第七章

第70話 無意識の意識






「あれ?まこちゃん、帰んねーの?」


「…びっくりした。裕也か…」



放課後。


教室に1人残っていると、後ろから声を掛けられる。

ぼーっとしていたから、全く気づかなかった。



振り返ると、いつものようにニヤニヤした顔がある。

…ムカつく顔だよな、ほんと。


俺は普段、あまり人に反応を示したりしない。

なのに、裕也にだけは感情を晒け出してしまう。


その事実を、俺自身少なからず認識していた。



こんなにムカつく、と思う人はいない。


俺は、人に無関心だとよく言われる。

どうでもいい。何とも思わない。

それが、普通だったのに。





好きでもない裕也を、こんなに意識するのは何でだろう。





「帰んねーのー?」



もう一度、聞かれる質問。

別に苛立った訳では無く、不思議そうな声色で問われる。


俺は、ふいっと顔を逸らした。



「…もうちょっとしたら、帰る」


「何なに?家に帰りたくないのー?」


「……」



図星だった。

昨日、沈むように堕ちた俺。

あの空間に、嫌気がさす。

帰る場所が彼処しか無いのは、わかっているけど。

解りたくは、なかった。



「え。まこちゃん、反抗期?」


「…違うけど」



違う。ちがう。

そんなんじゃない。


…いや、本当にそうなのか?



「誰か待ってるのー?」


「誰かって、誰だよ」


「んー、彼氏とか?」


「…は?」





彼氏…?




何で、こいつが知っているんだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る