第二話「アーカディア」


 学園を秘密裏に守る、理事長「天村 愁」直属の私設組織「アーカディア」。

 主な任務は学園の防衛であり、最近はある調査がメインとなっている。

 それは「デザイアメダル」の回収である。


「皆さんご苦労様――」


メガネを付けた長いブラウンの髪の毛の若い女性「若葉わかば 佐恵さえ」が代表してそう告げる。

まるで戦隊物の司令室の様な近未来的空間のブリーフィングルームには天野 猛達がいた。


「メダルもウォッチも回収したわ。そして二人もね――」


 モニターにはクモとコウモリの怪人形態と人間形態、そして詳しいプロフィールまで乗っていた。


「これでもう何件目だっけ?」

 

 そう大人びた学生服の少女、揚羽 舞が腕を組んで不満げに呟いた。

 長く青い髪の毛をピンクのヘアバンドと彩り、赤いリボンで結んでお下げにし、健康的な肢体に抜群のプロポーションに豊かなバストと将来が期待できる体付きで今でも高校生でも通りそうなスタイルをしている。

 ちなみにコウモリの化け物と戦っていたのは舞である。


「さあ? 増加の一途を辿ってますから正確な件数は把握しきれてませんよ」


 と、天村 志郎が続いた。

 金髪の美少年でやや大人びた顔立ちながら常に子供っぽい笑みを浮かべている。

 揚羽 舞とは腐れ縁の中であり、またアーカディアを創設にも深く関わっている父を持つ。

 父は天村財閥と呼ばれる学園島のスポンサーとも呼ばれる存在で学園島の大きな後ろ盾でもある。


 三人ともアーカディアのメンバーだった。


 元々三人とも交流が深かったが、ある事件をキッカケにデザイアメダルと関わる事になったのが原因である。


 そこから天村 志郎は独自に調査を始め、アーカディアの存在を知り、猛と共に参加を即決したのだ。


 揚羽 舞も同じく友人がデザイアメダルの事件に巻き込まれたの気に志郎達と行動を共にし、その流れでアーカディアに参加を決意したのである。


 こうして天野 猛はクモ怪人の時に戦った青いパワードスーツ、レヴァイザーを身に纏い、そして揚羽 舞は嘗て学園島を賑わせたセイントフェアリーに再び変身してデザイアメダルやその出自を追っていた。


「そうね・・・・・・」


 この現状を若葉 佐恵は苦々しく思っていた。

 一応はアーカディアの代表者であり、同時にデザイアメダルの開発にも関わっている。

 そして彼達が何故デザイアメダルを追うのか知ってるが故に、その上で自分に協力してくれてるがゆえに、この状況はとても苦しいのだ。



 デザイアメダル。

 またの名を欲望のメダル。


 嘗てこの学園島には極秘の研究開発機関「ジェネシス」があった。

 そこでは特撮さながらのスーパースーツの開発に日夜力を入れていた。


 目的は様々だ。

 世界平和に貢献する為に、宇宙開発の為に、相次ぐ起きる災害で人名救助を手助けするために。


 しかし何者かの襲撃により、研究が強奪されそうになり、泣く泣く爆破処理を行った。

 若葉 佐恵はその時の当事者の一人だ。その後、研究者仲間は散り散りとなった。

 そうして暫く経つとメダルを使った変身アイテムが何者かの手でばら蒔かれている事を知った。


 学園島外に流出するのは時間の問題で学園島の上層部を事態を重く見てる。

 しかし理事長は学園内部に裏切り者がいる可能性を考えて、理事長は理事会にすら極秘にして独自にアーカディアと言う秘密組織を立ち上げたのだ。

 戦力については子供を頼るのはどうかと思ったが、誰が味方で誰か敵か分からない現状では仕方ないと言える。


 それに天村 志郎や天野 猛、揚羽 舞の参加は本当に奇跡と言って良かった。

 天村 志郎は天才科学者としての顔も持っている、極秘だがFストーンと呼ばれる鉱物を産み出し、それを動力源としたパワードスーツを開発している。

 それが揚羽 舞が変身する「セイント・フェアリー」の動力源である。性能は世界の軍事パワーバランスを変えるレベルで宇宙でも活動できる程の汎用性を持つそうだ。


 そして天野 猛のレヴァイザーは佐恵と同僚である天野 星斗博士が開発したパワードスーツであり、天野 星斗は猛の父親である。

 一体どう言う経緯で息子に託したか分からないが強力なパワードスーツで動力源は謎に包まれている。


 ちなみに博士は事件以降、行方知らずになっているらしく、猛が参加したのもただの興味本では無く父親の行方を捜す目的もあるらしい。


 話を戻そう。

 デザイアメダルはジェネシスで研究されていた変身ツールの一つで元々はチェンジメダルと言う名前であり、メダルが適格者を選んで変身し、強力な戦士に早変わりとなるのが本来の姿だ。


 誰でも使えるわけではないが、デザイアメダルはそのデメリットが無くなっているだけでなく使用者に中毒性や攻撃的衝動を高めると言う副作用があり、メダルを手にした人間が事件が起こすのはそう言う背景があるのだ。言ってみれば麻薬の様な物で、凶暴性と共に高い戦闘能力を得る為に麻薬よりも性質が悪い。

 中には上手く適合して正気を保てる人間がいるみたいであるがその辺はまだ調査中である。



「コウモリの奴だけど、結構正気保ってた感じだったわね」


 と舞が相手の事を思い出す。


「じゃあクモの所に駆け付けたのは?」


 あの場の事を思い出しながら猛は訪ねた。


「恐らく売人は学園と関わりが深い人間だったのでしょう。その口封じの為に来たとも考えられるわ」


「良い線いってるわ天村君。コウモリの相手の素性を洗ってみたけど、あるギャンググループに行き着いたわ」


「ギャングですか?」


「そう、ブラックスカルって言うカラーギャング。他所から来た連中で学園島に居着いているみたいよ。東京では名の知れたカラーギャングで何人か警備部門の人間に摘発されてるわ」


「アメコミの敵役でそんな名前のヴィランいましたね。本家はレッドですけど」


「そう言えば昔、何とかマッチョ軍団とかクソださい名前の不良グループがいたわね。それと比べればマシなネーミングかしら」


 などと話が脱線しかける。

 カオスになる前に猛は話を戻す事にした。


「で、そいつらが下請けなんですか?」


 ただの一ギャング組織がメダルを密造をしているとは思えない。

 何かしらの組織の下請けとして動いていると志郎は考えていた。


「可能性は高いわ・・・・・・私も調べてみる。くれぐれも注意してね」


「私の方でも調べてみましょう――」


「結局は天村君任せになるのかしらね――」


 若葉 佐恵が最後にそう締めくくり、解散となった。



 天野 猛は不満タラタラな城咲 春歌と付き合う形になった。

 猛は春歌にはアーカディアの事は内緒にしている。


「もう一体何処に行ってたんですか!?」


「いやちょっと怪人を見に・・・・・・」


「死んだらどうするんですかもう! 本当に猛は子供なんですから!」


「と言っても僕達まだ中学生だよ?」


「そんな問題じゃありません! もう!」


「ははは・・・・・・」


 猛は内心苦笑しているが戦闘のダメージがまだ残っている。

 これからはこまめにでも良いから医療カプセルの利用を考えた。


(それにしてもまた学園にも出現するなんて――)


 初めてデザイアメダルと関わった時の様だと猛は思った。

 まるで危険な薬物の様に汚染が広がっている。

 一体何処の誰かは分からないがとんでもない事をしてくれた物だ。


(まさかお父さんはこの事件を予期して僕達の前から消えたのかな?)


 父が消えた理由は分からない。

 だが今起きている様な事態を想定していたとしたら? などと考えてしまう。

 謎は深まるばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る