第二十一話「悪の組織部」


 天村 志郎と言う男は本来は趣味に生きるタイプの男である。

 その為なら平然と他者を巻き込む恐ろしい一面も持っている。


 理事長の息子である彼はある計画を進めていた。


 姫路 凜が思ったよりもマトモな理由でヒーロー部を作り上げたように自分達もそれを盛り上げる為の部活を作ろうとしていた。


 さて問題。


 ヒーロー作品を盛り上げるにはどうしたらいいでしょうか?


 答えは簡単。


 魅力的な悪役を用意するのだ。


 これはどんな創作作品でも通用する創作テクニックである。



 仮面ライダーにはショッカー。


 アンパンマンにはバイキンマン。


 バットマンにはジョーカー。

 


 有名なヒーローには必ず魅力的な悪が存在するのだ。



 逆に後先考えずに絶対無敵のヒーローを作ってしまうと作品の寿命を縮め、打ち切り連載コースに突入してしまい、逆にこれで成功するのは余程物語の作り手としての才能に恵まれた人間のみである。


    

 長々と語ったがヒーローを魅力的に輝かせるには魅力的で強力な悪役が必要なのだ。

 ある意味ヒーローを作るよりも力を入れなければならない要素である。    


 そして天村 志郎の想い人、セイントフェアリーこと揚羽 舞には現在それがいない。


 ならば自分でなる他無い。


 しかしインペリアスは以前セイントフェアリーに敗退してしまっている。(第四話フェアリーサーガ参照)


 なので彼はある新しいスーツの制作に着手する事になったが時間が掛かるし、急に強い敵を出現すると部の活動にお互い不利益が被ってしまう。


 だが更なる問題にぶち当たった。  


 それまでの場繋ぎとしての敵役をどうするかだ。


 現在悪の組織部のメンバーは倉崎 稜、ハヤテ、志郎を入れて三人のみ。

 戦闘員役などを含めてローテンションを組ませる事を考えるともっと人員が欲しい所だ。

 そのための人員集め、俗に言う大幹部級の人間をどう集めるかが問題だ。

 

 やる事はいっぱいだ。  

 

 問題として天村 志郎も部活の運営だけでなく、研究開発の為の時間が欲しい。


 なので指揮を任せられる上に自分が作ろうとしている部への理解力がある人間が急務である。


 現在倉崎 稜を染め上げているが、中々難しいしそれに彼には同居人である闇乃 影司の監視役の役目がある。


 それに最近は宮園財閥のご令嬢も彷徨いているようだ。


 闇乃 影司は何やら黒いセイントフェアリーを探るためにこの学園に乗り込んで来たらしい。

 同時にこれは新たな戦いの火種が近付いている事の前触れでもある。

 黒いセイントフェアリーの正体も気になるが予測通りであれば「遂にその時が来た」としか言いようが無い。


 宮園財閥のご令嬢は学園を出入りしていて、色々と学園を探っているようだ。

 ある犯罪組織の足取りを追って。

 此方も深く関われば新たな戦いへと突入するだろう。


 そもそも倉崎 稜の出自事態がかなり危険だ。

 彼の存在が志郎の予測通りであるならば世界の危機が迫りつつあるの事の証明に他ならない。

 

 いや、そもそもジェネシスは地球外生命体の侵略に備えて産み出された研究機関だった。


 それにセイントフェアリーに使われている物質も地球外の物質である。

 

 覚悟はしていた。


 だがせめて、出来うる限り平和な時間を与えたかった。

 特に愛する揚羽 舞には。


 命を張った殺し合いの世界ではなく、自分なりに楽しい時間を提供したかった。


 だが無理して提供すると不信感を持たれかねない。


 だからこその悪の組織部である。


 願わくば、賑やかで楽しい一時を提供したい物だと志郎は想う。


「そのためにもベルゼルオスの完成、急がねばなりませんね」


 ベルゼルオス。

 自分の研究成果を注ぎ込んだ最強のパワードスーツ。

 核兵器に並ぶ戦略兵器としてこのパワードスーツを作り上げようとしていた。

 

 外見はまるで漆黒の悪魔。

 角は生やしていない。

 どちらかと言うとエジプトの冥府の番人アヌビス神を連想させるような頭部だ。

 動力炉はセイントフェアリーの動力の改良型を搭載している。

 

 志郎の理想としてはこのベルゼルオスですら通過点に過ぎないが今はともかくこの悪魔の完成にも力を入れないといけなかった。

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