第123話 うっかり失言




「真琴さ、裕也って奴にちょっかい掛けられてんの?」


「え?」



拓夢の家に行ってから数日後。

俺はまた、彼の部屋に来ていた。

専業主婦らしい彼の母親に軽く挨拶し、二人で部屋に籠っている。


俺は最近、きちんと学校に行っていて、今日も放課後まで通って此処に来た。

安定した普通の生活。あとちょっと今日は良い日だ。

拓夢のベッドに二人で寝転んで、後ろから抱き締めてもらえて。

そんなぼーっとした中で、拓夢が思い出したかの様に呟いた。



「え、裕也って裕也?」


「んー、お前と仲良い奴」


「……仲良くはないんだけど」


「智紀が言ってた」


「あー…」



あの子、何かフィルター掛かってるもんな…。

智紀にとっては、俺と裕也も仲良しなんだろう。



「…あんまし好きじゃない」


「そうなの?」


「ん。うるさいし、やぜらしいわ」


「……真琴って、結構人の評価辛辣だよな」


「脳内はもうちょい酷いかも」


「まじか」


「裕也は、あんま近付きたくない」


「何で」


「スキンシップ激しいし、噛むし」


「……噛む?」


「…あ」


「…真琴、それ聞いてない」


「えーと…」


「説明して。詳しく」


「………」



あれ。

これは…失言ってやつでは?





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