第2話





そりゃもう、見事にバッタンと。


倒れた田崎君に躓く先頭集団の数人。

二次災害が少々。

避けた人、グッジョブ。


転けた人は、砂に擦れた所が痛そう。

うわ…大変そうだなぁ。



「うおっ」

「なになに」

「誰か倒れたん?」

「勘弁してくれよ」

「大丈夫ー?」

「いってえ…」


「他の奴は構わず走れー」



ざわめく生徒と怠そうな教師の声。


あ、中止にならないんだ。

残念残念。



「倒れたの誰?」

「田崎」

「誰それ」

「クラスメイトだよ。知っとけ」



僕を抜かした二人が、そう言って走って行く。


そうです。

影の薄い田崎君です。

僕も人のこと言えないけど。



「起きんな」

「先生、保健室連れて行きます?」

「そうだな。おーい、C組の保健委員は誰だー?」



え、田崎君起きないの?

大丈夫?


保健委員お呼びですよー。

連れて行くついでに休める人ですね。おめでとう。


いや、出て来んやん。誰や。






「あ、僕です」



自分でした。











そして、ヨイショヨイショと彼をおんぶして——華奢な彼に感謝。自分よりも小さな男一人担げないという格好悪い場面は免れました。——今に至る。



僕はチョコレートを一つ、ポケットから取り出し。

甘ったるい匂いを口の中に閉じ込める。


田崎君、起きないなぁ。



「……ん」


「お」



先生!田崎君が動きました。

ちょっと声出ました。



「起きた?」


「………」



うっすら開かれる瞳。



「………」


「………」



田崎、応答せよ。



「…せんせー。田崎君、起きましたー」



カーテンの中から、先生に声をかける。

が。



「………あれ?」



先生も応答してくれない。


カーテンの外に顔を出すと、なんと其処は無人。

先生、何処行ったの。


仕方なく、僕は布の中に逆戻り。

ちらりと彼を伺えば、バッチリと目が合った。



「えーと…体調どう?」


「……別に…」



あ。顔逸らされた。






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