第58話 起きて縋るのは





不思議と冷静に判断する自分がいた。

けれど、それは長くは続かない。


彼女と目が合った瞬間。







殺される。これで死ぬ。死ねる。死んでしまう…



――死にたくない。






俺は、逃げた。


俺を殺せない姉を可哀想だと思いつつ、結局自分が可愛いんだ。

言いようも無い恐怖から、逃げた。


殺される機会から、逃げた。



後ろで姉が何かを言っている。

聞き取ることは、出来ない。


もしかしたら、何も言っていなかったのかもしれない。



崩れ落ちそうになりながら、ドアへと向かい手を掛ける。



その瞬間、背中へ燃えるような痛みが走った。








――――――――――――――――――――







「――はぁっ…はぁっ…!」



目を覚ました途端、汗が溢れ出る。

嫌な夢を見た。


忘れたくて、忘れてはいけない昔の夢。



苦しい。苦しい。


どうにかなりそうだ。

助けてほしい。



自然と俺の手は、携帯へと伸びた。


久しぶりに見るある連絡先に、俺は迷わず電話をかける。



繋がった途端、俺は叫んだ。





「…よ、すけさん…っ!洋介さん…!助けて……っ…」





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