第九話「ブラックスカル」
天照学園はヒーローと怪人が戦う危険地帯である。
一時的に学園外に避難する生徒や天照学園へ進学する生徒や居住者は減っていき、確実にではあるが評判は落ちていた。
同時に観光スポット化している。
怪人とヒーローとの戦いを見たいと言う野次馬達が多くいるのだ。
その御陰でか観光業による収入は潤っており、良い意味での宣伝にもなっていると言う何とも皮肉な状態になっていた。
ヒーロー達の噂は様々で学園の秘密組織とか影の自警団とか様々な憶測が生まれ、纏めサイトまで誕生していた。
今のネット全盛世の中、完全な情報遮断は難しい。
下手に消したらまた蘇って更に話題を呼んで拡散したりするので放置するしか無いのが現状だ。
「ほらほら見て春歌ちゃん! あの人の纏めまであるんだよ!」
「そ、そうなんだ・・・・・・」
教室で春歌は苦笑しつつクラスメイトである柊 友香の携帯端末を見る。
そこにはレヴァイザーの姿が映し出されていた。
セイントフェアリーまであるし、何気に姫路 凜の姿も確認されていた。
特にセイントフェアリーは古参の位置づけにある変身ヒロインで未だに人気があり、女児向け変身ヒロイン物が好きな人達に憧れていた少女達からすれば嬉しい物があるらしい。
コメントの投稿件数も多い。
「あれだけ派手に活動してたら自然と有名にもなるよ」
メガネを掛けた青髪の長髪の少女、橘 葵が言った。
ショッピングモールでトラックの怪人相手に気絶して怪我をしていたがどうにか学校に足を運べる段階まで復帰できたようだ。
彼女も病院での戦いの一部始終を見ていた。
テレビとは違う、本物の戦いは迫力が違った。
「だけど人間が怪人になって暴れてるってどう言う事?」
ふと友香は疑問を口にする。
「うん、何かウォッチにメダルを嵌めると変身出来るって書いてあった。特別なウォッチを嵌めないと理性を失って凶暴化するって書いてある」
葵は丁寧に解説した。
(デザイアメダルの事が一般人にも漏れてる――)
一方で春歌は危機感のような物を感じる。
一体何処で情報が知られたか分からないが注意を呼びかける内容だ。
悪意があって漏らしたとは考えにくいだろう。
「他にもセーラー戦士とか魔法少女みたいなのとかもいるみたいだよ」
(私が知らない人達もいるんだ・・・・・・)
そう言えば揚羽 舞が天村 志郎を倒した時。
一時的に有志の人間から協力を募ったと言っていた。
また影ながら護衛に付いている人間もスーツを身に纏っているらしい。
そしてスーツの入手手段も多々あるらしいとも言っていた。
自分が遭遇した事件などは氷山の一角なのかも知れないと思った。
☆
春歌も何時も天野 猛と行動しているわけではない。
懸賞金賭けられている現在ではあんまり推奨されてないが、たまには友人達で行動する事もある。
アーカディアの施設では特訓と称して模擬戦が何度も行われていた。戦績は一番下である。まだなったばかりだからこれは当然だ。トップが揚羽 舞であり、正直手も足も出ないほどに強かった。
(人が増えたからちょっと組織改革するわね?)
それと若葉 佐恵は人が増えたので組織改革を行った。
現在は姫路 凜の指示で動いており、同じグループに天野 猛や揚羽 舞。
三日月 夕映生徒会長が別働隊のリーダーとなり、天村 志郎はその直属となった。
(舞先輩、てっきり志郎先輩と一緒だと思ったんですけど?)
(そうね。それは私も意外だったわ。まあアイツにはアイツなりの考えみたいなもんがあるんでしょ)
との事だった。
「何だかこうして三人で買い物するのって久し振りな気がしますね」
春歌は友香と葵と一緒にお出かけをしていた。
「そ、そうですね。何だか久し振りな気がします」
友香の言う通り三人で行動するのはどうも久し振りな気がした。
ちょっとまだ抵抗感があるのでショッピングモールは避けて、商店街を見て回っている。
平日の放課後だと言うのに人通りが多い。外部の人間も数多く居た。
「で、で・・・・・・春歌さんと猛君ってやっぱりそう言う関係なんでしょうか?」
「え、え?」
友香に不意打ち気味にそう聞かれて春歌は顔がポッとなった。
「こら、突然そんな事を聞くもんじゃない」
葵は友香に注意を促す。
流石に悪いと思ったのか「すすす、すみません」と謝罪した。
「いえ・・・・・・だけどここ最近ずっと一緒でしたからそう思われるのは仕方ないと思います」
「ふーん。私もそう言う相手見つかるかしら」
葵も恋愛に興味があるのかそんな事を呟く。
春歌は「そう言う相手」と言われてふと思う。
何時か猛とはどう言う関係になるのだろうかと?
(もしかして結婚――って事はあんな事やそんな事もするわけで・・・・・・)
「あの? 春歌? あなた何かいけない妄想してない?」
葵にそう言われて春歌は「ハッ!?」となった。
「え? え? そ、そそそ。そんなわけないですよ?」
「やっぱり・・・・・・」
葵に言われた通り春歌は平静を取り繕うとしたが出来なかった。
「何アレ? 人が集まって――」
友香が言う通り人が集まっていた。
「本当。何かしら? って春歌?」
葵の言葉を無視して春歌は走り出した。
野次馬根性と言うより職業柄遂と言う感じだ。
商店街の往来の真っ直中で春歌が目にしたのは、カジュアルな格好をした赤髪のポニーテールの垢抜けた今風の女の子にブラックスカルの連中が絡まれているところだった。ブラックスカルの衣装は黒尽くめに炎に包まれた黒いドクロのエンブレムを身に付けているので直ぐに分かる。
それを阻止しようと立ちはだかっているのはそこら辺にいそうなダサくもなく格好良くもない、黒髪の青年だ。
「おいおいナイト気取りかよ」
「俺達を誰か分かってんのか?」
「俺達はあのブラックスカルだぜ?」
ブラックスカルは三人。
黒髪の青年は一人。
「言いたい事はそれだけか? んじゃあもう行くか?」
「そうだね。時間の無駄だし」
そう言い残して二人は立ち去ろうとする。
どうやらそれなりの仲らしい。
「待てやこら!」
そして先頭の一人が殴りかかった。
それを腕を掴んで受け止めてヘッドバットをかました。
相手は頭を抱えて思い切り地面に倒れ込む。
「あ~やっちまった」
「兄ちゃん、もう戦い過ぎてケンカも強くなっちゃったんだね」
「どうしようこれ・・・・・・」
「テメェやりやがったな!」
そうして殴りかかってくる。
「いてえじゃねーか」
だが打撃に構わず、思いっきり顔面を殴り返す。怯んだ所を倒れるまで殴り倒す。
もう一人の男も加わろうとするが後ろにいた女の子が不意を突いてスタンガンで痺れさせた。
「人が集まって来たし、逃げるか」
「そだね」
そうして二人はソソクサと逃げ出そうとする。
「テメェ・・・・・・待てやこら!!」
最初に頭突きで倒された男がウォッチにメダルを装填した。
「お前こんな町中で変身するつもりかよ!?」
「舐められたら終わりなんだよこの業界は!」
無茶苦茶理論を振りかざして銀色のメダルを装填した。
そして緑色のトリケラトプスの怪物になる。
右手にランス、そして恐竜のトリケラトプスの盾を持っていた。
「どうする? 兄ちゃん?」
「もうこうなったらやるしか無いだろ」
と、赤髪の歩にテールの少女が青年に尋ねる。
周囲も逃げ始めていた。
事態を把握出来ずにその場で立ち止まっている人もいる。
「早く、この場にいたら危険です!」
そう言って春歌は避難を呼びかけた。
「あ~避難誘導ありがとう。後は俺が始末をつける」
「始末ってどうやって!?」
「こうやって」
そう言ってバックルを押し当てるとベルト部分が現れて巻かれる。
そこに携帯端末を挿入した。
「変身!」
昆虫を模したらしい二つの黄色い双眼とシルバーの触覚がついた戦士だ。
体はレッドの線が入った黒いライダースーツの上から銀色のプロテクターを身につけている。
キッチリとベルトまで装着していて両サイドに玩具らしき何かをぶら下げている。
『な、何だと!?』
トリケラトプスの怪人は狼狽してみせた。
『相手が悪かったな―ー』
そう言って右腰にぶら下げていた物を保持した。
黒い十字の様な奴だ。
しかも刀身が伸びている。
『愛菜、下がってな』
「分かった」
「おっと、もう一人いるんだぜ!!」
二人目に倒されてボコボコにされた男が立ち上がる。
彼も銀色のメダルを装填して変身した。
まるで大人が使うライターの様な怪人だ。両腕にアームカバーが付いていて何かの発射口が付いている。
『お前を倒せば懸賞金だけじゃねえ! 幹部待遇も夢じゃねえ!』
『二対一、それもただの雑魚じゃなくて怪人タイプか・・・・・・しかしトリケラトプスとライターってどう言う組み合わせだ? 統一感考えろよ。特にライターって何だよ』
『ウルセェ!! 本当はもっと強力で格好いいメダルが欲しいんだよ!!』
ライターの怪人が講義して炎を吹き出した。
『あぶね!! 火事にするつもりか!?』
『俺達は勝てば正義なんだよ!!』
『そのベルト頂くぜ!!』
『たく――血の気の多い連中だぜ』
そうして戦いに突入した。
二対一にも関わらずあの黒髪の青年は上手く位置取りを調整して一体一にしている。
時折あの剣で――どうやら天村 志郎のスーツの様に銃にもなるらしく、鍔に当たる部分に銃口が埋め込まれていて、それで片方のライターの怪人に援護させないようにしていた。
更に接近戦も出来るらしく、相手のランスを剣で払いのけて左手で殴り、よろめいた所を斬り倒す。
相当戦い馴れていて春歌は思わず魅入ってしまった。
『まず一人』
相手との距離が離れた所で、ベルトのバックル部分を上下に開き、内側のスクリーンにタッチして閉める。
すると両足に赤い光がスパークし始めた。
助走を付けて走り出す。
『デヤアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
『うわぁあああああああああああああああああ!?』
そして跳躍し跳び蹴りの体勢を整えると不自然な勢いで加速をし、蹴りを叩き込んだ。と、同時に大爆発が起きた。
爆発が晴れるとそこにはトリケラトプスの怪人だったブラックスカルのメンバーとメダルが転がっていた。
『ひ、ひぃいいいいいいいいい!!』
『まずは一人――』
『く、来るな!! 近寄ったら此奴らを攻撃するぞ!!』
そうしてハッとなった。
ライターの怪人は春歌達を攻撃しようとする。
後ろには呆然と眺めていた友香と葵までいた。
『人質か――情けないな』
『何とでも言え!』
「なら私も戦います!!」
『『え?』』
そして春歌も決意した。
スカートにグローブ、ブーツを身に纏ったピンクのレヴァイザーになる。
何時の間にか猛から桜レヴァイザーと勝手に名称を付けられていたのでそのまま桜レヴァイザーと命名する事にした。
『なっなっ!? お前もヒーローだったのか!?』
『二対一だな? 降参するか?』
『これで降参したらボ、ボスに殺される!』
『なら手助けしてやろう』
不意に声が聞こえた。
空から大量にメダルがばら捲かれる。
そしてメダルが人型のシルエットを形成し、そして変身した。
『馬鹿な!? メダルはウォッチに装着しないと怪人化しない筈だろ!?』
『一体何が・・・・・・』
青年の言う通りだった。
本来デザイアメダルは人間が使用して始めて怪人化する代物である。
ばらまかれたメダルは全部弱いソルジャーのメダルの様だが数が多い。
中にはスタンガンで崩れ落ちた男の物らしいメダル――コウモリの怪人が現れた。
ややヒロイックな姿で背中にコウモリの翼、手には剣を持っていた。
以前揚羽 舞が倒したコウモリタイプの別Verと思われる。
『愛菜は連れて逃げろ!!』
「うん、危なくなったら逃げてね。こっちだよ」
愛菜と呼ばれた赤いポニーテールの少女は春歌のクラスメイト二人を避難させる。
「で、でもまだ春歌ちゃんが!」
「大丈夫。信じよう。彼女もヒーローならきっと切り抜けるよ」
『そのとーり!!』
姫路 凜の指示でアーカディアのトレーラーが物凄い勢いでやって来た。
レヴァイザー、セイント・フェアリーもそれぞれの専用マシンに乗っている。
『皆さん、来てくれたんですね!!』
『うん、民間人の保護は私達に任せて派手にやっちゃって』
姫路 凜の心強い回答と共に戦いは始まった。
レヴァイザーとセイントフェアリーは徒手空拳で次々とソルジャーメダルから変化した敵を薙ぎ倒す。
ある一定のダメージが加わると形態を維持出来ないのかメダルの状態に戻る。
「どうなってるのこいつら?」
「今迄のメダルとは違うのかしら?」
二人は戸惑いながらも雑魚を蹴散らしていく。
そして春歌と黒髪の青年は怪人と戦っていた。
『クソが! 燃えろ燃えろ!!』
『だから火をデタラメに出すんじゃねえ!! 燃え移って大惨事になったら一生刑務所暮らしになるぞ!?』
『知るか!!』
ライターの怪人による被害を抑えながら、青年は戦っていた。
「ハートブラスター!!」
『グォオオ!!』
春歌は前回の戦いでは使わず終いだった、ホルスターに納められた白い小型の銃、ハートブラスターを撃つ。
相手はダメージなど構わず突っ込んで来るが構わず避けてハートブラスターを撃ち込む。
(どうやらこの怪人、タフさはありますけど動きその物は単純な動作しか出来ないようですね)
そう分析した。
人を媒介にしてないせいだろうか動きがとても単純なのだ。
近付いて斬る事しか考えてない。
それぐらいしかしてこないのである。
『ガゥウゥゥゥ・・・・・・』
コウモリの怪人は膝を付く。
体からバチバチと火花を散らしていた。それを見て勝機と思った。
「ハートバスター!!」
胸部からピンク色のビームを打ち出した。
それがマトモに直撃し、吹き飛んでメダルに変わる。
『こっちもいい加減トドメと行きますか――』
ライターの怪人を斬り倒し、距離が離れた所で再びバックルに納められた携帯端末を上にスライドさせ、画面を押して元に戻す。
そして剣が物凄い勢いで発光する。
『く、来るな!?』
『でやあああああああああああ!!』
ライターの怪人は両腕から炎を出すがそれを剣で切り払いながら近付き、トドメの一閃を胴体に直撃させた。
『ぎゃあああああああ!!』
爆発。
ブラックスカルの青年が倒れ込んでメダルが排出されていた。
ソルジャーメダルの怪人も全て倒され、場は収まったかに見えたが――
『少し遊んでやろう』
そう。まだいたのだ。
メダルを無秩序にばらまいた奴が。
ダークヒーロー然とした黒いドクロのフェイスの怪人だった。
バックルベルト方式でベルトの中央部には黒いメダルが装填されている。
「アンタもブラックスカル?」
『いかにも。俺がブラックスカルのリーダーだ』
「まさかリーダーがこの場に!?」
春歌の驚愕も最もだ。
まさか偶然こんな所で、ジェネシスの爆発事件の重要参考人、ブラックスカルのリーダーが現れるとは思わなかった。
『ただの実験のつもりだったが興味が沸いた。相手をしてやろう』
「余裕ね――」
「この人数相手に勝てると?」
『やってみれば分かる』
そして戦いは始まった。
春歌はビームガン、ハートバスターを放ったが片手で防がれる。
黒髪の青年は斬りかかったが蹴りで一蹴された。
猛と舞のコンビは、猛がサイクロンフォームの銃で飛び上がり上空から相手の動きを牽制しつつ舞が接近戦に持ち込む。
しかしサイクロンフォームのエネルギー弾は全て春歌同様に払いのけられた。
舞の攻撃を防ぎ、激しい接近戦になる。お互い有効打は出ない。フェイントなども混じった攻撃。
反対側から猛がフレイムフォームにフォームチェンジして剣で斬りかかるが身を捻って裁く。それどころか舞を利用して攻撃の手を緩めさせるなど立ち回りも上手い。
(戦いの次元が違う・・・・・・)
春歌はそう評した。
素人目から見ても相手の強さが今迄の連中と段違いだ。
下手に混じれば逆に足手纏いになりかねない。
『これならどうだ』
黒髪の青年は相手の隙を見て攻撃をする。
剣を納めて右手にベルトの左側にぶら下げていたナックルガードを付けていた。
『ふん』
『何!?』
しかし拳で弾いた。
「フェアリングスマッシュ!!」
『ぬうん!!』
強大なエネルギーが込められた揚羽 舞の一撃を素早く回り込み、腕の手刀で叩き落とす。
「レヴァイザーキック!!」
『ぬうううん!!』
基本形態に戻っていた猛が上空からレヴァイザーキックを放つ。舞はバックステップで飛び引いた。
しかし胴体で受け止めて弾き飛ばした。
「強い――」
「たかがギャングのボスだと思っていたけど何なのこの強さは?」
『クククク――今回所はこれぐらいにしておいてやろう――さらばだ』
そして一瞬にしてその場から掻き消えた。
「消えた!?」
「単純に超スピードで消えたのよ。加速能力か素の身体能力かは分からないけどね」
舞は二つの仮説をあげるがどちらにしろとんでもない能力だ。
それに複数人相手でも互角、いや互角以上に渡り合っていた。
猛だって複数の怪人と渡り合った事があるし舞の実力は訓練で何度も肌で感じている。
あの謎の青年だって二体の怪人と互角以上に渡り合っていた。
にも関わらず、ブラックスカルのリーダーを倒せなかった。
それどころかマトモにダメージすら与えられなかった。
(何時かあんな奴とも戦わないといけないの・・・・・・)
春歌は恐怖を感じていた。
☆
あの後、メダルやウォッチ、ブラックスカルのメンバーを回収して撤収した。
報告するべき事は沢山あった。
黒髪の青年も付いて来てくれた。
アーカディアの施設で顔あわせしている。
「俺の名は谷川 亮太郎、こっちは川島 愛菜」
「よろしく~今は天照学園の高等部に通ってんの」
と挨拶された。
トリケラトプスとライターの怪人と戦っていた黒髪の青年が谷川 亮太郎。
絡まれていた赤髪の歩にテールの少女は川島 愛菜と言うらしい。
「変身時の名前はクラディスだ」
「ど、どうも初めまして・・・・・・」
丁寧に春歌はお辞儀した。
「そ、それにしても春歌さんも天野君もヒーローだったんですか!?」
「う、うん・・・・・・流石に驚いたわ」
一般人枠の友香と葵はどうしていいか分からずただただ驚いていた。
「か、隠していてごめんなさい。何か相手から懸賞金掛けられちゃってるみたいだから巻き込まれるないようにと思ったんだけど」
「い、いえ。構いません――特にあのレヴァイザーさんと会えて嬉しいです!!」
「これだから友香は・・・・・・」
などとポジティブな友香に葵は頭を抱えていた。
その隙に春歌はこっそりと姫路先輩に耳打ちした。
(いいんですか姫路先輩――)
(いいのいいの。まあ何時かはこうなるのは覚悟してたし)
(は、はあ・・・・・・)
大丈夫かと思った。
「んじゃあ俺達は帰るわ」
「貰うもんはちゃんと貰ったしね」
「あ、はい・・・・・・」
そうして谷川 亮太郎と川島 愛菜は去って行った。
「ところであの二人は?」
「いわゆる外部協力者って奴よ。何度か協力した事があるわ」
凜の変わりに舞が答えた。
舞は一時期、アーカディアを機能停止状態に追いやった時期がある。
その時谷村 良太朗の様な協力者と一緒に怪人退治をしていたのでその方面でも顔は広いのだ。
「アーカディアには所属してないんですか?」
「まあ色々とあるのよ。ボランティアで戦って貰うのも分かるから倒した相手のウォッチとメダルと交換してお金を支払ってるの。あんまりにも高額だからローカルヒーローみたいに商標登録したりするのを進めてるわ」
「な、成る程――」
春歌は色々と言いたい事はあったが、何か面倒な事になりそうなのであえて追求しないようにした。
「今後も外部協力者と接する機会があると思うから、暇があるならデーターベースにアクセスして閲覧しといて」
「わ、分かりました」
狭い業界だと思ったが結構広い業界らしい。
それにしても一体この学園には何人ヒーローがいるのだろうか。
「あの・・・・・・私達はこれからどうすれば?」
「うーんと、取り合えず連絡先だけ教えとくから危なくなったら呼んでね? あ? 皆には内緒よ?」
「は、はい!」
友香と凜が連絡先でやり取りをしていた。
ベストでは無いかも知れないが現実的な対処方法だろう。
「そう言えば猛君、大丈夫ですか?」
「フォームチェンジをあの短時間で連続でしたからね。ベッドの上で休んでるわよ。良かったら会ってあげなさい」
「は、はい」
☆
ベッドの個室には猛がいた。
ゆっくりして寛いでいる。
「猛君――大丈夫ですか?」
「うん、平気だよ」
「私、心配です」
「何が?」
「以前も敗北して今回は数人掛かりで戦って手も足も出なかったじゃないですか」
「うん。言いたい事は分かる。だからもっと強くならなきゃね」
「強くですか?」
あっけらかんとした表情で単純明快な解決策を猛は提示する。
「それにそろそろブラックスカルとの決着も近いと思うし」
「あの、今更ですけど警察とかには頼らないんですか?」
「それが現実的な手段だけど犠牲者大量に出るよ?」
「た、確かに・・・・・・」
考えてみれば当たり前の事だ。
相手は素のパワーでコンクリートの床に穴を開ける怪人になれるのだ。そんな相手を力尽くで逮捕しようとすれば確実に大量の犠牲者が出るだろう。
特にあのブラックスカルのリーダーなんかは先ず逮捕出来るイメージが浮かばない。自衛隊動かせばどうにかなるかも知れないが国がわざわざギャングを捕まえる為に動かすとは思えなかった。
警備部門も相変わらずの状況だ。
「とにかくあのブラックスカルのリーダーとは必ず一人では戦わない方がいいね」
「そうですね・・・・・・」
「だけど、春歌ちゃんと一緒ならどうにかなるかも?」
「え?」
「桜レヴァイザーは僕のレヴァイザーの支援ユニットでもあるんだ。お互いの力を上手く引き出せるようになれば今より凄い力を出せるようになるよ」
「そ、そうなんですか?」
「だから一緒にがんばろ?」
「は、はい!」
春歌は顔を真っ赤にしながら返事をした。
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