第6話
「あんたたち、今日帰ったら、いっぱいセックスするいいナ」
出し抜けにとんでもない事を言われた僕らは、あやうく婆さんからもらった飴玉を口から吹き出しそうになった。あぶないあぶない。こんな所にDNA残したらマズイ。
「な!な!な……」
なに言ってるんですか!と先輩は言いたかったと思うが、顔を真っ赤にした先輩は酸欠の金魚みたいに口をパクパクしたまま言葉が続かない。
「人間死ぬような事あると、種を残そうとするネ。本能が物凄く強くなる、これホントよ。ワタシもいっぱいしたからワカル」
想像したくない……
「あ、あなたワタシ嘘ついた思うな。ワタシ凄くモテタヨホントヨ。証拠見せるナ」
婆さんはリュックから分厚い封筒を取り出した。中に入っていたのは写真の束だった。かなり傷んだ白黒写真だが、髪を短く切った可愛い少女の姿が写っていた。
「これ、ワタシ」
顔をクシャクシャにして微笑む婆さんと、おそらく半世紀以上昔の写真の可愛らしい少女は、残念ながら同一人物らしい。
「ワタシ人気あっただヨ、ホラ」
続けて見せられた写真の数々に、僕と先輩の目は吸い寄せられた。どんな写真なのか詳細をお伝えするのはいろいろと問題があるので概略だけ言うと、少女とおじさんがベッドにいる写真だった。それもおじさんたちは、僕らからすれば歴史上の人物として教科書で教えられてきたあの国のあの人やあの人、伝説のトップクラスが軒並みベッドで女の子と一緒に写真に写ってる。飛行機で逃亡して墜落だか撃墜だかで亡くなったあの人もいた。
あれ? そう言えばあの人がいない。日本人にも馴染み深い、白皙のあの政治家が。
「あー、あの首相か、男の子が好きだったナ」
先輩がまた目眩を覚えたらしく、僕の右腕をギュッと掴む。先輩の吐息を吸い込みながら、僕は食い込む爪の痛みに耐える。妙な性癖が目覚めそうで怖い。
「日本に来てからもモテたナ」
続けて見せられたカラー写真は、あの首相あの幹事長あの会長あの書記長と、またもレジェンドクラスの面々とのベッドで一緒に写っているシロモノだった。
右腕に食い込む先輩の爪にさらに力が入り、僕は悲鳴はあげなかったが涙が出てきた。
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