保健室のオトモダチ (教師と生徒/友人の死)
第1話
「せんせー。具合悪いから休ませてください」
「うん。良いよ」
溝原君は、よく此処——保健室にやって来る。
彼は所謂保健室登校をしているのだ。
この学校に赴任して来て早二ヶ月の私と、それより前から保健室の常連である溝原君は、最近距離が縮まってきた。
と云うのも、人見知りな私に彼が話しかけてくれるようになったからなんだけど。
高校二年生の彼と二十七歳の私の距離は、思ったよりも遠くなかった。
「溝原君、昨日はよく眠れた?」
ベッドへと潜り込んだ彼に、私は何時もの様に世間話を始めた。
カーテンを閉めて、彼の居るベッドの端に腰掛ける。
この二つの行動は、彼に強請られて始めた事で。
いつの間にか当たり前となってしまった。
すると溝原君はこちらを向いて、楽しそうに話し始める。
「ううん。全然駄目。シロがずっと煩くて」
「そう」
「せんせ。シロってね、猫なんだよ」
「うん」
「彼奴、滅多に鳴かないんだ。何時も俺とかをじっと見てるだけ」
はて。
シロが煩くて眠れなかったんじゃなかったっけ。
私は軽く首を傾げた。
「せんせー」
「うん?」
「シロってね、僕の猫じゃないんだよ」
「へぇ」
益々意味が解らない。
シロとは、野良猫なのだろうか。
「せんせー」
「うん?」
「シロってね、人殺しなんだよ」
「…え?」
しん…と音が無くなる。
私は掠れた声で、聞き返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます