第四章
第35話 繰り返される悪夢
――ヒック…ヒック…。
誰かが泣いている。
…一体誰が?
俺はぼんやりとした意識の中、考える。
あの後、帰って寝たはず。
じゃあこれは一体…。
「気持ち悪い」
ひゅっと喉が鳴った。
女の小さな声が頭に鈍く響く。
「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。その目で見ないで」
「…あ、ごめんなさい…。ごめんなさい…。」
ごめんなさい。
気づけば口から溢れていた。
「何であんたばっかり…」
「…ごめんなさい…」
「私から取らないで!」
叫び出したその人は、わっと声を上げて泣きじゃくる。
ごめんなさい…ごめんなさい…。
「お姉ちゃん…ごめんなさい…」
震える細い体。
俺の姉が泣いていた。
「これ、弟くん?可愛いねー!」
「真琴くーん。はじめましてー」
「やっぱり朱里と一緒で顔綺麗だねー」
「でも朱里より、弟くんの方が顔綺麗だね」
どこからか現れた数人の女。
どうやら姉の同級生のようで。
彼女達の言葉に姉はピクッと反応し、黙り込んだ。
「…ねぇ。本当にヤっちゃっていいの?」
「こんな可愛い子なんて、ドキドキしちゃーう!」
きゃははと笑う声が耳障りで。
ヤっちゃう…?
何のこと?ねぇ…
「お、お姉ちゃん…?」
「…うん、いいよ。好きにして」
「じゃあ…早速」
俺の…僕の問いかけに、お姉ちゃんは答えてくれない。
虚ろな目で向こうを見て、好きにしてと言う。
僕のことは見てくれない。
お姉ちゃんのお友達が、僕の方にやって来る。
…怖い、怖い。
何するの?
何で嫌な顔で笑ってるの?
「お姉ちゃん…お姉ちゃん…!」
必死になって暴れるけど、何人かに押さえつけられて、身動きが取れない。
なぜか服がどんどん脱がされる。
嫌だ、嫌だ――!
助けて!お姉ちゃ…
「あんたなんか、死ねばいいのに」
「――ッは…!」
突然目が覚め、俺は飛び起きた。
「…ハァ…ハァ…」
びっしょりと汗をかいていて、気持ち悪い。
時計を見ると、3時を過ぎたところだった。
…何か夢でも見てたんだろうか。
嫌な気分はするが、何も覚えていない。
ドサリと再び布団に寝転がる。
あぁ…寝れそうにないな…。
閉じた瞼からは、何故か涙が溢れて落ちていった。
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