 陸上自衛隊だけでなく、海上自衛隊にも航空自衛隊にも被害が出ていた。

 それだけでなく都市部にも雨の様にビームを撃ち込まれたりした。


 そして今各都市に大型の円盤と小型の円盤が襲撃し、人間を連れ去っている様子が映し出されていた。

 ここまで徹底して悪の侵略者として振る舞われるともう賞賛するしかない。


 だが同時にこう言う気持ちもわき上がる。


 もし彼達が、ヒーローがいたらどうするのだろうと?



 学園北部。

 軍事エリア。

 円形の敷地から増設する形で建設された土地にそこはあった。

 悪魔で自衛用の戦力だが学園最先端の技術で産み出された少数精鋭戦力である。

 流線的なフォルムの人型に変形しそうな未来風戦闘機が迎撃に当たっていた。

 近くの海では艦が対空戦闘を。

 陸では陸上兵器が対空砲火を行っている。


どうにか優位を保っているがこれは防衛戦である。


 敵の物量に圧倒され、他の方面から何体かは通してしまう。


 かくして学園島もまた騒動に巻き込まれてしまうのだった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る