第125話 『隙を見せる』とは





「…ひっ…!」



急に項に唇を寄せられ、変な声が出た。

顔に熱が集まるのが分かる。

両手で口元を覆った。



「真琴さ、もうちょい危機感持ってくんね?」


「……んぅ?」


「…もうしないから手外して」


「……ん」



両手を外し、ちらりと拓夢の顔を見る。

すると困った様な顔をしていて、思わず首を傾げた。

その心境は何?



「食べたいとか言う奴に、近付かないでほしい」


「わかった」


「……本当に分かってる?」


「半径1m以上離れる。あ、でも…」


「なに?」


「朝会の時、後ろに寄っかかって寝れない」


「………」


「………」


「…起きとけよ」


「眠い」


「………」


「………」


「……智紀にして」


「そうか、智紀がいた。抱き枕にする」


「……え、真琴の学校って、そういうの普通なの?朝会中だよな?」


「…?割と普通じゃ?男子クラスとか、もうちょいベタベタしてるし」


「………」


「………」


「…解った。其処はもう何とも言えんしな」


「…?うん」


「あと、物理的な距離も大事だけど、隙を見せたりもしないでほしい」


「……へぇ」



隙とは?

真剣な顔した拓夢には悪いけど、俺は別に隙を見せたりしてないです。



「へぇって何!?」


「んー」



ぎょっとする拓夢を他所に、俺は彼に正面から抱き着いた。




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