運命なんか知らないよ(オメガバース/年の差)

第1話





ねぇ、りゅう兄ちゃん。

涙って甘いのかな。



僕は彼の頬に口付けた。










————————————————————






皆みんな、敵だ。

僕に近づくな。


お前もあっち行け!





そう言われて枕を顔面に投げつけられたのは、何時のことだっけ。


えーと、僕が今中1で13歳でお兄ちゃんは大学三年生だから…。

13、14、15、これで中学生が終わり。

16、17、18、これで高校生が終わり。

大学三年生だから…あと三年で…19、20、21。

お兄ちゃんは、21歳。

んで、21から13を引くと…えーと…。


あ、8年前か。



随分前なんだなぁ。

でも兄ちゃん、僕はあの日をよく覚えているよ。

枕痛かったし。

それに、りゅう兄ちゃんすごく泣いてたから。







「りゅう兄ちゃーん!」


「わっ、マサ?」



バーンと勢い良く開いた兄ちゃんの部屋のドア。

ベットの中でゴロゴロしていた兄ちゃんは、僕を見て目をぱちくりさせた。


ゴソゴソと枕元を探っては、眼鏡を見つけ出してそれを掛ける彼。

声だけで僕って事を解ってくれたんだね。

いやん嬉しい!



「何、どうしたの?」



ベットの上で胡座をかく兄ちゃん。



「兄ちゃん!」


「うおっ」



僕はその膝にダイブ!


びっくりしつつも、倒れないその筋力!

しっかりと受け止めてくれる腕の中!

兄ちゃん格好良いよ〜!



「てか、着替えてないし鞄まであるし。お前また帰らずこっちに来たの?」


「うん!」



そう。

りゅう兄ちゃんは実の兄ではなく、近所のお兄ちゃんだ。

昔から遊んでくれる僕のお向かいさんだ。



制服のままの僕を見て、りゅう兄ちゃんは顔を顰めた。



「皺になるぞ」


「それは困る」



僕も顔を顰める。

けれども体勢は崩さない。

此処は僕の場所。兄ちゃんの膝の上は、僕の場所だ。



「…ったく…何をそんなに急いで来たんだよ」


「これ!見てみて!」


「ん?何だー?小テストで良い点でも取ったかー?」


「んふふふふ」



違うよ、兄ちゃん。

その真っ白で何時ものざら紙とは違うプリントは、そんなものじゃないよ。


もっと大事な、とっても大事な事が書かれているんだから。



「……え」



掠れた声。

彼の目は、プリントの文字を唖然と見詰めた。



「…僕ね、Ωなんだって」



その紙には、適正検査の結果が記されていた。







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