第二十二話「JOKER(学園長)の帰還」


 天照学園東側沿岸部。

 世界だけでなく宇宙とも行き来している天照学園国際空港。


 そこに一人の変人が降り立った。

 黒いスーツ姿にシルクハット。

 黄色いレンズの目が入った白い仮面。

 どっからどう見ても変人である。


 彼の名はJOKER影浦。


 長らく地球には不在だったが、学園の学園長である。


 と言うのもある事情の為に学園の主立った主戦力と共に学園を離れ、一先ず自分だけ帰って来たのである。


 そして帰る道中、学園の事が予想以上に大変な事になっていた。


「学園不在の間に色々ととんでもない事になってたんだがどう思う?」


「知らんグモ」


 と、一等身の黄色いウサギ。

 グモたんに問い掛ける。

 天照学園の遊園地のマスコットキャラである。

  

 江戸時代ぐらいに地球征服しに来たんだがすっかり学園に馴染んだ感がある。


 ともかくセントラルタワーに向かう事にした。



 セントラルタワー。

 ブラックスカルとの最終決戦になった場所だ。

 建造物に多少に被害は出ていたが人員に被害は出ていない。

 学園に残った天野 星斗が頑張ってくれたらしい。


 そして執務室に入る。


 待っていたのは秘書の杏堂 ナツミだった。

 メガネを掛けたショートカットの特徴が無いのが特徴のジムカスタ○みたいな女性だ。

 

「遅いです!! 一体何処をほっつき回ってたんですか!?」

 

 ブラックスカルの一件以降の激務の怒りをぶつけるようにナツミは叫んだ。


「いや~ちょっと異世界に行って地球の危機を救ってたら遅くなった」


「はあ・・・・・・異世界ですか・・・・・・説明だけ聞かされてますけど本当にあるんですか?」


「あるのあるの」


 異世界は存在する。

 地球外生命体も存在する。


 だから天村財閥と協力してジェネシスを創設したのだ。


 しかしそれがまさかあんな結果を産むとは最大の誤算だった。

 正に「この学園長の目を持ってしても(ry」と言う奴だ。


「まああまあ落ち着くグモ」


「て、グモたんもいるんですね」


 ナツミは(本当に何なんだこの地球外生命体は・・・・・・)と、戸惑う。


「まあね。万が一の時は代行させるからよろしく」


「速攻でばれますよね!? それ!?」


 幾ら何でも無理がある。

 酷い代役だ。

 だがこの学園長ならやりかねないので強めにナツミはツッコミを入れておく。

 

「ああそうそう。リンディさん学園に帰って来てますよ?」


「あん? あの女子プロレスラー学園に帰って来てんの?」


「はい。暫くはウチの学園の女子プロ部の面倒を見るつもりだそうで――たぶん学園長が帰って来たのを知ったら挨拶に来ると思います」


「そか」


 何だかんだでリンディ・ホワイトは黒のレヴァイザーと並ぶぐらい頼りになる存在である。

 今は平穏だが少々焦臭い現状では頼りになるだろう。


「それと理事会の子供達が何かヒーロー部とか作ったりとか、理事長の息子も個人的に動いていて・・・・・・止めますか?」


「親が親なら子供も子供だな。やらせておけ。後釜育成も兼ねて様子を見る」


「はあ・・・・・・」


 納得出来ないのか煮え切らない返事が返ってきた。


「それにたかが俺達が不在になった程度でここまで翻弄されるとは・・・・・・まあ裏切り者がいたから仕方ないとは言え、な」


 そう言ってJOKER影浦は座り心地の良いソファーにぐったりともたれ掛かり、天上を見る。

 長い間不在だったとは言え、日本政府はともかく例え異能の力があったとしてもカラーギャング如きに言いようにされるとは思わなかった。

 だからこそこうして他の皆に先んじて学園に一足先に帰ったわけだが。


「あの時は誰が味方で誰が敵なのか分からない状態だったみたいですから。理事会クラスに裏切り者がいたからどうしようもなくて」


「ああ、巳堂の奴が裏切るとはな。アイツ優秀だったけど、やっぱ腹に一物抱えてたか」


「やっぱって裏切る事分かってたんですか?」


「何だかんだで優秀な男だったよ。尻尾を掴ませず、上手く立ち回っていたからな。それに用心深かった。それに目的はどうアレ、日本政府ともある一定のパイプを築いていて政府の不満のガス抜きには丁度良かったんだよ」


「そんな理由があったんですね」


 確かにそう考えると色々と合点が行く。

 何だかんだで政府との付き合いや学園運営を考えていたらしい。


「まあな。それがまさかこんな事になるとは・・・・・・大方計画が上手く言ったら理事長の座でも付いてたんだろうな」

 

 巳堂 誠司は善人でアレば学園を任せられる程の手腕はあった。

 それを残念に思っていた。


「だがアイツ程の男が息子に裏の仕事をやらせるとはな・・・・・・それにアイツに学園を任せるつもりだったってのも驚きだ」


「親の気持ちって奴なんでしょうか?」


「それもあるんだろうな・・・・・・そういや巳堂の子供はどうしてる?」


「少年院です。態度も素行も真面目で事件の全容解明のために協力的で、なるべく早く少年院を出られると思います」


「そうか――あの坊主がな」


 巳堂 白夜の事を思い出しながらJOKERは考え込んだ。


「お知り合いですか?」


「まなあ。理事会の役員達の間でも親の権力使って好き勝手してるって言う話は結構有名だったろ?」


「確かに問題視されてましたね」


「それに他の理事会の子供達はどいつもこいつも有能揃いだ。特に天村の子供何か大天才の部類だ。何時の時代人間、特に子供ってのは近しい子供と比較されるもんだからな・・・・・・される側はたまったもんじゃねえよ」


「それは――」


 JOKERの言い分は一理あると感じだ。

 なのでどう返せば良いのか分からなかった。


「だから自分の居場所を勝ち取る為にも、親の権力を使ってでも居場所が欲しかったんだと俺は思う。最終的に腹を括ってその親を殴り倒したみたいだがな」


「ええ、それには私も驚きました――まさかあんな事をするなんて」


「離婚して家族付き合いも少ない家庭だったんだろう。赤の他人よりも他人だったかも知れないな、そいつにとっては」


「なんか悲しいですね」


「まあそれに巻き込まれて傷付いた連中が一番の被害者何だけどな」


「そ、それは」


「罪ってのはそう言うもんなんだよ」


 そこでJOKERは一息つく。


「あの、どうして学園長はこの学園を作ったんですか?」


「言っても信じないでしょ? 第二次大戦の頃に色々あったとしかいえねーよ」


「どんだけ長生きなんですか?」


「ほら、そう来る~グモたん達と出会ったのも幕末の頃だしさ~正直に言っても信じられないからテキトーに茶化すしかねーんだよな」


「グモグモ」


「はあ・・・・・・まあ私も裏の人間ですから非常識にはある程度耐性はありますけど学園長の仰る事はあまりにも・・・・・・」


「突拍子もないよね。さて――」


 そう言って席に向かい合う。


「仕事をパパッと片付けて、秋葉原に行くぞ!」


「おーだグモ!」

 

「なんつーか、その辺り相変わらずですね・・・・・・」

 

 学園長にたいしてナツミはもう定番となっている頭痛を感じた。


 出来る限り趣味に生きて仕事はなるべく二の次。

 人生楽しまないと損。

 それがJOKERの人生哲学である。 


  

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