第2話
「…は?」
怪訝な声を出し、顔を上げる青年。
目が合い、私は驚いた。
彼は、とても綺麗な目をしている。
「…あんた、此処の人じゃないね」
ふい、と逸らされる視線。
あぁ…残念だ。
「わかる?」
「そんな小奇麗な顔をしていればね。あと、毛並みも良いし」
なるほど。
毛並みまでは、考えていなかった。
「ふーん…。そんなことより」
私は彼の前へとしゃがみ込む。
近くなった距離に、相手がビクッとするのが分かった。
「その絵、私に売ってくれないか?」
「…本気で言ってんのか?」
「本気だよ。幾らだ?有り金全部出そうか」
「狂ってやがる…」
私が財布を出そうとすると、青年は首を振った。
「こんなのに金掛けるなよ。…だから金持ちは嫌いだ」
こんなの。
目の前の人間は、この絵を『こんなの』と評価するのか。
それこそ狂っている。
そして嫌われたらしい。
何て事だ。
「金は要らない。煙草ちょーだい」
「…煙草?」
「最近馬鹿みたいに高くなったから、暫く買えてないんだよ。一本だけちょーだい」
一本だけ。
そう言って、右手をこちらに伸ばす青年。
一箱でも良いのに。
そう思いつつも、私は煙草一本と彼の絵を取り替えてもらった。
白いそれを咥えた彼が、火を求めてくる。
私はマッチを一本擦って、その煙草へと近づけた。
じりじりと焼けては、きちんと火が着いた事を示すのを、ぼーっと眺める。
その口元が欲しかったのかもしれない。
「…は…?」
彼から煙草を奪った私は、薄い唇に自分の冷えた唇を重ねる。
「また来るよ」
きょとんとした彼に煙草を咥えさせ、私は元の場所へと戻っていった。
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